ただ青天を望む

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梗 概

ただ青天を望む

AIによる最低要求能力の上昇によって非正規雇用者が増えた未来。コードの自動生成によってクビになったシステムエンジニアのタツヤは、手持ちがあるだけネカフェで過ごし、無料のアニメと違法配信されたポルノ動画を眺める生活を送っていた。

自分が積極的に仕事をする日は雨の日と決めている。需給要因で日雇いの賃金が上がるためでもあり、ネカフェの代金がダイナミックプライシングによって上がるためでもあるからだ。スマートデバイスが翌日の雨予報を通知する。

タツヤは早朝の降雨前にネカフェを発つ。都内の大規模再開発に動員されたAI搭載の工事機械、その警備の仕事を受けていた。警備の仕事は良い。AIの工事ロボットに置き換わったことで実作業が低コストになった分、ロボットとの事故を防ぐため、全監督責任を取り持つという法的扱いとなったため、警備員の実入りは最低賃金よりも確実に高かった。

まだ暗い時間に詰め所につく。体をあまり洗っていない人間のツンとした匂いが立ち込める。貸し出される制服は大きめを選ぶ。度重なる洗濯乾燥で縮んでいるからだ。綿がほとんど抜け落ちてペラペラとなったつなぎを着る。ジャケットは洗濯頻度が低い。なるべく前に着られたものを選ぶ。これが正解だ。ただ、靴だけはガチャだ。どれが染み込まないのかは行くまでわからない。使い捨てのビニール合羽を羽織ると自分の汗で湿り始めるので慌てて外に出る。ぽつりぽつりと髪が薄くなった頭を雨が叩く。帽子をかぶって、AI制御用光源付き制御棒の電源が入ることを確認して仕事に向かう。

空が明るくなってはきたが雨は本降りとなってきた。ビニールは水を弾くが、それ以外、靴に靴下に軍手はじっとりと冷たさを感じる。だが、安全管理規程上脱ぐわけにはいかない。定職、これは教育も含む、を持つ人間が近くを通るたび、自分はAIロボットの位置を再確認して、誘導灯を振る。

横に目をやる。新人のショウタがへろへろと棒を振る。更衣室ではアニメーターもやったことがあるオタクなんですよとひょろひょろした体で言っていた。「ショウタ、もっとシャンとやったほうがいいぞ」と声だけかける。ピッキングセンターが工事に拡張された、そういう現場だ。自分の持ち場を外れるとペナルティを食らう。それで歩行者などを監視すればいいのではと思ったこともあったが、それで検知できなかった人の事故の裁判があるから、こういう形になったと聞いてからは反論する気にもなれなかった。

若者の一団が横広がりになって歩いてくる。ショウタはそれに押されるように赤線、これは赤外線センサーで人間を感知すると止まるやつの内側に入ってしまう。ショウタは雨で実質的な低体温症になっており、センサーに認識されず、機械に巻き込まれて、右腕を損失し、胴体を複雑骨折し、頭を潰されて死ぬ。

ショックを受けたタツヤは東京を離れようとするも、仕事がないことから埼玉千葉方面を転々としつつ、とはいえ、それ以外の生き方を知らないことから、同じような生活を続ける。

そんな中、ある現場で出会ったのはひょろっとして面長で特に鼻の下が長いネズミと呼ばれる男であった。ネズミにどぎつい缶入りアルコール飲料をおごってもらったことから、飲み仲間となり意気投合する。その中でネズミは反AI闘争を行おうとしているメンバーであることを知る。ウィキペディアに事件の記事が作られるぐらいのことはしたいとネズミは言っていた。

タツヤはネズミに協力を申し出て任務は決まるが、雰囲気からして自分が参加するのは本隊の方ではないと感づいた。国家に必要なのは資源だけであり、人間は不良債権であるというのは失敗国家の話だっただろうかと思い出した大雨の日。タツヤたちは国会議事堂を襲撃する。社会はAIだけで構成されるわけではない。相当な人数が集められてはいたが周辺各地からも集められた機動隊員によって議事堂への突入には相当に時間がかかる。なんとか中に入ると警備ロボが人間を駆逐していた。

だが、突然ロボットが止まって、俺達の旗を議事堂に掲げることができる。だが、それで終わりだった。ロボットが再起動する。機動隊の催涙弾の攻撃もある。雨は強い。俺たちは捕まった。

あのロボット停止は印西市のデータセンターが水没したためだと捕まってから知った。何人もの活動家の水死体が上がっており、一人の遺体写真の顔は知っていた。俺たちは雨の日に動く部品なのかもしれないが、ただ青天を望んでいるだけなんだと、東京拘置所で絶叫する。

文字数:1840

内容に関するアピール

雨は嫌い。

文字数:5

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ごきげんよう、疵のある皆様。
一部の方々は先日の傷の舐め合い飲み会に参加いただきありがとうございました。
怖いので講義の録画はまだ見ていないと話したら、印刷に困るという指摘があったと聞きました。
今回は不必要な印刷を防ぐために、上記のようなアナウンスを入れておきました。
うまく印刷対応していただければ幸いです。むしろ、うまく印刷しないといけないように前回よりも大きめに空白を取っておきました。よろしくお願いします。

さて、今日のお知らせは「SF創作講座の劣等生 vs. グローバルエリート 忘年会 2022」についてです。
はい、忘年会のお知らせです!
「執筆→無価値判定→酒→執筆→無価値判定→酒→……」を踏まえれば当然ですね。また「酒」をやるしかない……。
料理のテーマはふぐを考えております。ふぐです。ふぐ。
時間帯は次の講義までの土日の夜、場所は都内を予定しています。
人数は八人ぐらいはとか考えているのですが、感染状況が終わっているので未定感が漂ってはいます。あんまりにもヤバそうならキャンセルにはなります。
参加費ですが前回は僕が全部出しましたが、今回は割り勘にしたいので創作講座で「梗概が選出された回数」に応じて単価が上昇する方式になります(招待客=グロエリの他メンバー除く)。
0回選出で1倍、1回選出で2倍、…、8回選出で9倍払う感じです。一人1万円ぐらいの店になるので、仮に8回選ばれていても4万5千円ぐらいになる感じです。前回は僕一人で6万円だったのでそれより安い。
というわけで、酒が飲みたい。参加希望者はこちらのツイートにご一報ください。

文字数:735

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