ニューワールド

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ニューワールド

1.
 夏のリゾート地ではみな薄着だから、金持ちでも貧しくても区別がつかない。金が少なくても堂々としていられる。アガディールの、太陽が降りそそぐビーチに面したカフェで、サングラス越しに周囲のリゾート客と大西洋を眺めながら、ヒロムはぼんやりとそんなことを考え、安心しようとしていた。アロハシャツの前をはだけ、短パンにサンダルの、夏らしい服装。みんな、俺と同じ夏の装いだ。
 じっさいには、違う。ペラペラの薄いシャツや一見おなじデザインのサングラスでも質が違い、すなわち価格の桁が違うし、ほんとうの金持ちは高級ホテルのプライベートビーチにいるものだ。ヒロムには見えない世界だ。それに、金が「少ない」ことと、「ない」ことも違う。稼ぎが少なくたって、リゾート地に遊びに来るやつは、たいてい遊ぶための蓄えをもって、楽しそうにしているものだ。失業していたり、借金を抱えたりしているやつをのぞけば。そしてヒロムは失業者だった。金に困っていた。楽しむ余裕はなかった。
 よその街で、ローマ遺跡の修復作業員の仕事にありついて、漆喰やペンキにまみれて働いていたのは一週間前までのこと。人並みに働いて、当座の遊ぶ金くらいは稼げるはずだった。しかし現場のボスと相性が悪かった。〈東の民イースタン・ピープル〉を目の敵にするかのように、差別意識丸出しでEP《イープ》、イープとヒロムを罵倒しつづけ、なにがしかのトラブルがあればすべて責任を押し付けてくる男だった。殴りかかってクビになるまで、わずか三日だった。幸い、給与システムは現場を介さずに市からヒロムの口座に振り込まれる仕組みだったので、三日分の給料は受け取れた。だが遺跡内のキャンプから追い出されたので、住所不定になった。
 モロッコ南部、大西洋岸のアガディール。マグリブ(日の没するところ、北西アフリカのアラブ諸国地域)でも有数のリゾート地の一つだ。国内だけでなく、隣国スペインやフランスなど本来の欧州からも、アラブ諸国からも、旅行者がやって来る。ヒロムがここに流れてきたのは、安ホテルがいくらでもあるためと、溢れるリゾート客の中では身分チェックが甘いためだった。
 モロッコにも、環地中海経済機構にも、もちろんEUにも、ヒロムは市民権をもっていない。出身地で発行された身分証とパスポートはあるが、市民権とは異なる。〈東の民EP〉だから当然だ。仕事をもっていなければ、住む場所にも困る。この街なら、毎晩の支払いさえできれば泊まれるホテルはいくらでもあった。
 しかし、残高は残り少ない。だから、キプロスにいるはずの恋人に連絡した。
「金、貸して欲しいんだけどさぁ」
(ブチッ)ツー、ツー、……
 通話は一方的に切られた。支払いアプリにチャット、一緒に遊んだいくつかのオンラインゲーム、その他あらゆる連絡手段を試すが、一足早く、あらゆる連絡手段がブロックされた。
 つまり、遊んでいるわけにはいかない。最優先は職探しだ。骨伝導マイクが拾える小声でログインした。表の、合法な、ネットではない。〈東の民〉専用のプライベートな空間。自分たちの言葉が使える秘密の領域。ほかの連中がほとんど知らない世界。幻の、実体不明な仮想空間。情報通は、声を潜めてイープネットと呼ぶが、〈東の民EP〉はただ〈世界ザ・ワールド〉と呼んでいる。自分たち(だけ)の世界。
 サングラスの裏面に表示されたメニューを視線で選択する。
 マグリブ/モロッコ/ジョブ
「アガディール」
 掲示板に流れる投稿がフィルタされ、この街の情報だけに絞られる。それなりに、住んでいるやつがいるのだろう。情報はゼロではなかった。しかし、どれもパッとしない。遺跡の仕事より安いのはごめんだ。むしろ、派手に稼げる仕事が欲しい。自分にはそれだけの才覚があると、ヒロムは信じている。
 一件、目を引く投稿があった。

【社長】
稼げる仕事! 条件:モロッコ国内どこでも行けるやつ、恐れ知らずなやつ、サムライ、100万EURの仕事あり。詳しく聞きたいやつは直接連絡。ここでは何も話さない!

ヤバい。ひとめ見て、わかる。まともな奴ならば、見なかったことにするだろう。しかし、ヒロムは恐れ知らずのサムライだった。自分ではそう信じていた。コツコツ働くのは嫌いで、一攫千金を夢見ていた。
 サングラスの裏側に映る文字は誰にも見えないし、誰かがヒロムに興味をもつこともないのだが、大きい仕事のことを考えるにはカフェは落ち着かない。会計をすませて出ることにした。残高が少し減った。
 ビーチから離れて、陸の方へ十分ほど歩くと宿泊しているホテルだ。ちょっと動作が不安定なエレベーターに乗って、四階に上がる。部屋は狭い。外出中はエアコンが切れているから室内は高温だ。窓を開けると、向かいの建物の壁が目の前だ。斜めに目をやれば、建物と建物の隙間から、かろうじて大西洋の輝きが眺められる。いちおう、部屋のステイタスはオーシャン・ビューということになっていたはずだ。
 空気を入れ替えたら窓を閉め、冷房をかける。ミネラル・ウォーターを飲んで落ち着くと、サングラスをかけて、再度ログインした。
 さっきのメッセージは残っている。
「直接連絡」という文字列にフォーカスすれば、メッセージアプリか何かが立ち上がるのだろう。そうしたら、たぶん引き返せない。仕事が向いてないので止めるとか言って逃げても、逆に追跡される可能性は高い。
 ヒロムは、条件を精査して、引き返したくなる可能性について熟考する。

モロッコ国内どこでも  OKだ、移動の制約は何もない。切符買う金くらいある。
 恐れ知らずなやつ    バッチリ
 サムライ        俺のことだ(サムライというものを写真でも見たことはなかったが)
 100万EUR       まさに、求めている仕事じゃないか?

