ポポイの触覚

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梗 概

ポポイの触覚

ポポイの触覚は緑であった。

緑色で、2つに分かれて頭上に生えて、その先端には球体が付いている。触覚が緑色の生命体はポポイだけであった。

青のもの、赤のもの、紫のもの、黄のもの…。しかし緑の触覚はどこを探してもポポイひとりだけである。緑色のものはいくつも環境の中に存在していたが、緑の触覚はポポイしか持っていないのだ。

ポポイは共同体から疎外されていく。はじめは縁者の集団の中で。次は同じ年齢の集団の中で。限られた集団にしか属していないポポイにとってそれは孤独を意味している。ポポイは、触覚を切り落とし、その緑に染まった自らの触覚を呪った。日を経過するごとに伸びはじめると、はじめの頃よりも触覚はその色を濃く染めて、長く伸びていた。

 

ポポイの緑の触覚に唯一理解を示すものが現れる。

その名前は、ププイ。ププイは真っ白に染まった体毛を有していた。共同体の中でププイは、頂点に属していた。ポポイと同じ縁者の集団と同年齢の集団に属しているもののなかで、もっとも高貴な存在である。ププイは緑色の触覚を持つポポイを知っていた。

あるとき、ポポイが自らの触覚を切り落とし、その触覚を石で殴り潰していたときのこと。ププイは、彼の石を放り投げて、彼の触覚を彼の頭に植えつけた。ププイに伸びる、緑の触覚。ポポイは驚きのあまりにその場を立ち去った。

ププイは、緑のしなびた触覚をつけて周り、驚くものたちの目線をその身に集めた。ある者は驚き、ある者は歓喜し、ある者は拒絶した。ププイは、頂点から陥落する。しかし、ププイは気にせず、正気を失って変色した触覚を身に続ける。

ププイはポポイのことを小さい頃から知っていた。ププイはポポイがププイの長く白い体毛を弄んで遊んだ同年代の集団から助け出したことがある。ププイはいつもそれを忘れない。ププイは、ポポイの苦しむ姿に自分を重ねて助けようとした。

 

ポポイは、ププイを嫌悪していた。皆から賛美されるププイの白さに羨ましさを感じ、それを認めることもできずにただ自分を貶める相手として憎悪した。ププイの行為も、ポポイには自分を見下した行為のひとつにしか見えなかった。しかし、ポポイは変化を感じ始める。ププイの変色した触覚をあざ笑う集団の声やポポイから離れていく視線に気づいていく。

 

ある日ププイの触覚を抜き取った同年齢の集団の前に立ち塞がり、ポポイは緑の触覚を抜き取って、集団前に投げ出して、ププイを連れ去って逃げていく。

ポポイはププイのため、ププイはポポイのために、お揃いの触覚をつけて共同体の中で生きていく。

 

文字数:1053

内容に関するアピール

正義というお題から、三国志の関羽の義の精神を思い出しました。

他人を自己犠牲の上に救いだすこと、それが正義の原典だと思います。

いじめという他人を疎外する行為の中で、義の関係が見出されたとき、もっとも身近な正義となって現れると思いました。

 

文字数:117

課題提出者一覧