意外に知られていないことですが、「やりたいこと」と「得意なこと」は異なるものです。100メートルを10秒で走りたいのだ、と考えたとして、実際に走ることのできる人はほんのわずかです。12秒ということなら訓練によって実現可能であるかもしれませんが、100メートルを12秒で走るような小説で、興味をもってもらうことはなかなか難しいものです。
 無論、小説は100メートル走ではないですし、ストリートファイトでもなければ、競技でもありません。向き不向きはありますが、不向きであることを有効に使うことだってできます。
 たとえそれが思い込みでも、長所を伸ばすのは大切なことですし、早目に自信をつけてしまえば、またその自信を崩したり、別の得意な面がみつかることを期待できます。
 「得意なものを書きなさい」というと、「アクションシーンが得意です」とか、「会話の組み立てが得意です」といったことを書いてくる人がいますが、そういうことではありません。この人は○○が得意なのだな、と読者が自然と感じることができるものを目指してください。あるいは、読者が感じとるものが、「あなたの得意なもの」なのです。
*タイトルは、印象に残るものにして下さい。忘れます。
(円城塔)

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