三分考えた。どこにも問題はない。前進あるのみだ。直接連絡。
 視野いっぱいに、夜が広がった。メタバースだ。星と、満月が輝いていた。屋外なのだろうか、壁も天井もない。足元は砂利が敷かれている。主観距離で五メールほど前に幅の広いソファが置かれ、その両横に松明が立てられている。青白い炎が、ソファにゆったりと座る男を照らしていた。恰幅のいい、ダブルのスーツを着た姿。貫禄から壮年の男だと感じさせるが、年齢は不明。もちろん、アバターの本人の年齢は無関係だが、それだけでなく、顔は牛面を被っていて見えないからだ。立派な角が生えていた。こいつが、社長なのだろうか。
 ヒロムのアバターは、〈世界ザ・ワールド〉ではマンガっぽくデフォルメされて直立するドブネズミだ。恐れ知らずというより、カワイイという形容が似合っている。いきなり本人と面接するとは思っていなかった。アバターを変えて出直そうかと一瞬思った。しかし、その必要はなかった。牛面の男は立ち上がると、広い歩幅でヒロムの前まで歩いてきた。ヒロムのアバターは身長50センチほどの設定だが、相手は2メートル以上ありそうだ。
「あんたが社長さん?」
「いかにも」
 そう言うと、男は右腕をヒロムの小さい胸に突き出した。そのまま、拳が胸の中に潜り込む。腕を引くと、拳には巻物が握られていた。男は巻物を開いて、書かれている文字を読む。
「ヒロム・カワイ。23歳、身長168センチ、体重60キロ、アレクサンドリア出身、現住所不明、フリーランス、……」
 ヒロムの個人情報だ。ぜんぶ読まれてしまうなら、アバターがカワイイか否かは関係なさそうだ。ドブネズミキャラのまま、堂々と名乗る。
「俺がヒロムだ。稼げる仕事があるってのを読んで、ここに来た」
「やる気はあるんだな? 今、メンバーを集めている。一週間後に、カサブランカに来い」
「仕事は?」
「力で金を奪う仕事だ。怖いなら、今すぐ出て行け」
 怖くはなかった。ヒロムはサムライなのだ。サムライという存在を、よくは知らないが。ヒロムが意識するよりも早く、ドブネズミは答えていた。
「怖いものか、カサブランカに行くさ。100万ユーロの仕事、楽しみにしてる」

2.
 アガディールからカサブランカへ、特急列車に乗る。それは、かつてのモロッコ国鉄、いまはマグリブ=イベリア大陸間鉄道企業国家インターコンティネンタル・レイルウェイ・カントリーとなった鉄道国家ONCFにパスポートを見せ、個人情報を参照させることを意味する。乗車の手続きに国境越えのストレスはないが、それは電子的な手続きが非接触でおこなわれているからだ。
 モロッコの大都市間を結ぶ高速鉄道・第3世代LGVは、隣国の首都アルジェへ接続するだけでなく、ジブラルタル海底トンネルを潜ってスペインのマドリードまで伸び、そのまま、フランス国鉄にまで乗り入れしている。もちろん、EU域内では個人情報は個人に属する。GDPR7.0を遵守するから、EU中央政府も、モロッコやアルジェリア、スペインといった旧国家群も、近年増加している新興の企業国家、都市国家も個人情報をみだりに流用したりはしない。鉄道企業国家は旅客の輸送義務を果たし、その間サービスの質を最大化するためにのみ、個人情報を預かる原則だ。
 特急列車は大西洋岸のアガディールから内陸へ向かいマラケシュを経由し、そこから再び大西洋岸のカサブランカを目指す。約500キロのルートを2時間の旅路だ。車内はほぼ満員だった。予約した席に座って落ち着くと、サングラスを外さず、そのままログインする。
社長からメッセージが入っていた。
「合流前に、道具を購入しておけ。ゴムハンマー、結束バンド、梱包用の粘着テープ、使い捨ての端末」
 仕事のための道具は、自費で調達しろと言うことらしい。いかにも、暴力的な道具ばかりだ。費用の分は、稼ぎで取り戻させてもらおう。
 途中、中間地点で大観光地のマラケシュに停車する。半数の客が降り、同じ数の客が乗り込んできた。都市近郊を離れれば、車窓から見る景色は乾燥した大地が続く。
 予定どおりの時刻に、カサブランカのカーサ・ボイジャーズ駅に到着した。駅前広場からトラムに乗って、街中の商店街に移動する。命じられた道具を工具店などで探しては買い、リュックに押し込んだ。ひととおり買い揃えてから、ビルのトイレに入って再ログイン。
「買い揃えたら、集合だ。**********(合流場所の詳細)、17時00分 遅れたら、メンバーから外す」
 まだ1時間以上ある。移動ルートを確認してから、水を流した。

 集合場所は郊外のさびれた雑居ビルの駐車場で、一台だけ、バンが駐車していた。ヒロムが到着した時には、すでに車の周りを二人の男が囲んでいた。どちらも黄色い肌の〈東の民〉の男だ。一人はヒロムよりも頭一つ背が高く、横幅も広い。もう一人は身長170前後のヒロムと同じような体格で、上下黒のツナギを着ている。手も黒い革手袋をはめていて、ワークブーツも黒い。
「おまえが三人目か。俺は、マスターだ」
 大きい男が低い声で〈東の言葉〉で名乗った。何のマスターだか不明だが、問い返すのは危険だ。こっちを睨むバイザー越しの目つきに不穏な圧力を感じる。
ELDイー・エル・ディー
 もう一人の男がそっぽ向いたまま、ぶっきらぼうに言う。記号のような名前。
 もちろん二人とも本名のわけはない。この場限りの名だろう。お互い、余計なことは知らない方がいい。
「俺はロム、よろしく!」
 ヒロムはマスターを見上げて、陽気に笑ってみせる。ヒロムのロムではなく、Read Only のROM、大人しくしてますよ(する訳ないでしょう?)、という意思表示のつもり。何も伝わっていないのか、二人とも無反応だ。
 マスターが車に乗れと促す。この場を仕切るつもりらしい。社長からも、そう命じられているのだろうか。ELDが助手席に、ヒロムは後部座席に乗り込む。マスターが運転席に座って命じた。
「ログインしろ」
 社長に先日面会した時と同じ空間に、三人が現れた。ソファに寛ぐ牛面を被った社長の前に、左から小さなドブネズミ、中華風衣装の大男、黒のパーカーのフードを被って顔を見せない子供が並ぶ。社長が、立ち居位置を並べたのだろう。
「リョウジ・コバヤシと言う名の貿易商がいる。名前のとおり、同胞だ」
 存在感が大きくなったように感じられた社長の背後に、まるで企業の会議室のスクリーンのような白い矩形が広がり、映像が投影された。コバヤシという男の顔写真、目的地までのルートを示した地図、これからのアクションを示した図の三面だ。
 たとえ〈東の民〉であっても、同胞とは言えない。離散した〈東の民〉の子供たちは、同じ国で生まれ育ったわけではない。ヒロムはたまたま、母と育ったアレクサンドリアに身分証(正式な国籍ではない)とパスポートを得ていた。でも、まあ、顔は同類だな。ヒロムは中年男性の誠実そうな顔写真を見て、そんなことを思った。ELDもマスターも、おそらくモロッコや周辺国のどこかが出身地なのだろうけど、まったく異なる遠国から流れて来たのかもしれないし、知るつもりもない。様々な地の、その国の人間と結婚して国籍と市民権を得ている者や、新興企業国家の国民(多くは軍事国家の傭兵だ)になっている者もいるが、ヒロムのように、まともな権利を持てないものも多かった。
「こいつが自宅にいるところを襲って、脅し、口座から、俺の口座に振り込ませろ。取り分は七対三だ。三を、お前たち三人で分ける。現場で見つけた金品は好きにしていい」
 社長が命じたプランはこういう事だ。
 リョウジ・コバヤシはカサブランカ市内に貿易会社のオフィスを持ち、主にカサブランカ港から、諸々の商品を輸出している。四十歳の〈東の民〉だが、五年前にモロッコ人の女性と結婚して改宗し、モロッコ国籍を得ていた。二人の間に子供はない。会社は結婚した年に設立している。それ以前の経歴については社長の説明はなかったが、貿易会社は成功していて、アイン・ディアブの高級住宅街に妻と二人で住んでいるという。ここは、地区全体としても邸宅自体も警備が厳しく、不審がられずに近づくのは容易ではない。
 しかし、コバヤシは郊外の東洋人地区に別邸を持っていた。集合住宅の、家族向けのサイズの部屋だ。
「情報によると、ここには〈東の民〉の女性と、小学生の娘が住んでいて、コバヤシは週のうち四日、この部屋に帰っている。定期的に、日、月、火、水曜日だ」
 つまり木曜日からイスラムの休日である金曜日、そして土曜日まではモロッコ人の妻の元へ帰っているが、平日は、会社と別邸を往復しているということだった。住所、部屋番号は特定できている。警察も警備会社のサービスも普段は手薄なエリアだ。
「暴力はいい。しかし生命を奪うような真似はするな。そうでなければ、警察も動かない」
「コバヤシが警察に訴えたら? そうしたら動くだろう?」
 ドブネズミが、牛面だけで自分の身長と同じくらいの大きい社長に向かって訊いた。ヒロムは考えるより早く口が動く性格だと自覚しているけれど、メタバース内ではさらに遠慮なく早い。
「〈東の民〉が警察に届け出るわけがないだろう。本気で動いてくれる事はないと知っているし、金を奪われたと訴えるならば、元々は幾らの金があったのかを説明しなければならんだろう。コバヤシの財布も、会社の帳簿も、警察に見せられるようなキレイなものだと思うか?」
 金は、後ろ暗いところから奪えという事らしい。
「暴力はいいというが、女子供が相手でも構わないか?」
 訊いたのは、黒いフードから顔を見せないままの子供、ELDだ。
「お前たちの良心に任せる。俺は、金が振り込まれればそれでいい」
 良心。三人で笑った。ここはきっと笑うところだ。
「七対三の、三のほうについては、俺たちが勝手にすればいいのか? 社長の口座から、俺たちに報酬を振り込んでくれる訳ではないだろう?」
 マスターが肝心なことを訊いた。
「ELD、使い捨ての口座番号を四つ教えておいたはずだな」
「おっと、そうだったな。末尾0番が社長宛の振込用で、1、2、3番を分けあって使えってことでしたっけ」
 ELDから、末尾が3の口座番号とか関連情報一式が届く。
 こいつに、全体の一割をもらうという寸法だな。ヒロムが甘く考えていたら強制終了させられて、三人は車の中に戻っていた。ELDが生身の、低い声で囁く。
「口座の有効期限は水曜日。今日を入れて三日で終わらせろってことだな」
「それを過ぎたら…」
「解散しろってことだ。ダラダラやってたら足が付く」
「現場に向かうぞ」
 マスターが宣言し、ガソリンエンジンのバンを、駐車場から出した。

