梗 概
ワタルくんと帰りたい
「わたし、ワタルくんと婚約してるから」
アミは中学のクラスメートの前でどういうわけかそんな嘘をついてしまった。本当はワタルくんとは話したこともない。だけど、お付き合いするなら成績優秀、スポーツ万能で生徒会長も勤めているワタルくんがいい。嘘をついてしまったなら本当のことにすればいいだけだ。
だからアミは次の生徒会の選挙にでて、見事に副会長に就任した。しかしワタルくんはその年、交換留学に旅立ってしまった。それならアミも同じ国に行けばいい。しかし一学年上のワタルくんはアミが留学のために渡航した時にはもう現地の大学に通い始めていた。アミも同じ大学を受験する。アミが意気揚々と外国の大学の入学式に参加した時、ワタルくんは宇宙開発の会社のインターンを経て、宇宙探索のメンバーに選抜が決まっていた。アミが同じ会社のインターンになって、同じように探索メンバーに選ばれた時、ワタルくんはもう20光年先の星域に旅立っていた。焦るな、まだ間に合う。アミは進路を変更して、探査機の開発に従事する。待っててねワタルくん。もっと早い宇宙船を開発してすぐに会いに行くから。
新型の宇宙船に乗り込んでアミは宇宙へとワタルくんを追いかける。するとワタルくんの乗った探査機は、初めて接触した宇宙人の捕虜になってしまっていた。科学力の差から、とても太刀打ちできる相手ではない。アミは宇宙戦争ものの映画を一万回近く再生しながら、ワタルくんを捕らえた宇宙人を成敗するために近くの星域を駆けずり回り、同盟を取り付けた。その上でワタルくんの身に危険が及ばないよう最新の注意を払いながら、ならずものの宇宙人たちを成敗する。
しかし、その時ワタルくんは彼らを攫った宇宙人たちの心を掴み、彼らのボスになっていた。ワタルくんを取り戻すにはワタルくんと対決するしかない。アミは単身彼らの本拠地に乗り込んで、ワタルくんと対決する。ついにワタルくんに話しかけることができた。ワタルくんとの熾烈な戦いは三日三晩に渡り、周辺の星々はことごとく破壊された。勝負がつかないまま、アミはついにワタルくんに告白した。「ワタルくん、私と付き合って!」その言葉に驚いたワタルくんにわずかな隙が生まれる。それを逃さず、ついに勝負はアミの勝利に終わった。
アミはワタルくんの手を取って「帰ろっか」と言う。ワタルくんも「そうだね」と言う。この時を迎えるためにアミはとっておきの時空の特異点を確保してあった。「ここをくぐればまたあの時の中学校に戻れるから」
ワタルくんと一緒に帰るために、アミはそれまで任命されていた宇宙総督府の総長の座を副総長に譲り渡す任命式を執り行った。すべての準備を終えたあと、アミはワタルくんの手を取って、二人でその特異点からあの日の教室に帰ることにした。
文字数:1145
内容に関するアピール
小さな嘘をとことん本当のことにする力を持っている子がいたとしたら、ということを考えながら書きました。
文字数:50