僕らの休眠預時間活用法

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梗 概

僕らの休眠預時間活用法

主人公は小学6年生の4人組。タツキ、シュウ、リツ、ハルト。4人は家庭環境も経済状況も違うが仲良しだ。だが中学進学による環境変化で、春には全員バラバラになってしまう。そんな最後の夏休み、4人は肝試しにやってきた廃工場で不可思議な体験をする。時間の流れが加速して、景色が早送りのように過ぎていく現象だ。工場を後にすると外では三日も経過していて、その間4人は行方不明扱いだった。明日はもう夏休み最終日。河原の秘密基地を完成させる約束が4人にはあった。こっそり集まって秘密基地完成を目指すも、無情にも日は暮れていく。悔しい。悔しい。苛立った一人が川に向かって石を投げた。
 その瞬間、時間が減速する。
 水面をスローモーションで跳躍した石が、空中で止まった。
 4人以外全ての時間が止まっていた。4人は沈まない夕陽の中で秘密基地を作り続けた。見事完成させた時、辺りは夜になっていた。時間は停止した訳ではなかったのだ。気が遠くなるほどゆっくりだが、確実に進んでいた。時間の流れは三日で元に戻った。
 4人はこの現象は「時間貯金」と名付け、自分達だけの秘密にした。

4人が高校生になった時、ハルトが失踪した。残りの3人が行方を捜すが見つからない。ハルトは失踪直前、しきりに「貯金しなきゃ」と繰り返していたという。3人だけがピンときた。ハルトが貯めたかったのは家出資金じゃない。時間だ。廃工場を訪れた3人は、壁一面に書かれた数式を発見する。ハルトは再び時間貯金をしようとしている。だが本人の姿はどこにもなかった。

4人が成人した時、踏切から飛び出した高校生が、轢かれる直前に忽然と姿を消す事件が起きた。時間貯金に成功したハルトの仕業だと3人は気づく。ハルトの目的は復讐だ。妹をレイプし自殺に追い込んだ主犯の男を追っている。男は2年の刑期を終え出所したばかり。男を追えばハルトに会えるはず。
 3人の狙いは的中するが、時間を操るハルト相手に為す術がない。時を止めたハルトが復讐を果たそうとした瞬間、彼以外に動ける者がいた。リツだ。ハルトの数式を手がかりに、リツは4分だけ時間を貯金する事ができていた。タツキとシュウが囮になり、リツの4分間に全てを託す。3人は家庭環境も経済状況も違うが、思いはひとつだった。親友だったハルトに殺人者になんかなって欲しくない。
 ハルトは3人の友情と自己犠牲と、苦しいのは自分だけではないと気づかされた事で救われ、殺人を諦める。ハルトは時間と共に、恨みの感情が風化するのが耐えられなかった。だから犯人が出所するまでの2年という時間を貯金した。たった数時間で済んだという。2歳年上になった3人を見て、ハルトは「老けたな」と笑った。「タイムマシンに乗った気分だ」。
 4人は別の形で男に復讐を果たし、大団円。ハルトがこれから2年分の時間を消費するのを、3人は待つ事にした。お茶でも飲んで思い出話を語りながら。

文字数:1200

内容に関するアピール

 #ジュブナイル #時間伸縮

 近年、SFの映画やアニメに欠かせないものとして、予告映えする画の魅力があります。時間逆行する景色、地面が湾曲し天井まで反り返る街、何十歳も老けた自分との邂逅、奇怪な宇宙人が操る未知なる言語体系。小説単体の面白さは当然ながら、こうした映像映えする設定が求められていると感じていて、日々考える努力をしています。

文字数:168

課題提出者一覧