3.
 マスターが運転する車は、表の通りに出ると他の車と速度を合わせながら、目的地へ進んでいった。周囲を走る車を見ながら、マスターは速度と車間を調整している。助手席からELDが車線方向や左折、右折の指示を出す。
 後ろからヒロムが訊いた。
「車に任せればいいんじゃ無いの? オートでも手動でも、足がつくときはつくだろう?」
「社長が用意したこの車はな、そもそも自動運転がないんだよ」
 マスターの答えに、助手席のELDが補足する。
「無いというか、ユニット丸ごと壊れてて、コンピュータは全面停止、電子系統全滅。自動ブレーキはおろか、パワーステアリングすら死んでる、こりゃ故障車だよ。ナビゲーションも無し、端末接続不可ってわけだから、お前さんが用意してくれた使い捨て端末で地図を見てる。不便この上なし。仕事の後でこいつを乗り捨てても、どこ走ったかは皆目分からないようには出来てる。まるで二十世紀の古典的なガソリン自動車だ」
 空が濃い紫色に沈んできた。日没の礼拝を呼びかけるアザーンが、いくつもの方角から響く。開け放った窓から吹き込む風が涼しい。ガソリン車さえ走っていなければ自動車道路の空気は澄んでいるが、彼らの車の他にもガソリン車はけっこう目立つ。とは言え、大型トラックの排気を避ければ、気になるほどではない。EUの環境規制は中央と周縁部ではルールの一貫を保てない。
 風に吹かれながら、ヒロムはつぶやいた。
「現地に着いたら真っ暗だな」
「人の家を襲おうってのに、明るいうちに出掛けるやつがあるか。いい時間だ」
 ELDが応える。マスターは道順の確認以外は口を開かない。交差点をまっすぐ通過したところで、ELDに尋ねた。
「次の信号で右折だったな」
「おう、右折してまっすぐ。五百メートルも走ったら、適当な影になる場所で止めてくれ。そこから歩きだ」
 東洋人地区といっても、居住者が決められていたわけではない。いつの間にか、外国人のコミュニティができ、アジア人が増えてきた。通りには、看板がアラビア語やフランス語ではなく、簡体字、繁体字、タイ文字、ハングルで書かれた飲食店が目立つ。その表通りを避けて、車を街灯のあたらない塀沿いに止めた。三人は静かに車を降りた。背中のリュックに、仕事に必要な道具をいれてある。目的地の集合住宅まで、少し歩いた。路地を抜けて、近づく。
 コバヤシが住んでいる建物は、表玄関にはオートロックのセキュリティがあるが、ほかに、裏側に自由に入れる通用口があった。鉄扉を引くと、なんなく開いた。薄暗い照明が灯っていて、コンクリートの地面の上に、足跡や二輪車のものらしいタイヤの跡が重なっている。住民が日常的に使っているようだ。入ると、左右に廊下が伸び、正面に中庭が広がる。ヒロムとマスターは廊下を右へ進み、ELDは左へ分かれた。上階へ上るための階段をそれぞれ探す。コバヤシの部屋番号は七階にあることを示していた。エレベーターは監視カメラを備えている可能性が高いので、あっても乗らない。ヒロムとマスターは廊下の突き当たりまで歩いて、階段を見つけた。七階まで上っていく。
 各部屋の部屋番号を確認しながら、七階の廊下を地階で歩いてきた方向に戻っていく。左側――部屋の並ぶ壁には玄関と、廊下に面した部屋の窓が並んでいる。中から生活の音が響いてくる部屋もあれば、何か寂れて、人が住んでいないように感じられる部屋もある。
 右側は、中庭が見下ろせた。この建物は中庭を囲んだ矩形になっている。上に、あと三階あるらしい。廊下の中間点を過ぎ、さらに五部屋を通過したところで、中庭を見下ろす壁に寄りかかって、ELDが佇んでいた。玄関の正面からは、少し離れた角度だ。中からは人がいると気づかれないだろう。
「ここかい?」
 声を潜めてヒロムが尋ねる。
「ああ、人の気配はなし。もっとも、静かにしてたらわからん」
「鍵は?」
 ELDは革手袋をはめた右手を上げ、ドアノブを回す仕草をしてから両手でバツを作った。
「かかってるさ。この階に上がってくるまでが都合良すぎただけだ」
 強引に踏み込むべきか、人の動きを待つか、三人は少しの間、迷った。その間に、ヒロムはリュックから仕事道具を取り出し、マスターとELDにも配った。リュックを背負い直してゴムハンマーを手に握る。
 廊下に面した部屋の窓から、室内に照明がついたあかりが漏れてきた。その部屋に人の動く様子はないが、奥の室内に、誰かいるのだろうと思えた。すぐに扉一枚隔てた玄関に人が近づく音がした。
 ドアが開いたときに影になる位置に、ヒロムはゴムハンマーを握りしめて立った。マスターとELDはドアから離れる。
 内側から鍵を開ける音がして、ドアがしずかに開いた。
 ためらっていたら、できない。ヒロムは、出てきた人間を確認することもなく、ゴムハンマーを振り下ろした。自分の頭の位置を想定していたが、後頭部の位置が低い。ハンマーが空を切り、つんのめりそうになる。バランスを取り、腕を曲げて、30センチ以上も下に、もう一度ゴムハンマーを振り下ろす。相手の頭を打った感触。そのまま、人影が声も上げずに倒れた。
 コンクリートの廊下にうつ伏せに倒れていたのは、小柄な、少女のようだった。〈東の民〉らしいまっすぐな黒髪が広がっている。話に聞いていた、コバヤシの娘だろうか。男の頭をぶん殴るつもりでいたのに。動かない。気絶したようだ。
 ヒロムがパニックになっていても、マスターとELDは冷静だった。ふたりは倒れている少女を両脇を持って起こすと、引きずって玄関の中に入れた。
「お前も中へ入れ」
 マスターに言われて、ヒロムも中に入る。廊下の左右を見回しても、他に人の気配はないままだった。
 玄関からまっすぐ廊下が伸び、4メートルほど先の突き当たりにドアがある。扉は閉じているが、その先に部屋があるのだろう。また、玄関からすぐの廊下の右手には扉の開いた部屋があった。
 ELDがその部屋を覗いていた。さっき、あかりが漏れてきた部屋になるだろう。
「こっちは寝室だ、誰もいない。奥も静かだな、こいつ一人だったかな」
 マスターがヒロムに命じる。
「こいつを縛って、寝室に放り込んでおけ。俺とELDで、奥の部屋を探る」
 ヒロムは気を失ったままの少女を寝室に引っ張り込んだ。ベッドが一台、そこにぬいぐるみがあって、彼女の部屋らしい。抱きかかえて仰向けに寝かせる。
 長い髪が、ベッドに広がった。
 両手の手首を幅の広い結束バンドで縛り、足首も同様にする。そして粘着テープで口を塞いだ。これで、急に目覚めても、暴れたり大声をあげたりできない。
 ベッドサイドに、厚みのある封筒が無造作に置かれていた。気になったヒロムが手を伸ばし、中身を確認する。現金の、札束だった。表の一枚は、100ユーロ札だ。紙テープで三束に分けて縛られている札束は、それぞれ、それなりの厚みがある。ざっと100ユーロくらい? 三束で300ユーロだろうか。懐に入れた。
 他にも何か金目の物はないかと物色する。とりあえず、寝室の中には他に金目のものはなさそうだ。ELDに呼ばれて、奥の部屋へ移動する。
 そちらは広めのリビングルームで、そこから別の部屋のドアもあった。部屋の中央にあるテーブルとソファを囲んで、マスターとELDが立っている。マスターがヒロムに向けて状況を説明した。
「ほかに人はいない。ざっと見た限りは、現金なんかもないし、売りさばいて大金になりそうなものはないな」
「もっとすみずみまで探せば何かあるかも知れん」
「ああ。コバヤシか女が帰ってくるまで、探そう。端末はあった。娘が起きたときにコバヤシが帰って来てなければ、こいつで呼び出してもらおう」
「ロムのほうじゃ何か見つけたか? 寝室には、金目のものはあったか?」
 ELDに訊かれて、ヒロムは懐にしまった封筒を素直に取り出した。
「金の入った封筒。現金三束」
「こいつはいい。今のうちに分けておこうぜ」
 ELDの言葉にマスターも同意した。枚数に違いがあるのか、この場で確認していられないが、ざっと同じ厚みだから気にせず分けた。100ユーロ札百枚として、10,000ユーロ。

