夏の大12角形

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梗 概

夏の大12角形

地球に隕石が衝突する。ただし、軌道は分からない。

幾つかの大国は、隕石が自国領土に落ちるならそれを破壊する設備を持っている。だが日本政府は世界のために迎撃作戦を展開する。
まず、高度800kmの周回軌道に、爆弾を積んだ12機の人工有人迎撃衛星を配備。グルグル回りながら隕石を待つ。隕石が接近した時点で最も近くの機体が体当たりする。

12人の有志が集められた。このうち少なくとも1人は確実に死ぬ。報酬は生還者で山分け。
12人の金と名誉をかけたロシアンルーレットが始まった。

それぞれ身の上話をしながら地球を回る。
主人公の赤羽は、両親がガソリン税値上げ反対運動に傾倒し一家離散した。
永田は整形手術をしてアナウンサーになりたい。
駒込は野球を習いたい。
志茂は宇宙飛行士に憧れ大学を目指したが、筆記試験の好成績も虚しく、家が貧乏だったので面接で落とされた。

突然、市谷が死を待つプレッシャーに耐えきれず、起爆ボタンを押してしまった。
等間隔だった12機の内1機が欠けたので、市谷の後ろの西ヶ原の『当選』確率が2倍になる。
ここで、全員がちょっとずつ詰めて間隔を11等分にするか、このまま西ヶ原の分け前を2倍にするかで論争に。結局詰める。

ここで地球からチャンスは3機程度との情報が入る。つまり隕石が射程に入ってから最初の2機が拒否しても3機目が体当たりすれば成功。3機目が拒否すると隕石は地球に落ちる。11人は『拒否した人は後で殺す』と合意。

ここで乗組員らは、市谷の一件から、自分の前の人の信頼性によって自身の危険度が変わることに気付く。つまり、自分の前が絶対に完遂してくれる人なら自分の『当選』確率は1/11。逆に前の人が確実に逃げ出すなら、自身が『繰り上げ当選』してしまうので確率が倍。そこでこれまでの会話から、各乗組員の信頼度を数値化し、ポジションに応じて分け前に傾斜をつけることにする。
また、希望に応じて順番を入れ替えることに。暗号理論を用いたリモートクジ引きシステムを考案する。

しかし、順番入れ替え中の事故で、白金は高度を下げ過ぎて爆発、永田は高度を上げ過ぎて燃料が無くなり宇宙の藻屑に。残り9人。危ないのでこれ以上順番替えは中止。

分け前を吊り上げたい後楽は、市谷事件を再発させようと、皆が不安になることを喋り続ける。一同パニックに。『このままでは危険』と判断した駒込が後楽に体当たり。2人死んで残り7人。

赤羽は一番臆病そうな西ヶ原の後ろになってしまった。人が減ったのでチャンスは2機までとのこと。
隕石到来。『当選』は西ヶ原。西ヶ原はプレッシャーに打ち勝ち体当たりを敢行。地球は救われた。
ただ想定外にも、衛星軌道上に破片が散らばり危険に。一定の確率ですり抜けられるが、このままでは誰かが破片に当たって死ぬだろう。赤羽は最後の勇気を出し、破片とガスの中で爆弾を起動。破片を吹き飛ばす。残り5人は救われた。

文字数:1193

内容に関するアピール

ロシアンルーレット×スペースオペラで作りました。宇宙のステルヴィア見ながら考えました。

『なぜ遠隔操作やロボットを使わないのか』については、(貧乏な)人間の方が安いからです。

デスゲームと言えば貧困問題。日本の未来の貧困について。衣食住や医療以上に、『善人の座』を掛けた争いが過酷になると予想しています。サンデルさんの本に「アメリカの親は、そんな学費払うより投資信託を買った方が確実なのになぜそうしないのか」とありました。学歴だけでなく、両親から受け継いだ容姿やスポーツへの参加などが『善人シグナル』と化していそうです。
そこで、環境保護活動のせいで肩身狭い思いをしたブルーワーカーの家の子を主人公にします。他の参加者も同様。

そんな世界では、貧しい人は名誉を手に入れ階級を上げるために、こんな危険な賭けに出なければいけなくなるかもしれません。ですがそれすら、上流階級の名声獲得に利用されてしまうのです。

文字数:398

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2020プロ野球暗号理論的ドラフト会議

SF創作講座事務局よりお知らせ(2024.3.26)

本作品は公募新人賞への応募のため、公開を停止しております。

文字数:55

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