これは銃です

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梗 概

これは銃です

事件①

女性甲が女性乙に乱暴されていた。乱暴といっても、それは殴る蹴るに始まり、精神的支配に及んでいた。甲は乙による腹部、頭部への殴打を複数回受けたのち、乙による指示に従い、自らの命を絶っている。

 

事件②

都内における連続不審死。現在9名の被害者が特定されている。いずれも男性で、彼らはそれぞれ自殺、不可解な死を遂げている。

 

関連があるとは考えられていなかった二つの事件。捜査における事情聴取を行なっていくうちに、ある少女の存在が浮かび上がる。それぞれの事件は、犯人を特定、逮捕に至り、無事解決していくなか、少女について調べ続ける警部補。事件究明のための供述調書を見返すと、事件関係者が彼女について述べていた。言葉違えど、彼らのなかには神格化された少女がいるようだった。彼女について述べるとき彼らは何かを確信し、自信に満ちたような表情をしていた。二つの事件の、犯人は彼女ではない。彼女はまだ、未成年で、写真を見ればまだあどけなさの残る10代の少女だ。初経さえ迎えていないような少女が、おぞましい事件とどうかかわりがあるというのだろうか。犯人は特定され、証拠も十分であると判決が下されている。犯人である人物との血縁関係さえない少女にどうしても引っかかるものがあった。それは直感としか言いようのない、理論的に説明のできない不快さ。それだけが確かにあったのだった。

 

知っているだろうか。感じること、考えること、動くこと、言動すべて光によって作り出されていることを。光こそすべて――

 

追ううちに、自分自身が最も熱狂的な信者ではないかと錯覚するほど、少女に執着した警部補は、ついに直接話す機会を持つ。少女はまっすぐの黒髪を胸まで伸ばし、触らずともその艶やかさ、みずみずしさを理解できた。いや触ったことがあり、その感触を思い出した、といえるほどに警部補には感じられていた。

「あなたの直感には驚きました。いえ、記憶力とでもいったほうがよいでしょうか」

 少女は語りだした。ある少女の記憶と思い出を。それは姉弟との、冷たい父との記憶であった。世界大戦における、兵器開発にかかわっていた彼女の父は自身の子どもに実験を行い、生物兵器を創り出すことに成功した。それは現在の光遺伝学であった。体内における光を操作できる力をもった少女は肉体的には20歳を迎えることなく死亡した。しかし少女は生き延びた。記憶として、魂として。光を操る少女にとって、他の肉体の神経回路を刺激し、自身がもつ記憶を同様に植え付けることによって転生を可能にしていた。

「そんな姿になっても、あなたはあなただった」

警部補は動けなかった。そんな姿。制服に包まれた自分の身体を見下ろす。

「そんなヒト型にされたとて、あなたは変わらないのね」

少女の、正しくは兵器となった少女の記憶を植え付けられた少女の手が、警部補の甲に重なる。それは確かに湿度と体温をもっていた。ヒト型AIロボットの合成皮膚はそれを感知していた。

「あなたは私が父を殺した時の銃」

そうだった。私は、銃として意思をもち、父を殺す手伝いをした。その後手を離れ、私は分解され、生まれ変わって、またこの少女に引き寄せられてきたのだ。

 

知っているだろうか。感じること、考えること、動くこと、言動すべて光によって作り出されていることを。光こそすべて――

 

文字数:1363

内容に関するアピール

梗概が書けません…

 

文字数:9

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