4.
 しばらく、静かだった。コバヤシが帰ってくることはなかった。三人は手分けして物色した室内には現金は他になく、持ち出して換金できるようなものもなかった。もっとも、書斎にあった金庫は開けられないし、だいたい現金を30,000ユーロも放置してあったのが幸運なくらいだ。
 ヤバイ話に乗っちまった。こいつ、死んでねえだろな。
 ヒロムは、娘の鼻先に手を当てて、呼吸していることを確認する。寝室で彼女を見張るのはヒロムだけだった。
 おいしい仕事にありついて稼ぎたかっただけで、暴力でなんとかしたかった訳じゃない。これじゃあ、犯罪者じゃないか。「怖いもの知らず」って、そういうことなのかよ?  それに100万ユーロの仕事って掲示板にはあったけど、まだ、1万ユーロだし。この100倍、なんとかなるのかな、コバヤシって奴が帰って来れば。
「まだ目覚めないのか」
 マスターが入ってきた。犯罪といえば、この男が共犯者になるのか。偉そうな態度で勢いだけあるが、後先考えてないよな。
「まだだな、打ち所が悪かったかも知れない」
「引っ叩いて起こせ。こいつの端末で、コバヤシと連絡を取る」
 ほら。
 ヒロムが躊躇していると、マスターはヒロムを押しのけベッドの枕元に立ち、娘の頬を平手打ちにした。うめいて意識を取り戻したところで、口を塞いでいたテープを強引に剥がし、痛がるのもかまわず、〈東の言葉〉で尋ねた。
「コバヤシはいつ帰ってくる? 母親は?」
 すぐには答えなかった娘を、マスターが繰り返し問い詰める。同じ言語で、答えが返ってきた。
「今日は……帰ってこない。仕事だと聞いてる」
「二人ともか?」
 娘は少しぼんやりして答えなかったが、間をおいて、首を縦に振った。
「この端末はお前のか?」
 マスターは、顔の正面に室内にあった端末をかざす。虹彩認証が有効だったようで、画面が表示された。アドレス帳のどれがコバヤシなのかを尋ねる。
 娘が怯えながら答えようとしたところで、ELDも室内に入ってきた。三人に囲まれながら、連絡先を示した。”RYOUJI”でも”PAPA”でもなく、コバヤシが経営する会社の名前だった。
 マスターはコバヤシの会社を呼び出した。
「どうした? 今日は帰れないって――」
「娘の無事を望むなら、今から教える口座に金を振り込め」
 無言。コバヤシは沈黙した。
「どうした? 答えはイエスしかないよな!」
「自宅のままだな。今、警察に連絡をいれた」
 端末の位置を知られたのだろうか。
「ふざけるな! 〈東の民〉の頼みで警察が動くか、舐めたまねするなよ」
「私はモロッコ国籍をもつモロッコ人だ。お前のようなゴロツキと一緒にするな」
 コバヤシの強気な態度に、マスターは怯んだ。
 このマスターは行き当たりばったりすぎるぞ。ヒロムが呆れて、どう動こうか考えていると、ELDが先に動いた。
「ここまでだな。俺は降りるぜ」
 部屋を出て、玄関へ向かう。ELDが玄関のドアを開けると、遠くからサイレンの音が聞こえた。
 ヒロムも、マスターに付き合っていたら危ないと確信して、後を追った。階段を駆け下りる途中でELDに追いつく。
「俺についてくるな。ここを出たら、別方向だ」
 幸い、二人の他に、途中で乗ってくるものはいなかった。車のキーはマスターが持っている。移動は徒歩だ。二人は左右に別れて人気のない夜道を走った。マスターも、娘のことも、社長のことも、考えている余裕はなかった。
 社長の情報もデタラメなら、マスターみたいに突っ込んでいくだけの馬鹿もデタラメだ。

