アメリカの電子掲示板「Reddit」に投稿された「エイリアンだけど何か質問ある？」というスレッドを見つけたのは、メアリーの6歳になる息子だった。投稿主は、銀河全体のエネルギーを扱えるタイプⅢの科学技術を有しており、無性生殖で記憶を引き継いだクローンを生み出す事で三億年生きていると主張。掲示板のユーザー達は投稿主に写真の投稿や、未解決の数学の難問を解かせようとするが、地球のSF作品で人類と姿形が大きく異なる知的生命体に対して嫌悪を感じるように描写されていたので写真はNG、また、文明発展に歪な影響を与えるかもしれないので人類が到達している以上の学問的な知識は授けないと返答される。やはりジョークかと皆が興味を失っている中、ライターであるメアリーは返答を面白いと感じて、息子が将来かかりそうな病気について教えてくれないかと冗談半分で写真を投稿。すると、心臓病を患う可能性があると指摘され、半信半疑で病院へ行くと息子の心臓の構造が特殊だと分かる。

　メアリーは投稿主をユビキタスの語源である『ウビクエ（偏在する神）』と呼んで彼の事を記事にすると、世界中から注目が集まってウビクエの元には凶悪事件の犯人から果ては国家の機密情報まで質問があり、ウビクエは恐ろしい精度で次々答えるので国際政治は大混乱。メアリーが質問の選定をした方がいいと助言するとユビクエに採用され、質問を選定する人間は「使徒」と呼ばれ、メアリーも選ばれて活躍するが彼女はある日突然倒れてしまう。実は、メアリーには息子と同じ心臓の欠陥があり、心不全を起こしたのだ。余命半年と宣告されて現代の医療ではどうする事も出来ないとされ、メアリーの息子はウビクエに助けを求める。すると、ウビクエは地球の文明に干渉するため通常は出来ないが、抜け道として、メアリーがもし宇宙船で地球を離れてくれれば治療を行い、そのまま彼女が地球へ戻らずに自分の宇宙船で暮らしていくのであれば、地球文明への干渉は起こらず、治療をするどころか、ほぼ永遠の命すら与えられるという。悩むメアリーだが、子供を一緒に宇宙へ連れてはいけないと申し出を断る。数ヶ月後、息子が見守る中メアリーが息を引き取るとウビクエが消える。

　半年後、ウビクエのアカウントから久しぶりの投稿が届く。実は、ウビクエは自らを無理やり雄と雌の二体に分裂させて記憶を引き継げず死んでしまったが、外部記憶媒体のデータを子供二人が読み取って、この投稿を行ったという。ウビクエはメアリーの心臓の欠陥を知っていて黙っており、自分の宇宙船へ呼び寄せようと計画したが失敗、喪失感を覚えてメアリーの分身を生み出そうと分裂したらしい。また、ウビクエの出現後に地球の犯罪は減少していたが、文明発展の速度が事前の予想よりも停滞をしており、自らの存在が人類の進歩にとって悪影響であると判断して地球との交信はこれを最後に絶つと宣言された。