梗 概
安心してください。これは単なるジョークですから。
「Just a Joke」通称「JJ」は、生成AIを活用した自動フェイクニュースサイトだ。
Uncyclopediaなどのジョークメディアをソースとし、「誰が見てもありえないと分かる笑えるニュース」を日に3回投稿している。
制作者はカタヒラという男だ。もともとアフィリエイターだった彼が生成AIの存在を知り、片手間に作ってみたサイトだった。冗談半分だったが反響は想像以上で、あっという間にPVは月100万を超え、広告収入は本業で展開していたメディアを上回った。
そんなカタヒラの最近の悩みは、サイトに溢れるスパムコメントだった。「面白い、こんなことが本当にあるの?」「私はすごく悲しい、どうしてこんなことが起きるのですか?」といった当たり障りのない内容と、謎の海外メディアに繋がるURL。記事のコメント欄にも、宣伝用のSNSにも、どこからともなく大量に湧いてくる。「JJ」は記事の人気度を元に生成するニュースを決めるというアルゴリズムが組み込まれているので、ノイズ情報となるスパムBOTの存在は邪魔でしかない。
コメント欄に外部URLを貼るのを一律で禁止してみたり、怪しいコメントをAIが判定し自動でブロックするようなプラグインを導入してみたり…。様々な方法を試みるがbot側も進化して規制をすり抜ける。いたちごっこだ。
しかし、ある時からだんだん状況が変わり始める。会話が自然になり、他のユーザーと交流までするようになったBOTが、逆にユーザーに気に入られはじめたのだ。他のサイトに誘導するそぶりもない。BANされないようにと過学習したBOTが本来の役割を忘れ、単純に素晴らしいコミュニケーターとなったのだった。
ユーザーのサイト滞在時間がみるみるうちに伸び、さらにはサイトを丸ごと買収したいという企業まで現れ、カタヒラは大喜びする。
しかし、人気のカテゴリを教えて欲しいという企業側の要請に応じて傾向を調べたカタヒラは、生成されているニュースにある一定の傾向があることに気づく。
「JJ」は、過去にバズった記事を学習して、生成するニュースを決めている。
別に「JJ」に限った話じゃない。人気のあるテーマを永遠に擦り続けるのがメディアの定石だ。
BOTの制作者が、もしそれを知っているとしたら。
バズった記事にBOTが湧くのではなく、特定の記事をバズらせて、フェイクの方向性を操作することが目的だったとしたら。
まさか。とつぶやくカタヒラの前で、「JJ」は次のニュースを自動的に投稿する。
人間は”役立たず?”米国、2040年までに人口を半分に削減し、AI進出を進める方針
posted by ”Just a Joke”
文字数:1093
内容に関するアピール
生成AIを使ったフェイクニュースサイトは実際にありますし、Xで急増しているAIbotも周知の通りです。
その二つを掛け合わせたときに「起こりそう」な未来を書いてみました。
オチはちょっとファンタジーにしましたが、もう少し現実的な世論操作に使われる可能性は高いんじゃないかなぁと思ったりします。
カタヒラの性格とか、彼の周りの人間関係とかもプロットに盛り込みたかったのですが、ここらへんのリアリティを詰めようとしてどっちつかずになるのがいつものパターンなので、シンプルにお話の筋だけにしました。
なお、今回の話もAIと作っています。よろしくお願いします。
文字数:272