皆殺しの雪

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梗 概

皆殺しの雪

惑星エルーラの人類は、各国が所有する、気象を制御する複数の人工衛星により、潤沢な食料を容易に確保して栄華を誇っていた。
だがある日、人工衛星群が突然暴走を始め、災害を誘発して各国に甚大な被害を招く。

人工衛星を意図的に暴走させた国があるのではないかと各国は疑心暗鬼に駆られ、世界大戦が勃発する。
開戦から8年が経過すると、各国は疲弊しきっていた。
各国の指導者たちは、これ以上は人類の存亡に関わることにようやく気づき、終戦を迎えた。

終戦から5年後。少年ジダは、行方不明の自分の姉・アユタナを探す旅を続けていた。
アユタナはかつて、ロコス王国の軍部で、兵器の開発者をしていた。

旅の途中ジダは、ロコス王国の隣国であるザパダ帝国内の、一年中降雪が続く地域に差し掛かる。
疲労による高熱に倒れたジダは、少女の容姿をしたアンドロイド姉妹・リッカとテンカに助けられた。
リッカとテンカはかつて、気象制御衛星のコントロールシステムの一部だった。
今は気象制御衛星のコントロールをすることはなく、人里離れた山奥の軍事基地の跡で、ひっそりと稼働している。
リッカとテンカの気象制御衛星はザパダ帝国が所有しており、戦時中には兵器としての改造が施され、人間を殺すナノマシンを含めた雪を敵国の領土に降らせていた。終戦後は殺人ナノマシン機能は封印されていて、無害な雪を一年中降らせるだけだ。

コントロールシステムを制御するテンカの老朽化により、気象制御衛星が暴走を始め、殺人ナノマシン入りの雪を再び降らせようとしていた。このままでは地域住民が無差別に虐殺されてしまう。
ジダは気象制御衛星の暴走を止めるべく奔走するが、暴走の真の原因はテンカの老朽化のせいではなく、姉のアユタナが仕組んだ復讐計画のせいだった。アユタナはテンカに対し、気象制御衛星を暴走させるようにプログラムを仕込んでいたのだ。
そして、戦争の引き金になった人工衛星群の暴走は、ロコス王国が極秘で研究していたコンピューターウイルスが流出したせいだったことも判明する。

ジダの前に現れたアユタナは、ザパダ帝国から逃げるようジダに忠告する。
アユタナは戦争で恋人を失ったことにより狂気に取り憑かれ、1人で終わらない戦争を続けていたのだ。
アユタナの目的は、恋人を殺したザパダ帝国の領土に、無差別に殺人ナノマシンを降らせることだった。
ジダは、無関係の人々の虐殺を止めるように懇願するが、アユタナに拒絶されてしまう。
ジダは気象制御衛星を力尽くで止めることを決意し、リッカと共に、軍事基地跡に眠るレールガンを起動させて、気象制御衛星の破壊を狙う。それを阻止するため、アユタナは自ら製造したアンドロイド兵士と軍事基地跡に突入して来る。

戦いの果てに、ジダの腕の中でアユタナは死に、テンカは自らを犠牲にして気象制御衛星を停止させる。

こうして、終戦後から降り止むことのなかった雪が、ようやく止んだ。

文字数:1194

内容に関するアピール

自分が得意だと思っているのは、読者に情感を与える文章を書くことです。

今回考えたのは、大きな戦争が終わった後に世界の片隅で起きた物語です。

戦争は、終戦後においても戦争に直接関わった人や、関わっていなかった人々の人生に多大な影響をもたらします。

戦争で運命を狂わされた人々が、終戦後の世界でもがきながら生きていく物語を、情感たっぷりに書きます。

文字数:169

課題提出者一覧