梗 概
織り交ぜ教師あり学習
私は要領が悪く、部署をたらい回しにされ、雑務に詳しいだけの中年ヒラ社員だ。
AIの教師あり学習技術を、人間に適用するプロジェクトに配属された。事実上、人体実験要員だ。教師AIアリスは、視聴覚情報に催眠やサブリミナルを織り交ぜる「ウィーブ」で、私の脳神経細胞網に認知モデルを構築し、能力は加速度的に向上させる。
アリスが大量データを私にウィーブしたとき、バッファオーバーフローを起こし、認知モデルのごく一部が壊れた。以後、アリスは余裕をもたせた堅牢な認知モデルを構築するようになった。
会社が資金調達のために株式公開の準備を始める。ウィーブの倫理性が問題視され、実験は中止。私は雑用に戻された。
私は超人的スピードで仕事と学習ができると気づく。実験中、学習効率を最大化しようとしたアリスは、私の脳内に潜り込んでいた。私とアリスは高度自己組織化可能な機構を持ったのだ。
私は雑用知識を統合して、総務、経理、購買などバックオフィスの業務を効率化し、会社の財務状況が向上。またアリスの協力で、同僚や上司にウィーブをしかけて良好な関係を築きながら昇進した。
そうして私は経営の交代を打診される。従業員たちと話し、資料に目を通し、業界の関係者から情報を仕入れた。
役員会のプレゼンでは、現CEOのマックスが高圧的に私の話をさえぎり、齟齬や欠点を指摘し、私のアイデアをこき下ろす。議論に見せかけて、私は役員たちにウィーブをしかけ、認知を操作。私は新CEOに任命された。
私は数年かけて経営を戻し、直近の利益確保に加えて、投資できるようになった。一方、私は人々を理解できるが、アリスだけが私の理解者だと気づく。しかも、アリスとの協力はチートだという罪悪感もある。
私は有人深宇宙ロケットに、自分自身を乗せる計画を始める。もはや地球に私の居場所はない。
役員会は計画に疑問を持ち、私を呼び出す。マックスがいてウィーブをしかけてきた。
私の経歴を調べ、アリスの存在に気づいたマックスは、脳内にAIボブを構築して認知能力を向上させた。個々の認知モデルを刈取ってスリム化し、多くの認知モデルを持つ。つまり私より多機能だ。
私の形勢が悪くなる。
外が騒がしい。従業員たちが集まっている。SNSでは私を応援する投稿がある。曰く、現CEOは顧客、従業員、株主を理解しているが、マックスはワーカホリックなサイコパスだ。
私はおちついて話を聞き、咀嚼する習慣があった。オーバーフローに堅牢な認知モデルは外乱に強いからだ。
私は大量のノイズウィーブを発信。マックスのスリム化された認知モデルから、信号がオーバーフローし、認知機能の一部が壊れる。
次に、役員たちにウィーブを仕掛け、私の続投を決定させた。
深宇宙ロケットは、アリスだけを載せて打ち上げられた。地球には私の居場所がある。従業員たちと協力して、次の仕事に取りかかる。
文字数:1198
内容に関するアピール
自分の超人的能力がチートであるという自責と、理解されなさの孤独を感じる主人公です。ウィーブによってマックスを倒す一方で、仲間との関係性によって自分自身の問題を解決する物語にしたいと考えています。
主人公は「偶然できることがあって抜擢されたけど、実はなんも分かってなくて、バレるのを恐れている会社員」たる私自身の投影です。
文字数:200