 郊外の東洋人地区から、街の中心部へは距離がある。しかし、止まるのはまずそうだった。自分がここに住んでいたのだったら、隠れるのには絶好の場所だが、サイレンの鳴る夜に、見知らぬ男を匿ってくれる親切な奴がいると期待するのは無謀だ。それに、ベトナム人や中国人、タイ人や韓国人が、自分を守ってくれる訳もない。〈東の民〉に優しい東洋人に、ヒロムは今まで出会ったことがなかった。
 徒歩と、トラムを利用して、カサブランカの中心部へ戻ることに成功する。人口600万人の大都市だ。人に紛れることはできる。しかし、ヒロムは現地人ではない。〈東の民〉だ。アフリカ大陸側のEU圏最大の国際都市だけにアラブ系以外の顔つきをした人間も多いが、それでも、ヒロムはアウトサイダーだった。
 だから、カサブランカから離れようと思った。カーサ・ボイジャーズ駅に戻ってきたヒロムは、迷わず、北へ向かう特急列車に乗った。
 マグリブ=イベリア大陸間鉄道国家へ入国。
 根無し草ではあるが、逆にどこにいても潜り込めるのが強みのはずだ。期待させてくれた金額にはまったく届かなかったが、懐には10,000ユーロ。ヒロムにとっては大金だ。この金を持って、大陸を越えてしまえば逃げ切れる。マドリッドか、バルセロナか。それともマヨルカ島でしばらく羽を伸ばすか。地中海の反対側、東のキプロス島まで行って、恋人とやり直すのもありだ。なんだ、馬鹿な共犯者に振り回されてたいへんだったけど、未来が楽しそうじゃないか。
 ヒロムを乗せた特急は、一時間後、ジブラルタル海峡の港町タンジェに到着する。列車は地下へ潜る。地下300メートルの大陸間トンネルへ。海峡を超え、スペインへ出るために。
 モロッコ警察から監視カメラの映像を受信していた鉄道企業国家は、昼間、アガディールからカサブランカまで乗った乗客に、該当すると思しき〈東の民〉がいたことを解析。同一人物がふたたび乗ってきたことを把握していた。タンジェで該当人物が降車していないことを確認。武装した警備隊は二名づつに分かれ先頭と最後尾の車両に乗り込む。ジブラルタル・トンネルを目指して車両が地下に潜ってから、乗客を縫いながら中央に向かっていく。先頭から三両目の車両に該当人物が座っていると列車からの報告を受信。先頭車両から乗った二名は、車両の前後から挟み撃ちできるように、後ろからの二名を待つ。揃ったところで客席は入っていく。
 廊下側の席に座っていたヒロムは、前から武装した男が入ってきたのを見て驚き、後ろを振り返ってさらに驚く。逃げ場はなかった。
 ジブラルタル海峡の海面下300メートルで、ヒロムは、警備隊に身柄を拘束された。

5.
 特急列車がセビーリャに到着したところでヒロムは降ろされ、警備隊と共にモロッコへ戻る列車で移送された。コンパートメントの一室に警備隊に囲まれて座る。両手の自由はきかない。カサブランカでモロッコ警察に引き渡され、取り調べを受けた。
 共犯者たちとの関係、被害者宅に狙いを定めた経緯、自分の行なった犯罪行為、盗んだ70,000ユーロの行方、等々。
「70,000なんて盗ってないよ」
 そう反論しても、被害額は変わらない。持っていた10,000ユーロの札束は、鉄道の警備隊に奪われた。そのままモロッコの警察に渡されたんだろうと思う。あの札束が自分の取り分の全てだし、マスターとELDで山分けした合計は30,000ユーロのはずだ。
 それでも、警察のいう数字が確かに盗まれた額だとするなら、マスターとELDがあと40,000ユーロ盗んでいるということだ。自分が寝室にいた間に、リビングで見つけたのだかもしれない。そして、自分には何も教えずどっちかが懐に入れた、あるいは二人で山分けした。
 そして、俺だけが追求されているということは、あの二人はまだ捕まっていないのか……
 自分だけ貧乏くじを引いている。あいつらの事を何か証言すると罪が軽くというのならいくらでも話してやりたいが、残念なことに何も知らない。市内の何台かの監視カメラに映った姿を自分だと認めた上で、体の大きいのがマスター、黒ずくめなのがELDと呼び名を教えることができただけだった。
 いつまでも勝手に拘束するな、弁護士をつけてくれよと抗議してもまともに対応してもらえない。
 そして、取り調べの日々が何日か続いたある日、警察ではない人間との面会があると言われた。

