奇々怪々な機械の世界

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梗 概

奇々怪々な機械の世界

鈴原隼人は機械(動力によって作動し、一定の運動・仕事を行う装置【広辞苑より】)と相性が悪かった。家にある家電は頻繁に故障して会社のパソコンも一日に何度も動かなくなる。正しい操作をしているのになぜか鈴原が機械に触れるだけで、その機械はご機嫌を損ねるようにして動かくなる。鈴原にとって機械は相容れない存在だった。

 鈴原の同僚の村田美玲は機械との相性が良かった。鈴原が触って故障したコピー機とかフリーズしているパソコンとか、彼女がちょっと触っただけで機嫌を直したように動き出す。

 美玲は鈴原に「機械のほうも鈴原君のこと、コイツとは相容れることできないなぁって思ってるかも。もしも、鈴原君が意思を持つ機械が支配する世界に行ったらどうする?周りの人間もみんな機械になっちゃったらどうする?そうなったら、わたしが鈴原君と機械人間たちの間を取り持ってあげる。私は機械と相性がいいみたいだから」と言って笑う。

 鈴原と美玲は交通事故で意識不明のこん睡状態に陥る。二人は脳に強い衝撃を受けて意識は心の奥深くに沈み込み回復する見込みはない。二人の命を救うために体は冷凍保存されて、脳から救い上げるようにして脳内データは保管される(この世界にはこのような技術が存在する)。脳内データから深く沈み込んでいる意識データを浮上させて脳に再インストールする治療が施される。しかし、そのとき誤って二人の脳内データを混合してしまう。

 鈴原はいつものように朝会社に向かう。駅の自動改札機に拒絶される。駅員に告げると「相容れない判定」された人間は電車に乗せられないと駅から追い出される。「相容れない判定」って何だろう?鈴原には分からない。駅前で途方に暮れている鈴原は数人の奇妙は男たちに身柄を拘束される。鈴原は男たちから「この世界は機械だけを受け入れる。機械と相性が悪く機械のように生きられない人間は必要ない。そのような人間は相容れない判定を下して全て排除する」と言われる。この世界は意思を持つ機械に支配さていることを鈴原は知る。

 これは夢だと鈴原は思い早く目を覚ませと強く念じる。けれど目は覚めない。ふと気づくと目の前に村田美玲が立っている。鈴原は美玲が冗談で言っていたことを思い出す。ここは美玲の想像世界の中だと推察する。二人に事故の記憶はない。何故こんなことになったのか分からない。

 戸惑う二人に奇妙な形をした機械人間が、時間通りに規則正しくミスすることなく眠らずに働け(機械世界の原理)と要求する。そんなことはできない、時には遅刻をすることもあればミスもする。眠らなければ生きていけない(人間の原理)と鈴原と美玲は反発する。機械と相性の悪い鈴原が触ると機械人間たちは故障して動けなくなる。しかし、美玲が捕らわれて機械人間を直すことを強要される。

 鈴原と機械人間たちは争い続けるが平衡を保ったままの関係が終わることなくいつまでも続く。

文字数:1200

内容に関するアピール

選択した課題は「決して相容れないものを並列させよ」です。
機械と相性が悪い主人公の鈴原隼人と、村田美玲が想像した機械が支配する世界が、対立しながらも平衡を保ちながら、いつまでも続く物語です。この課題ならうまく書けると思ったのですが難しかったです。課題にあるように、リアリティを生み出す訓練をしながら実作を仕上げたいと思います。

 

文字数:162

課題提出者一覧