お姫様の秘密

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梗 概

お姫様の秘密

小学三年生のいちごは、「私は遠い星のお姫様」など突拍子のないことばかり言って、クラスで少し浮いている。
 ママは何度も「あなたはお姫様じゃなくてパパとママの子」と言って聞かせているが効果がない。育て方を間違えたのかしらと悩むママに、パパはそのうち皆とも馴染めるようになるさと気にしない。
 だが、ある日ママは学校の先生に呼び出される。
 いちごが「UFOが飛んでいた。銀色の宇宙人を見た」と言いはって、からかった男子と派手な喧嘩になり、相手に少しだが怪我をさせたというのだ。
 それを聞いたママは、学校から帰りながらパパに電話をする。
「いちごがUFOやら宇宙人やら言い出したの。心配だわ」
 ママの話を聞いて、パパは早く帰って来てくれた。そして、いちごに向かって本当に見たのか、見たのならいつ、どこでと問いただし
 いちごは昨日の夜、寝る前にお月様を見たらその周りにたくさんUFOが飛んでいて、家の前の道路にタコ宇宙人がいたと話した。
 それを聞いたパパは、急いでママといちごを車に乗せると、近くの山へと走らせた。そこは森林公園があって家族でよく遊びに来た山だったが、今日は公園の駐車場ではなく林道を通って更に奥へ奥へと進んだ。これ以上は行けないという所まで来ると、パパはポケットから小さなリモコンのような機械を取り出した。スイッチを押すと、地面の中から銀色の物体が現れた。
「奴らに見つかった。他の星に逃げるぞ」
 だが、時すでに遅く、いちご達は宇宙人に囲まれていた。空には数えきれない程のUFOが集まっている。
「ようやく見つけましたよ、姫。まさか地球人に擬態しているとは」
 宇宙人は◎×▼星の住人だった。◎×▼星は長い間王家によって支配されていたが、革命が起き、王族は皆殺しにされた。だが一番幼い姫だけが側近の手により逃げのびた。それがいちごだと言うのだ。
 自分がパパとママの子ではないと知って、いちごは泣き出す。
 革命は成功したものの、政治は安定しておらず、人心の掌握のためにはシンボルとなる高貴な血筋が必要と、支配者である将軍が大軍を率いていちごを連れ戻しに来たのだった。
「こんな原始的な星なら大軍を率いてくるまでもなかったな。姫は連れて行くぞ」
 宇宙人はいちごを助けようとしたパパとママを撃った。倒れるパパとママ。泣き叫ぶいちごを宇宙人はUFOの中へ引きずって行く。「あなた。いちごは?」
「ああ。奴らうまく騙されてくれた」
 それを聞いたママは安心したように微笑み動かなくなった。
 本物の姫は地球ではないもっと遠い星に逃げている。いちごは◎×▼星人をおびき寄せるための囮だった。
「いちご、嘘じゃない。お前はパパとママの子だ。私達が全身全霊をかけて作った影武者兵器・壱號。この星もろとも奴らを吹き飛ばすがいい」

「パパ……ママ……」
 リョウカイ

閃光と共に、宇宙船の大軍と一つの星が消えた。

 

文字数:1188

内容に関するアピール

小さな嘘とはどんなものだろうと考え、親子の間の血縁の有無をテーマにしました。

「うちの子じゃない」という、よくある言葉から話を広げていき、どれが嘘でどれが真実か、二転三転するような構成を狙いました。
ラストシーンは「お前は私達の子だ」というパパの言葉と対比させ、「本当の親がこんな事をさせるのか」というものにしました。

 

最大限の効果というと自分でも甚だ疑問で、テーマをどう嚙み砕くかというのが自身の課題だと思いました。

 

 

文字数:206

課題提出者一覧