八尺様と永遠の夏

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梗 概

八尺様と永遠の夏

中学生の夏川二葉は、寺の隅に建てられた小屋に閉じ込められている。夏休みに母方の実家に遊びにきたのだが、ある日、塀越しにポポポポと男のような声で笑う長身の女を見たのだ。祖父母に寺に連れていかれた二葉は、「お前は八尺様に魅入られた。絶対に朝まで小屋の扉を開けるな」と住職に言われて現在に至る。

二葉は度重なる怪奇現象に耐えて扉を開けなかったが、不意に「二葉、もう出てきていいよ」と姉の一葉が呼びかけてきて扉を開けてしまう。そこにいたのは八尺様だった。八尺様は人の記憶を読み取り、親しい人の声を真似するのだ。二葉は驚きのあまり気を失う。八尺様は小屋に入り、二葉の魂を吸い取ろうとするが、どれだけ吸っても吸いきれない。

おかしい。

八尺様は念を送って上司の九尺様に助けを求めるが無視される。後輩の六尺様を呼んで十四尺分の力を出しても、二葉の魂は吸いきれない。仕方なく八尺様は住職に念を送った。小屋の近くにいた住職は念仏を止め、祖父母の目を気にしながら、

(人前で念を送ってくるなと言ってるだろ!)

(でも魂が吸えないんですよ!)

(クソ、八尺でも不死の者は殺せないのか)

(えっ、あの娘不死なんですか?)

(九尺から何も聞いていないのか!? あの野郎、また丸投げしやがって!)

そこで住職は、人魚の死体を双葉が食べていたという目撃証言があったこと、その復讐として人魚界から二葉の殺害依頼が出ていることを明かす。

「期限は日が昇るまでだ。それを過ぎると寺の周りに大量のビチビチが送られてくる」

「でもどうやって不死の人間を殺すんですか?」

「それを考えるのがお前の仕事だろ! この使えない木偶の坊が! 朝までにアイツを殺せなければ、お前が無駄に伸ばしたそのクソ長い尺を半分にしてやるからな」

夜明けが近づいている。途方にくれた八尺様は、二葉を殺すヒントを求めて幼少期から二葉の記憶を辿ったところ、以下の事実を知る。

一葉と二葉は幼い頃にこの地を訪れ、例の人魚と何度も遊んでいたこと。二葉は人魚に恋をして、人魚は一葉に恋をしていたこと。一葉は病弱ゆえに先日病院で亡くなったこと。帰省で二葉は人魚と再会するも、そのことは話せず、未だ一葉は療養中だと答えたこと。胸を痛めた人魚は貝殻で首を裂き、自分の肉を一葉に食べさせるように言い残して死んだこと。二葉は死体を捨てきれず、泣きながら人魚の肉を食べたこと。

八尺様は二葉の境遇に胸を痛め、ポポポポ……と大粒の涙を零す。それが当たって二葉は目を覚まし、叫びそうになるが、八尺様は二葉の口を大きな手で塞ぎ、一葉の声で言う。

「私はお前を殺せないが、直にビチビチがやってくる。あれを見れば死んだも同じだ。ビチビチを見たいと思うか?」

二葉は悩み、首を横に振った。八尺様は二葉と祖父母を肩に乗せ、人魚に事の経緯を説明することを約束し、全速力で寺を後にする。

朝日が街を照らす。遠くで住職の悲鳴が聞こえる。

文字数:1196

内容に関するアピール

ワンシチュエーションはホラーと相性が良い印象がありますが、純粋なホラーをやってもつまらないので、映画『リゾートバイト』と漫画『ちいかわ(セイレーン編)』から着想を得て、あまり見たことが無いタイプの話になるよう試みました。本作は「住職が怪異と手を組んでいる」「八尺様に序列がある」といった要素で読者を飽きさせず、会話劇で楽しく読める話にしたいと考えています。一方、後半で明かされる二葉のストーリーは重いものなので、そこからはエモに舵を切って着地させるつもりです。ちなみに「ビチビチ」は私が考えた怪異で、くねくねの海verです。ビチビチを見た者は死ぬまで陸に上がった魚のようにビチビチ跳ね回ることになります。あと、八尺様を弄りすぎている節があるので、そこは怪異ガチ勢からすると突っ込み(あるいはブチ切れ)ポイントかもしれません。

最後に、タイトルが気に入らないので実作では変えると思います。

文字数:392

課題提出者一覧