最後の子ども

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梗 概

最後の子ども

オールトの雲近傍の砂漠の惑星に一機の宇宙船が着陸した。「ルイス」は惑星に降り立って受信した通信電波に従って視界の悪い砂嵐を進んだ。ルイスは砂漠のなかで文明の遺構を見つける。通信電波はこの遺構の中から発せられていた。ルイスは遺構の扉を開いた。

ルイスの母星である地球は環境が崩壊して破滅してしまった。ルイスはロボットだった。自分を作り出してくれた病気で生い先の短い女性博士アリスが自らの世話をさせて、最後には死を看取らせるために作り出された。ルイスには亡くなった博士の弟の意識がインプットされていて、ルイスは博士のことを姉だと思っていた。姉は地球が破滅する半年前にルイスをシャットダウンさせて、地球が破滅するまさにその日に、自分を再起動させた。そして宇宙船にルイスを乗せると打ち上げた。

 残念ながら遺構の内部に人間はいなかった。残された記録を調べるとこの惑星の住民もまた1000年前に滅んでいる。通信電波は中に棲みついていた機械猫が偶然装置に触れて発していただけだった。
 ルイスは一人宇宙に放り出されて、ずっと旅をしていた。なんらかの知的生命のいる場所を探し求めていたがいまだ見つかっていなかった。
 この残された文明遺構は間もなく崩壊するようだった。ルイスは機械猫を連れて宇宙空間に飛び立った。
 宇宙空間を彷徨っていると巨大なブラックホールの重力場に捕まる。
 ルイスは巨大なブラックホールをみながらアリスに自分はなぜ姉によって地球から放たれたのだろうか、自分は姉とともに地球で最後を迎えたかった、姉はロボットである自分を弟として愛しているといつも言っていた。「僕はなんのために宇宙を彷徨っているのだろうか」。ルイスは機械猫にそう独り言を呟く。
 宇宙船はブラックホールに瞬く間に吸い込まれていった。
 ルイスが気がつくと宇宙船は別の銀河に辿り着いていた。どうやらブラックホールは別の銀河に通じるワームホールだったらしい。
 ルイスが新しい銀河を彷徨っていると、ルイスは急に腹痛を感じる。船内に戻って調べると腹部に人工子宮が取り付けられていることがわかった。自分が作り出されたばかりのときには人工子宮の機能はなかった。恐らく姉に後付けで取り付けられたのだろうことが推測できた。
 さらに詳しく調べると人工子宮内部には受精卵が宿っていた。受精卵は凍結されていたが、機械猫と出会った惑星に到着するころには凍結が自動で解除されていたようだった。
 DNA情報を調べると卵細胞は姉のものだったが、精細胞は誰のものかわからなかった。 
 姉が自分を宇宙に送り出したのは子どもを産ませるためだったのだろうか。
 ルイスは子どもを産むかどうか考える。長く旅を続けてきたが、自分の起動エネルギーは持って残り一年というところだった。おそらく子どもを産んで、数か月後にはエネルギーは切れて停止してしまうだろう。ルイスが何年も宇宙を放浪していまだ知的生命は全く見つからない。産まれる子どもはこの広い宇宙で故郷もなく、たった一人ぼっちの人間になってしまう。それはとてもつらい人生になるであろうことは容易に想像できた。それでも産むべきだろうか。
 ルイスは結局答えを出せずに銀河を旅し続ける。しかしそのあいだにも人工子宮の内部で胎児はどんどんと成長していく。やがてルイスは着陸可能な惑星を見つける。ルイスは宇宙船で着陸して機械猫と共に降り立った。探索をするがやはり知的生命の姿はない。
 ルイスは探索を諦めて宇宙船に戻ろうとした。そこで機械猫が鳴いた。それから駆け出すと穴倉から本物の猫を見つけ出した。本物の猫が鳴くと仲間たちが集まってきた。
 ルイスは猫に手を翳した。子猫たちはルイスの手を舐めた。ルイスは姉が自分を作った日のことを思い出した。姉はルイスを起動させると、ルイスを抱きしめて、生まれてきてくれてありがとうと囁いた。
 ルイスはようやく子供を産む決心をする。この星で産もうと考えた。

半年後ルイスは植物惑星の木々のなかで猫たちに囲まれて子どもを一人産んだ。赤ん坊が産声を上げると猫たちは一斉に鳴いた。女の子だった。ルイスは赤ん坊に姉と同じ「アリス」という名前をつけた。

文字数:1716

内容に関するアピール

頑張って最後も書きます!

文字数:12

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