江戸幕府 VS 米人間

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梗 概

江戸幕府 VS 米人間

安藤昌益『統道真伝』より「米粒中に人具わる一真の図解」

江戸時代中期。八戸藩(現在の青森・八戸)は幾度も飢饉に見舞われていた。
医師・思想家の安藤昌益(※1)は、自身が唱える「活真」(※2)「直耕」(※3)の理論を応用し、米の豊作をもたらす研究を進める。宇宙の原動力である”気”を稲穂に巡らせれば、あるいは……。ところが、実験の結果生まれたのは何と”米人間”だった。

米人間は、人と変わらぬ知性と体格を持ち、話すこともできる。その肌は米のように白く硬く、また怪力の持ち主だった。
昌益は困ったが追い出すわけにもいかず、家におくことにした。米人間は純粋で、指示されれば何でもこなした。
(なお、米人間の身を削り取って食べさせたネズミは爆発した。過剰な”気”のせいであろう。つまり、食べられない)

昌益は米人間の存在を弟子たちにだけ明かす。これ以上作る気は無いことも。米人間が便利な労働力として扱われるのを危ぶんだのだ。平和と平等が昌益の理想だった。

弟子のひとり、嶋守伊兵衛は、師のやり方に不満だった。著作では、幕府が強制する身分制や法を「天下国家の私物化」と激烈に批判しているが、何の行動も起こさないからだ。
戦国の世などはるか昔だ。平和ボケした幕府など、米人間を量産して攻め入れば転覆できるのではないか――。

嶋守は昌益の秘法を盗み出し、一〇〇体の米人間を量産して江戸に向かう。
(秘法の成功率は低く、一〇〇体作るのに五年かかったのでそれ以上は諦めた)
米人間たちは、米がくっつく要領でバラバラの状態からでも再生する。細かく裁断し、風に乗じて江戸城内へばらまいた米人間たちを深夜に再生させ、火を放って混乱に陥れる作戦だ。狙いは将軍の首。
しかし、天海大僧正の霊験によって守護された、呪術都市・江戸の防衛線は強固だった。
江戸を流れる水路から金龍があらわれ、再生した米人間を次々と喰らっていく。
驚いた嶋守だが、米人間に流れる”気”は金龍をも爆散させる。江戸幕府やぶれたり。高笑いする嶋守。
そこへ追いかけてきた昌益が現れ、嶋守を上回る秘法で米人間たちを引き上げさせる。
師を罵る嶋守。しかし、平和主義の理想ゆえに現状を力で変える手段を取れない師の苦悩を知り、うなだれる。

昌益たちは八戸へ戻り、その思想を人々に講じ続けるが、次第に忘れられていく。
江戸から明治へ。令和へ。時代は変わっても搾取の構造は変わらない。
最初の米人間は現代まで生きており、日本の未来を憂えて、完。

※1…一七〇三~六二。宗教・権力を批判し、人間に欠かせない「食」と「性」を軸とした独自の宇宙論を展開した
※2…昌益の造語。宇宙を成り立たせている、物質の運動状態
※3…昌益の造語。宇宙の自己代謝活動を指す

画像は、今回のネタ元です

文字数:1131

内容に関するアピール

私は読者に、「驚き」をもたらす書き手として認知されるのが理想です。今回のプロットもその理想に沿った内容になっていると自負しております。「驚き」をもたらすのが得意と言ってよいかは、課題提示のテキストにもあるように、ご判断に委ねます。

「SF 安藤昌益」で検索してもヒットしなかったので、目新しい題材ではないかと考えております。また、ゲーム『天穂のサクナヒメ』がSNS等で話題になっておりますので、「米SF」として興味を持ってもらえるのでは? という狙いもあり、この内容にしました。

文字数:238

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