その日、取調室に現れたのは、アッシュブロンドの髪の、私服の女性だった。フランス語でヒロムの背後に控える警察官を下がらせた。この国では、フランス語はビジネス街の主流言語に戻っている。一対一になったところで、そのままフランス語で名前を名乗った。
「私はクリスティナ・ミハロヴァ。欧州移民局のものです。何語が話せますか」
 標準アラビア語とモロッコ方言、フランス語、ドイツ語、英語が示される。アラビア語が話せるくせに、フランス語で警察官に話していたのが偉そうだ。
「うるせぇ、俺たちの言葉で話そうぜ」と〈東の言葉〉で答えると、
「そのような言葉は存在しません」
 とそっけなく返される。そう返せるってことは、〈東の言葉〉だと認識できたのだろう。移民局の役人なのか他にも肩書きがあるのか知らないが、複数言語に堪能なやつだとしても、ヨーロッパに自分たちの言葉が分かる人間は珍しい。何しろ彼女の言葉どおり、ヒロムが生まれるよりも前に「存在しない」ことになった言語だ。
「モロッコの言葉で話すよ」と答える。
 ヒロムも含め、若い世代はアラビア語、フランス語、ベルベル語その他もろもろをミックスしたスラングで会話する。世代交代によって語彙は変化するが、ずっと、若い世代の伝統だ。アレクサンドリアからこの国に渡ってきたのは13、4歳のころだったから、周りに溶け込むために覚えたものだ。
「あなたと取引がしたい。罪を免除する用意があります。私に協力してもらうことが条件ですが――」
 願っても無いチャンスだ。ヒロムの肚は決まった。このまま裁判にでもなれば、禁錮十年だとかになってしまう。選択の余地はないが、冷静に、条件を聞いてみた。
「条件しだいだけど」
「アトラスの先に建てられた都市を知っていますか」
 聞いたことはある。砂漠に長城を築いたという話だ。サハラ砂漠に境界線を引くように、500キロメートルの壁が伸びているという。モロッコとその外側、今ではEUつまり拡大されたヨーロッパとその外部を示す境界線だ。
「アトラスのスフィンクス――」
「そう。あそこに、潜入してほしい」
「僕に、何ができると思ってます?」
「スフィンクスの建造にはいくつもの国から労働者が集められている。マグリブ各国やギニア湾諸国、大西洋の向こうのブラジルやメキシコからも、インドや中国からももちろん。だいたい国や民族ごとに集まっているらしいけれど、その中にはイースタン・ピープルの労働者もいる。彼らのコミュニティがある。そこに、労働者として入り、探索してほしい」
「探索の目的は――何を、すればいい?」
 〈東の民〉のコミュニティに潜り込む。ここを抜け出すにはいい話だが、スフィンクスといえば周囲はすべて砂漠だ。大都市だと聞いているが、ずっと潜入したままなのもぞっとしない。何をすればいいのか。
「スフィンクスの地下には数万台のサーバーがあって、都市機能を司るシステムが動作している。都市行政機能や、砂漠の中で生存環境を維持するためのAIや。モロッコの他の都市とは離れた砂漠の中に孤立した場所だから、外部とのケーブルや衛星通信の回線が切断されても、スフィンクスだけで機能するようになっている。
 これが、最近調子が悪い」
「悪いって、具体的には何か」
「サービスが停止して、インフラが止まったりね。完全な人工都市で、停電や断水が起きたり、空調が止まってブロック丸ごと蒸し風呂になったり。もっと、都市が狂っている話も聞く」
「それが、〈東の民〉に関係しているのですか?」
「イープネット」
「僕たちは、ただ〈世界ザ・ワールド〉と呼んでいる」
「その〈世界〉が、スフィンクスのシステムにただ乗りして、リソースを食っているのではないかという説がある。真相を探って欲しい。そして、事実ならば、私たちのセキュリティ部隊を導いてもらう」
「ちょっと! 僕は〈東の民〉ですが、ハッカーなんかでは無いですよ。あなたたちのセキュリティ部隊が、直接動かないのはなぜです」
「物理的なコミュニティに参入することも、イープネットへログインすることも、〈東の民〉でなければ、困難だ。そして、スフィンクス外部から内部への、ネットワーク経由の侵入は回線を切断されて弾かれた」
「待ってください。それは、今もそのままですか?」
「そうだ。スフィンクスは――長城は今、孤立しているのだ。個人的に衛星にアクセスすれば外部と通信可能だが、ケーブルは切断され、モロッコの都市部との間の直接回線は無くなったままだ」
「それが、僕たちの〈世界〉と関係しているって? 僕たちの――表の世界、表のネットワークでは利用できない自分たちの言葉を使えるように、〈世界〉は密かに運用されている。あなたは知っていることだろう。〈スフィンクス〉の孤立化となにが関係しているんですか」
「もちろん、あなたたちの〈世界〉が、世界中のシステムにただ乗りして動いているということは知っている。閉じた世界の中で勝手にやってくれているだけなら、放置してもいいさ。少なくとも、そのシステムの違法性を問うのは私たちの仕事じゃない。しかし、他のシステムや、都市丸ごとに悪影響を及ぼすようならば対処せざるを得ないし、丸ごと破壊することも厭わないだろう。世界に対して暴力的であるのなら、国にもシステムにも、厳しい立場を取るのが私たちの組織だ。しかし、問題解決はなるべく平和裡に済ませたい」
「平和のために、正規の組織で騒ぐのではなくて、使い捨てできるEPイープを駒にするってわけだ」
 おもしろい。刺激的な潜入捜査だ。自分の力量のことなど知らない、ただ、おもしろそうだ。ヒロムの意思は固まっていた(他に、行き場はなかった。はじめからこの対話の結末は決まっていたのだ)。
「孤立しているって言ったけど、僕が現地に入ったら、連絡は取れない?」
 それは、快諾の答えだった。クリスティナ・ミハロヴァはヒロムの顔を正面から見て、笑った。
「あなたと私たちの連絡役が現地にいる。向こうで会えるさ」

6.
 山脈の尾根、川の流れ、あるいは湖。自然の境界線が国境線となることもあれば、風景の変わらない広大な砂漠や草原を、緯線や経線で切り取って国境とすることもある。さらに、地上を上空高くから観測すれば、人工的な構造物が国境となっている、もしくはなっていた場所を、いくつも発見できるだろう。古代中国の長城、アメリカとメキシコの間を遮る長いフェンス、イスラエルが建てたパレスチナを包囲する壁。
 かつて西側と東側とを隔てる象徴としてベルリンを分断していた壁は今はない。ヨーロッパが、アフリカからの人々の流入を遮る境界の一つであったモロッコ側のスペインの飛び地、セウタの壁も今は取り払われている。しかし、東方へ、南方へと拡大する〈欧州〉の最前線にはやはり壁が求められることがある。緑化地域とサハラ砂漠の境界という名目の一本の500キロメートルにおよぶ直線が、モロッコ南部に建設され、終わりの見えない拡張工事を継続していた。幅わずか400メートル、高さ400メートル、〈アトラスのスフィンクス〉と呼ばれる構造物である。女の面をもつわけでも、獅子の体軀をもつわけでもない、ただ長大な直線だ。
 砂漠に長城を伸ばす発想は、半世紀以上前にサウジアラビアで始まった。アラビア砂漠に百七十キロメートルの直線を引いたザ・ラインは、砂漠の自然環境に与える影響に懸念を持たれながらも建設された。巨大な富と機械と人員の動員によって成功したそのプロジェクトは、その後中東から北アフリカ諸国におけるいくつものプロジェクトのプロトタイプとなったのだ。
 そのスフィンクスに隣接する空港に着陸しようと、ヒロムを乗せた小型ジェットは高度を下げていった。
 空から見たスフィンクスは、砂漠を切り裂く、ただの細長い直線だった。しかしその直線は、滑走路の数キロの直線を霞ませるほどに長い。着陸態勢に入ると、ようやく、ヒロムにも高さ400メートルの建造物が高層ビルであることが実感できた。高さからすると100階以上のフロアがあるはずだが、外側に窓ガラスは少なく、何階建てというような実感は持ちにくい。移動中に見た映像によると、屋上からの採光を、内側で反射させて最上階から地上階まで光が届くようになっているらしい。
 
