梗 概
緑の背中
ジェイと、知人のロワは、その大陸の乾燥地域上空を飛ぶ飛行機のエンジントラブルで不時着した。パイロットは死んだ。
ふたりとも、資産家の一族で、よくわからない生き物を狩るのがロワの趣味で、ジェイは獲物を調べ、ときには食用に向くか試してみるので、行動を共にしている。
荒れた地域である。飛行機からできるだけの食料を持ち出し、上空から見えるよう地面に石で矢印を書いて、不完全な地図を見ながら、近くの岩山のそばにあるはずの集落を目指した。
洞窟に住む人たちがいた。交易する材料もないので、草を編んものを身にまとい、周辺の植物の中からすこしでも口にできるものを見つけ出しては暮らしているらしい。
とりあえず洞窟の一つを使わせてもらえたが、この部族は、それほど熱くない夕方には岩の上でうつぶせに寝そべるものが多い。背中には緑の入れ墨が入っている。
狩るものをもとめてロワは動き回る。食料や水を無駄にしたくないジェイはなるべく動かない。
部族の言葉はジェイがいくつか知る言語のひとつに似ており、不完全な意思疎通するようになった。彼らは、雨の日を恐れよ、という。
ごくまれな雨の日。ごく軽い霧のような短時間の雨だった。彼らは洞窟に閉じこもっていた。その中から一人の男が岩山を駆け下りていくのが夕方の暗さの中に見えた。次の朝、ひとりで済んだと部族の老人は言った。雨上がりのあとは動いてはいけないともいわれたが、ロワは、獲物を求めて岩山を降りて行った。
午後になっても帰らず、若い男と一緒にジェイは岩山を降りる。雨で元気になった灌木のあいだに、ひときわ大きい木が生えていた。あれは昨日の雨で生えたと、ジェイは来るなと男は木に近づき、ロワをかついできた。
ロワは、いままで見たことのなかったその木に近づき、気を失ったという。すっかり性格がおとなしくなり、食事も減った。いつのまにか背中に緑の入れ墨を入れ、夕刻岩山で陽を浴びるようになった。あの木はいつのまにか枯れていた。
また、雨の日が来るという。自分たちは長い期間をかけて「あれ」に慣れ、慣らしてきたが、それでも我慢できなくなるものがいる。人によるのだがロワを念のため縛っておけという。ロワはおとなしく縛られるが、雨が近づくと外に出ようと暴れ、雨の中を駆け下りていった。
ジェイが翌朝探しに行くと、あの木に似たものがべつのところに生えている。近づくと枝が動いてジェイは意識を失った。気づくと岩山に戻されていた。食欲が減り、夕方日向ぼっこが気持ちいい。部族のものは、おまえはあまり変わらない方だなと言った。
飛行機の矢印を見て救援が来た。ジェイは都会に戻ったが、しばらく静養しなければならなかった。いつのまにか背中に入れ墨が入っていた。気を失ったときに入れられたのかと思った。
ひさしぶりに外出し、出先で雨が降った。ジェイの体は割け、緑の深部から木が生え、その場にそびえた。おどろく人たちを、枝はとらえては、その種を体に埋め込み始めた。埋められたものは寄生され、光合成でほぼ動かず暮らせるが、雨の日にその木は発芽するのだった。
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内容に関するアピール
考えた挙句に、締め切り1時間前になってなんかものすごく古典的な寄生生物ものができあがってしまいました。
梗概だしておかないと実作に挑戦できないのですが、実作で何とかなるレベルではないような気がします。
「そっからどうなるんや」をもうちょっと考えます。この生物のレベルではそのまま人類を滅ぼせそうにないので。
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