東京五蓮1964

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梗 概

東京五蓮1964

【『東京オリンピック第2号ポスター』撮影秘話】
撮影場所は、神宮外苑の旧国立競技場国立競技場。まだ寒かった3月末日。撮影に臨んだメンバーは、早崎さんとフォトディレクターに指名した村越襄さん、サブカメラマン3名、アシスタント1名、ストロボ会社のメカニック1名の計7名。モデルは日本人陸上選手3名と立川空軍基地に勤務する、元陸上競技選手のアメリカ兵3名。(中略)誰もが一度見たら忘れられない迫力あるシーンですが、実際のところ、自然に「よーい、ドン!」で一斉にスタートして、あの映像にはなりません。現場では手前の選手の姿勢をわざと低く、奥側の選手はスタートラインより1メートル前方からフライング状態で走らせることで、奥行きのある構図をつくっていました。何度も何度もやり直し、スタートの瞬間を30回以上繰り返したといわれています。
(山田ミユキ『大河の一滴~『いだてん~東京オリムピック噺』第42回 東京流れ者』)

改めて見ると、選手たちが三角形に見えてくる。亀倉はデザインの中で、様々な幾何学模様を使っている。日本の紋章にインスパイヤされ、幾何学模様をデザインに多用してきた亀倉だが、オリンピックのポスターはなぜ三角形も用いたのか。美術評論家の木島俊介さんは「矢印の三角形が入っている、そうすると動きがすっと前に向かう、それによって視覚に訴える力がある」などと語った。
(『美の巨人たち 亀倉雄策「東京オリンピック第2号ポスター」』テレビ東京)

アメリカ空軍から短距離の選手を集めた。白人が一人入っているが、この人だけが長距離なのでスタートがなかなか一致しない。みんなより三、四メートル先にスタートしてもらって、ごらんのように、やっと一致している。恐ろしいもので写真はごまかせない。
(亀倉雄策『デザイン随想 離陸着陸』美術出版社)

この時期アートディレクター・亀倉雄策の下、1964年東京オリンピックのポスターを写真家・早崎治と共に担当したことでよく知られています。躍動する身体、力強くシンプルな構成は戦後の復興から未曾有の発展に向かう日本社会を象徴的に示すものでしたが、実は、その背後に村越が西洋の宗教画にインスピレーションを得た「祈りのデザイン」の動機が隠されていました。商業デザイン界で活動した村越は晩年、5年の歳月をかけ、日本への古典回帰ともいうべき作品『蓮華幻相』の制作に取り組みました
(『村越襄 祈りのデザイン:蓮華幻相』茅ヶ崎市美術館)

【梗概】
デバッガーのれきはバグ修正のために2020年から『第2号ポスター』撮影当時の旧国立競技場に転移。だがそこは2年後の1964年だった。
そこではスタッフのじょうが八百長の撮影をお願いし、6人の選手がそれを拒むやり取りが2年間続いていた。
撮影ではスタートダッシュの瞬間だけを30回以上繰り返す儀式的動作が行われていた。その結果オーバーフローが発生し、世間の目の参照先が1964年から2020年に繰り上がり、襄以外のスタッフや選手は炎上を恐れるようになっていた。
一方でバグ修正のためには撮影を無事終える必要があった。
歴からも撮影をお願いすると、選手は陸上競技で勝ったらいいと無理難題を言う。
歴はハンデとして襄が晩年手掛ける『蓮華幻相れんかげんそう』の力を借りて、コースに蓮華の力を宿すことを条件に応じる。

歴と6人の選手による東京五蓮ごれん1964が始まる。
最初の難関は泥水の概念。選手が泥水の中を進むように動きが鈍る一方で、歴は親鸞聖人の説いた蓮華の五徳の一つ、〈淤泥不染の徳〉で泥水をもろともせず駆ける。
次の難関は蓮池の概念。選手が蓮池に足を取られるように失速する一方で、歴はロータス効果でアメンボの如く蓮池を駆ける。
だが歴が首位に立つと、八百長を許さない世間バグはコースから蓮華の力を奪い、6人の選手を融合させる。選手は浮遊する三角形と化し、車速で歴を再び抜く。
歴は〈一茎一花の徳〉で一身軽舟の力を得て、ロータス製のレーシングカーを呼び出し、三角形を追い上げ並ぶ。
だが三角形は融合した6人の内、3人のアメリカ人が選手兼軍人だったため歴を銃撃する。
歴は〈一花多果の徳〉で銃一丁と弾多数を呼び出し、〈花果同時の徳〉で運転と銃撃を同時にこなす。弾は三角形の銃口に当たり、攻撃手段を封じる。

だが歴が三角形を再び抜くと、八百長を許さない世間バグはコースを無限ループの地、幾陸世1964に変え、ゴールを消す。
一度消えたゴールの復元は難しく、最早走り続ける意義も危ういが、それでも歴は首位を守り続ける。
だが三角形は融合した選手の内、アメリカ人選手の1人が長距離選手だったためばてる気配がない。
歴は〈中虚外直の徳〉で虚無の中の幾陸世から、外の旧国立競技場にいる襄に直接通話を試みる。通話は繋がり、襄によれば幾陸世で三角形と化している筈の6人の選手が、旧国立競技場中を縦横無尽に荒ぶっている(例:時の最果てバグ)という。
歴が強引に三角形を牽引して速度や動作を調整すると、選手の荒ぶり方が連動して変化。ならば三角形を利用して間接的に選手を操作し、襄に写真を撮らせようと閃く。
蓮華の五徳を極めた歴は(ピンイン)の力を得て、己に不死身状態を適用し、モネの睡蓮に描かれる色彩の光の如く光速で駆け、ED呼び出しの如く三角形を儀式的に動かす。
歴が6人の選手を最高の構図で配置した瞬間、襄はシャッターを切る。写されたのはあの『第2号ポスター』の写真、バグは修正された。

文字数:1200

【参考文献】
亀倉雄策、村越襄、早崎治『東京オリンピック第2号ポスター』
村越襄『蓮華幻相』

山田ミユキ『大河の一滴~『いだてん~東京オリムピック噺』第42回 東京流れ者』
『美の巨人たち 亀倉雄策「東京オリンピック第2号ポスター」』テレビ東京
亀倉雄策『デザイン随想 離陸着陸』美術出版社
『村越襄 祈りのデザイン:蓮華幻相』茅ヶ崎市美術館

文字数:2427

内容に関するアピール

亀倉雄策、村越襄、早崎治『東京オリンピック第2号ポスター』(1962年)

テーマは「オリンピック×蓮華×バグ」です。
当初はオリンピックにちなんで上記作品を候補の一つに挙げていただけでしたが、色々調べて『蓮華幻相』と繋がりました。仏教では蓮と睡蓮は同じ蓮華として扱うらしく、睡蓮には思い入れもあって選ぶ決め手になりました。
バグはスタートダッシュの瞬間だけを30回以上繰り返すエピソードが52回全滅バグを連想させたので組み込みました。

物語は前半の2020年推理パートと、梗概で書いた後半の1964年レースパートで構成する予定です。
前半の流れは「東京2020のポスターの絵がバグる⇒隠された暗号を解く⇒『第2号ポスター』撮影にバグ要因があると判明⇒当時の撮影現場にデバッグ機能で転移」を予定しています。
前半の暗号解読の過程で撮影秘話や蓮華等の予備知識を読者に与えて、後半でそれらを一気に回収するのが狙いです。

文字数:400

課題提出者一覧