 着陸した機体から出ると、外気は50度くらいありそうだった。無人のリムジンに荷物と運び上げ、入口へ向かうに任せる。ヒロムは各地の砂漠の長城に入ったことはなかったが、もっと小規模なモールや高層ビルならば見たことがあった。大都市ならば、吹き抜けの何階層ものフロアに、ものすごいショッピング・モールが広がっているはずだと思う。
 期待に反して、中は空洞だった。
 たしかに、広大な空間はあった。平面も、垂直方向も、どこまでも伸びていくように見えた。しかし、なんの店もない。人もほとんど見かけない。無人の屋内用カートがやってきて、名前で呼びかけられる。クリスティナがモロッコ政府に発行させた〈スフィンクス〉労働許可証が適切に認証されたらしい。
 ヒロムが乗ると、カートが話しかけてきた。
「〈東の民〉のオフィスへ案内します」
「遠いの?」
「100キロほど先の、三階にあります。私のスピードでは五時間かかりますので、一緒にリニアに乗りましょう」
 カートは、全長500キロのスフィンクスの中を移動するためのリニアが、十フロアおきに走っていると教えてくれた。人は見かけないが、都市機能は働いているらしい。ヒロムは事前には分からなかったことを質問してみた。
「人をぜんぜん見かけないね。いったい、何人くらいここにいるんだい?」
「10万人が働いています。そんほとんどは、継続している工事の作業員。あとはインフラの保守スタッフです。この場所を造る以外のビジネスは、ほとんどありませんし、旅行で訪れる人もほとんどいません」
「華やかなショッピングモールを想像していたのだけど。お金持ちが買い物をするような」
「需要がないので。スフィンクスに不動産を所有している人は多いのですが、投資目的で、実際に住む人はほとんどいないようです。住んでいただければ、人口は10万人を超えるのですが」
 住宅エリアの高層階に住むには、数百万ユーロ掛かると聞いた。そういう一帯は、ほとんど無人なわけだ。
「僕たちの仲間は――〈東の民イースタン・ピープル〉は何人……」
「統計上は1000人が働いています。それ以外にも」
 全人口の1パーセント。妥当な比率だろうか。
「統計上って?」
「労働許可証でカウントしていない、おそらく〈東の民〉である人々がいます。駐留している企業国家の人々ですね。カツラギ、ミワ、クジョー……」
 葛城、三輪、九条。ヒロムも聞いたことがある。基本的には軍事サービスを提供する国だ。要するに、傭兵部隊が自分の旗を掲げている。
「おいおい、ここは敵に囲まれてでもいるのかい?」
「それは機密事項なので、お教えできません。ただし戦闘部隊の駐留が中心ではなく、一般国民を多く含んでいて、スフィンクスの一角を借地としています。その区画の人口については、私から公開する権限がありません」
 リニアのステーションに到着する。カートごと乗降できる大型車両がやってきた。乗り込むと、車内は無人だった。
 〈東の民〉が率いる企業国家は、その成員も〈東の民〉である場合がほとんどだ。今のところ任数は不明だけれど、スフィンクスが把握する1000人の他に、それに数倍するかもしれない〈東の民〉がここにいる。
 リニアを下車して、エレベーターで第三階層に上がる。フロアのその一帯は〈東の民〉のオフィスエリアのようだった。〈東の言葉〉こそ表示されていないが(それは違法だし、コンピュータでは表示できない)、アルファベットで書かれた固有名詞や中国の漢字で代用した表記が〈東の民〉のものらしい。オフィスエリアの廊下はカート走行禁止だったので降り、荷物を転がしながら目的の番号を探す。
 ガラスドアが開放されていて、中が見える。ソファに女性が座っていた。
 ヒロムが入ると、女性が立ち上がった。
 背が低い、まだ幼い少女だろうか。いや、その顔に見覚えがあった。コバヤシのセカンドハウスで殴打した少女がそこにいた。
「自己紹介はまだだったね。カリンだ。クリスティナ・ミハロヴァとあなたの間をつなぐ、連絡員を務めることになった。よろしく」

