S42.Hにて

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梗 概

S42.Hにて

 中学二年生のアキラは、政治家一家の一人息子だが、学校でいじめを受け、不登校になっていた。
 祖父・ユキオは、与党の元大物代議士で、現在はアキラの母・サユキが地盤を継いでいた。

 サユキは、与党の総裁選への出馬を決める。その激励会で壇上に立ったユキオは、突如「私は宇宙人だ」と告白する。
 アキラはサユキから、ユキオの認知能力は妻の死後に著しく衰え、その影響で妄想を抱いていると伝えられる。
 
 ある日、世田谷区の自宅でアキラは、ユキオが一枚の古い写真を眺めている姿を見る。
 白黒の写真にはきれいな女性と、夜空に浮かぶ発光体が映っており、裏には「S42.Hにて」とサインがあった。誰なのか尋ねると、ユキオは「私の真実の伴侶だ」と答えたが、他のことは何もわからないようだった。アキラには、ユキオが嘘をついているとは思えなかった。
 
 総裁選への影響を心配するサユキは、ユキオを病院へ強制的に入院させようとする。
 母の行動に反発したアキラは、ユキオとともに家出する。
「S42」は「昭和四二年」、「H」は「北海道」を意味すると考え、ユキオの出身地である札幌へ向かう。
 そこで、ユキオの元秘書である札幌市長から、ユキオは幼少期から道内を転々としており、本当の出生地はよくわかっていないと伝えられる。アキラは、ユキオにレンタカーを借りさせ、ユキオの朧気な記憶を頼りに北海道巡りを始める。
 
 一方、札幌市長から連絡を受けたサユキは、スキャンダルになるのを恐れ、警察には相談せず、秘書にアキラとユキオを連れ戻すよう命じる。
 
 半分、観光気分で北海道を旅するアキラたちだったが、途中、ユキオが衝突事故を起こし、車を破損する。気を失い、目を覚ますが、なぜか二人とも無傷だった。
 ユキオは、記憶を完全に取り戻したと告げ、不思議な力を使い、最寄りの道の駅にいたカップルから車を奪う。
 ユキオは、これからアキラを「火裏」という名前の町へ連れて行くと言った。火裏にはかつて地球の友人たちが建設したピラミッド基地があり、ユキオは約六十年前にそこへ降り立ったのだという。アキラは、なぜ今までそのことを忘れていたのか尋ねる。ユキオは、地球人との間にできた孫を見つめ「ここではそうやって生きるしかなかった」とだけ答える。
 
 火裏へ向かう途中、二人は黒服の男たちに追跡される。アキラはその中に、サユキの秘書の姿を発見するが、どうも様子がおかしい。 
 ユキオによると、衝突事故の際、自分たちは半死半生になり、現在は死の確定を避けるため、「抽象的な意味の世界」に身体を滑り込ませている状態だという。黒服たちは、現実の世界にいる秘書と、死そのものが重なっている存在だという。
 
 追跡を躱し、火裏に到着した二人は、ピラミッド基地のある自然公園へと向かう。そこは現実では寂れた跡地だが、この世界では建設当時の輝かしい姿のままだった。
 ピラミッドの頂上に辿り着くと、写真の女性が横たわっていた。ユキオが「真実の伴侶」を抱きかかえると、上空に巨大な発光体が現れる。アキラは、直感的に祖父が本来の世界へ帰るのだとわかる。
 と、ピラミッドの下から、黒い渦が沸き上がり、人影を作る。「お父さん」と、影が言う。サユキの声だった。
「お父さんにとって、お母さんは何だったの?」
 ユキオは、苦しそうに顔を歪ませ、「愛してなどいなかった」と告げる。
 黒い影が崩壊し渦巻く中、ユキオはアキラに「お前はどうする?」と聞く。
 アキラは、自分も宇宙人の血が流れているから、あちらの世界へ行けることに気がつく。
 意識が遠のいていく中で、自分はどちらなのだろうと、何度も反芻した。
 
 アキラが目を覚ますと、そこは病院だった。傍らにはサユキがいた。サユキは衝突事故の一報を聞き、総裁選を辞退して駆けつけていた。アキラは、もう祖父がこの世界にはいないことを悟り、母の手を強く握り返した。

文字数:1597

内容に関するアピール

「嘘がつけなくなって真実を話してしまうが信じてもらえない祖父」と、「それを唯一信じてくれる孫」の、「北海道を舞台としたロードームービー」がいいな、と思いました。
 
 あとは、北海道つながりで、ハヨピラ自然公園を入れたいなと思い、入れました。
 
 その思いで作ったので、いざ北海道に渡ったあとは、何をいったいどうすればよいのかと悩みました。
 
 今も悩んでいます。
 
 いったいどうすれば……。

文字数:192

課題提出者一覧