エイリアングレード1/1シュウくん

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梗 概

エイリアングレード1/1シュウくん

「ユウって美味しいもの食べる時すごい顔になるよね、般若みたい」
彼氏の心ない一言を愚痴ったネットの書き込みがバズ、大手ネットメディアに取り上げられ「理想の彼氏像とは」「恋人に求めるもの」「ダメな男性とは」等々の視点により侮蔑的な言葉の応酬を伴いながら語り尽くされたころ、未発達文明の観察を趣味とする異星人、イシュダが偶々その書き込みを見つける。
イシュダは一連の書き込みに用いられた自分たちの言語で翻訳しきれない侮蔑的な表現の対象がどんな人物なのか興味を持ち、情報集積復元装置パラペラムを使用しユウの彼氏「シュウくん」の再現を目指す。

パラペラムは入力した情報を基に使用者の望むような形式で復元する装置で、入力フォームも公開することができる。入力した情報量が少なければ再現率も下がってしまう、興味を持った趣味サークルの同志に情報収集および入力の協力を求めた。
しかし、ユウの書き込みは二人のエピソードがほとんどでシュウくんの詳細は語られておらず、シュウくん自身の書き込みも見つからなかったため、ち密な再現には至らなかった。

半ば諦めかけたころ、同志の一人ウークがある提案をする。超星連盟の文化向上委員会に、地球文明の加盟を打診しようというのだ。
超星連盟は未発達文明の文明レベル向上を目的とした慈善事業を行っている。その対象として地球文明を選ぶことで、シュウくんを直接観察しようというのだ。ウークはその委員会の末席に名を連ねていた。
慈善事業の対象は多く選ばれることから選定自体の難易度はそこまででもない。
ウークの根回しにより、地球は文化向上委員会の対象となり、公式に打診が行われることとなった。
条件はただ一つ、大使としてシュウくんを派遣すること。

対象が在住している可能性が高い日本の政府が窓口になり、シュウくんを捜索するも一向に見つからない。状況は一つの可能性を示していた…シュウくんは実在しないのだ。
日本政府がその結論に至ったころ、彼女のユウが見つかる。
板橋区のマンションで見つかったユウは高橋雄三(43歳・独身)だった。
超星連盟への参加をこんな顛末で不意にするわけにはいかない。
取れる手段はただ一つ、シュウくんの設定を握っている(であろう)高橋雄三に協力させシュウくんをでっちあげることだった。

あらゆる手段を使い超星連盟の眼を誤魔化し、なんとか用意されたシュウくんは大使として超星連盟本大会の舞台に立つ。
メディア中継でそれを眺めていたイシュダは配信されている映像データをパラペラムにそのまま流す。大使の演説が終わるころにはきっとパラペラムの再現も完了しているはずだ。

演説が終わりとともにパラペラムが再現したシュウくんは先ほどまで見ていたものと似ても似つかなかった。
そのときイシュダは何故あれだけの侮蔑表現が必要だったのか地球人の気持ちが少しわかった気がした。

文字数:1175

内容に関するアピール

ネットに氾濫する裏の取れない話にソースを求めようとする宇宙人とソースを作ろうとする地球人の話です。
小さな嘘は「ネットの書き込み」です。嘘設定というかまんま嘘話になってしまいました。
ネットの小話がどんどん広がって、スケールの大きい話になったら面白いなと思って書きました。
スタートが嘘なので別々の方法で再現しようとした両者が一致しないというオチです。
イシュダたちはシュウくん観察できたら再現する必要なくなるじゃん!と思うかもしれませんが、趣味なのでやれるだけやってみたかった感じです。

文字数:240

課題提出者一覧