7.
 二週間、遡る。
 ヒロムとクリスティナ・ミハロヴァの取引が成立した、前日である。
 コバヤシとカリン、つまりヒロムたちが狙った男と、じっさいに襲われた女性はカサブランカ警察にいた。何度かの事情聴取のために、二人揃ってあるいは一人ずつ警察を訪れていたが、その日は警察官とは異なる者からの相談があると言われていた。
 カリンはゴムハンマーで頭部を殴打されたが、病院で診てもらったところ、大きなコブができて血も出ていたが大事には至らず、脳波測定と脳内スキャンの精密検査でも異常は無かった。
 襲われた日、打たれてしばらく気絶していたが、さいわい、意識を取り戻したあとの思考ははっきりしていた。口が塞がれて息苦しかったが、鼻から呼吸はできた。カリンは、目を閉じたまま大人しくしていた。意識が戻ったと知られたら、脅されたり殴られたりしそうで怖かった。しばらく男たちの声を聞いていると、どうも、自分のことをコバヤシと同居する女の娘だと思っているようだった。彼らが、どのような情報を得て強盗に及んだのか知らないが、誤った情報もいいところだと思った。
 自分が、コバヤシの友人なのだ。
 身長140センチに満たない体が、児童と思われたのだろう。たんに、心身の発達が標準からはずれていて、若く、あるいは子どもに見えるだけなのに。
 強盗は三人組でリーダー格のように見えた男は暴力的だった。口の粘着テープを強引に剥がす痛みも、端末を開かされた時の頭を掴む手も、なにもかも乱暴だった。しかし、考えなしで行動していた。いっぽうのコバヤシは冷静だった。かれが話しながら、すぐに警察を呼んでくれて命拾いしたと思っている。あいつらは、〈東の民〉は警察を嫌って呼ばないとでも思っていたのだろう。
 もっとも、実際に警察に事情聴取を受けると、コバヤシも警察を嫌いになった。カリンも、もちろん同じだった。
 コバヤシは、モロッコ人として生きているつもりだ。ルーツが〈東の民〉であることなど関係がない。それなのに警察は当初、〈東の民〉同士の内輪揉めとしか見ていなかった。まったく不愉快だった。現金を盗まれた、という被害を証明するためには、もともと現金がその部屋にあったことを二人で証明しなければならないし、その現金が正当なものであると証明する必要もあった。二人の証言で現金の存在と犯行があったことを認めざるを得ないと分かると、こんどは現金と、会社のビジネスの正当性を疑い始めた。こちらは、被害者だというのに。
 70,000ユーロ程度の現金は、私生活にも、ビジネスにも必要な額だ。すべてが電子決済で回っているわけではない。たしかに、コバヤシの貿易の実態には警察に隠し通す必要のあるグレイゾーンは存在する。しかし、明確に犯罪になるような行為は行なっていないはずだ。
 コバヤシは、警察が、自国民の被害をないがしろにするのかと怒鳴ったが、ビジネスのためにモロッコ人と結婚したのだろうという偏見が、彼らの目つきにも口調にも滲み出ていた。そして、同じ〈東の民〉の女を愛人にするような不道徳な男だと見られていた。
 捜査が進めば結果が出るかといえば、そんなことはなかった。逮捕できたのは一人だけで、残りの二人は行方不明だ。
 せめて逮捕された一人は、可能な限り極刑してもらいたいと考えていた。当然だ。もうあの家には怖くて住めないし、なんなら、カサブランカから去りたいとカリンは考えている。
 それなのに、不愉快なことが、また一つ増えた。
 その日の相談事というのは、逮捕された男を不起訴にしたいという、取り引きの相談だった。
 二人の前に現れたのはヨーロッパ人の女性で、移民局のクリスティナ・ミハロヴァと名乗った。
「ハッサン警部、ここから先は同席不要です。対応いただき、ありがとうございました」
 すでに、話がついているのだろう。ハッサン警部は無言で退席した。移民局の女性は、ひとりで、コバヤシとカリンに向き合った。
 ひどい相談事だった。せっかく捕まった男を、別件の捜査のために利用したいから、不起訴にしたいと言ってきたのだ。一方的な決定で、コバヤシがあれこれと反論しても、きれいに再反論された。捕まった男は、私を背後から殴りつけた男だと聞いている。なんなら同じ凶器で殴り返してやりたいところだが、それもできない。相談でもなんでもない。
 わざわざ聞かせる理由が、最初は分からなかった。
 しかし、カリンは鋭く偏った直観をもって、クリスティナ・ミハロヴァのいう相談、事件の被害者に頼むことではない願いを感じ取った。
 だから、話が終わろうとしていたところに、カリンは待ったをかけた。
「クリスティナ・ミハロヴァさん。もう少し、時間をいただいてもいいですか」
「何か――」
「あなたとだけ、話がしたい。わたしには、あなたに協力できることがあると思う」
 コバヤシには会話の意味が分からない。移民局の女性は、あとで連絡します、と礼を言って二人を退室させた。
 帰りの車の中でコバヤシがカリンに聞いてきた。
「さっきのは、何だったんだ」
「もっと、彼女に協力できると思って」
 取引ができると思う。
「何のために」
 たぶん、〈東の民〉の生存のためになる……いえ、わたしの生存と自由のため。その答えを飲み込み、臨時の新居に着くまでカリンはずっと無言だった。
 コバヤシが仕事の付き合いのある知人から借りた臨時の部屋は、最低限の家具しかない質素で生活感のない空間だった。カリンとしては、へんに趣味の合わない装飾過多の部屋ですごすことになるよりは、住むのに困らない設備だけ足りていれば、その方が良かった。リビングの他に、寝室もふた部屋あり、プライベートは確保できるようになっていた。
 ベッドとデスク、そしてカリン自身が荷物を詰め込んできた大型のスーツケースだけが置かれた部屋に入ると、ベッドに腰掛けて連絡を待った。ほどなく、端末に連絡が入った。クリスティナ・ミハロヴァの名前が浮かび上がる。
「すぐ突きとめました?」
「端末も、今いる場所も。ご自宅に戻って、落ち着いた頃に連絡するのが良いかと思って」
 追跡能力を、隠さない。
「たいしたものですね。どこの人なんですか?」
「さきほど話したとおり、移民局の」
「どこからの出向かと、訊いています」
「答える義務はありませんが、クロムブルクの大学図書館から、といえば納得されますか?」
 ヨーロッパ中部の都市国家クロムブルクの、情報局の表向きの通称だ。CIAやMI6をドラマの中でしか知らないように、フィクションの存在だと思っていた。
「ほんとうにあったんだ。ヨーロッパの裏面史で暗躍する、スパイ国家の秘密組織」
「観光客と留学生でにぎわう、古い街よ。ドラマで描かれる姿なんか信じないで欲しい」
 嘯くクリスティナ・ミハロヴァの声を聞きながら、カリンは、ただの古い街ならあなたは何故ここにいるのか、問い正そうかと思った。
「あの男を、どこかの〈東の民〉のコミュニティに潜入させるつもりですか? なにか、非合法な活動のために」
 返答まで、間があった。
「ずいぶんと先を急いだ仮説ですね」
「ほかに、彼を利用する筋道が描けないだけ。とくに、情報機関の方がわざわざわたしたちに断りを入れてまで奪っていくのあれば。あなたたちの権限をもってすれば、国の警察なんて無視できるでしょう。まして、被害者の都合なんて無視したって構わないはず。あの場のパターン認識からは、容易に想像できる図よ」
「つまり――」
「わたしたちにも聞かせようとしていた。だから、わたしが応えた。コバヤシは犯罪者を、つまり私を殴った男を裁判の場に引っ張り出せなかったことに怒っているだけで、権力者の目的には興味がないみたい」
「あの青年が、取引に応じるかどうかは、これからよ」
「裁判になれば、強盗に傷害、10年くらいは刑務所でしょう? なんで、そんなに割の合わない犯罪に手を染めたのか分からないけれど、取引に応じない理由がない」
「あなたが応じる理由はなんなの?」
「犯罪者を利用してまで何かをやろうとしているなら、〈東の民〉にとって大きな影響があるミッションがあると思った。わたしたちは平穏に暮らしたいし、あなたの企みが、たとえばイープネットに関わるなら、壊されたくない」
 応答に、しばしの間があった。
「ご明察。イープネットを、壊滅させることもありうる」
「そうしないで済むように、協力させて欲しい」

8.
 ヒロムがスフィンクスへ来てから、半年が経過していた。
 その日、ようやく本当の意味でここにいる〈東の民〉の仲間になれる日が来た。ヒロムとカリンに、パーティの招待状が届いたのだ。
 半年間、昼は工事の作業者として働いていた。最初は自分の手を動かすことしか、できることがなかった。複数のロボット車両を操るスキルを現場で学び、できることが増えていった。作業員は作業員として給料は出るのだが、ほとんど無人の建造物を拡張する仕事は虚しかった。
 もちろん、本来やるべきことを忘れてはいなかった。〈世界ザ・ワールド〉に、毎日入ってはいた。たしかにここは〈スフィンクス〉内に作られた分散サーバーで、勝手にリソースを消費しているのは確かなのだが、特別な場所ではなかった。おそらく、自分が入れてもらえない場所がある。それは、ヒロムもカリンも感づいていたのだが、未知の場所に侵入することはできなかった。
 バイザーを被って、ログインして、インビテーション・カードに触れたら、そこはパーティ会場だ。
 いつものドブネズミのアバターにおしゃれなアクセサリーを追加して、

(未完)

文字数:22306

内容に関するアピール

ストーリーの導入部、約22000字までしか書けませんでした。作品の内容以前に、小説の書き方、執筆生活自体を見直さないといけないと感じております。

作品のこの後の展開は、スフィンクスにおけるイープネットの実像を主人公のヒロムが知ることになり、未知のメタバース世界〈日出処〉をめぐる展開を予定していました。このペースの展開だと60000字コースなので、いずれにしても構成に難があるようです。
 梗概ではタイトルを『ヘルメス・ニューワールド』としていましたが、ギリシャ神話と関係が無いストーリー展開になりそうなので、ヘルメスを外し、ただ『ニューワールド』としました。日本語にすると『新世界にて』と被ってしまうため、横文字のままで。スフィンクスの設定は、現在サウジアラビアで実際に建設が進んでいる「ザ・ライン」をモデルにしています。モロッコの舞台設定については、以前旅行したときの印象を元に、世俗的に発展していく方向で考えました。

1年を通しての感想ですが、フラッシュフィクション回で最高点をいただいたほか、いくつかの自主提出作品については高評価をいただけたのはよかったと思います。作品の内容的には、4期の作品とは異なる方向にチャレンジしていて、具体的には、女性主人公が活躍する話を書かずに、全て男性主人公の話にしていました。必ずしも成功してはいないのですが、まずは試せたこと自体が良かったと思っています。いっぽう、梗概提出時の作り込みが弱いとか、執筆がまったく計画どおりにはいかずに毎回苦労しているなど、これから小説を書き続けていく上では克服していかないとならないところと思いますので、自分の課題と考えています。

大森望先生をはじめとする講師の皆様、ゲンロンのスタッフの皆様、6期で新たに出会った受講生の皆様、以前も一緒に学んだ受講生の皆様、1年間ありがとうございました。

文字数:779

課題提出者一覧