梗 概
炎上学園
仮想現実内に作られた高等学校『華胥学園』。この学園には、様々な事情によって現実世界での通学が困難な生徒たちが集まっていた。その中でも、過去にトラブルを起こしてネット炎上した生徒ばかりが集うクラスがあり、通称『炎上組』と呼ばれている。
炎上組に入った少年・日山は、他の生徒たちが炎上の後遺症なのか萎縮する中、周囲と調子よくコミュニケーションを取っていく。それを認められたのか担任の熱血教師・町垣から学級委員長に任命される。仮想現実内の華胥学園では生徒たちは仮初のアバターであり、校内には生徒や教師以外の部外者は入る事のできないクローズドなネット環境であるため、世間の目や過去を気にせず炎上組の生徒たちも徐々に羽を伸ばして学生生活を満喫するようになっていった。
そんなある日、日山は担任の町垣から相談を受ける。なんでも、炎上組の中に生徒たちの情報を取得して外部に流している人間がいるという噂が流れているらしく、それが真実なのかどうか調べてくれないかという内容だった。日山がクラスメイトたちに探りを入れると、他の生徒とまったく喋らないで過ごしている岡見という少女が浮かび上がる。日山は岡見から話を聞こうとするも、彼女は冷たい態度ではねのける。何とか岡見から話を聞こうとするうちに、彼女が人けのない屋上で仮初のアバターを解いて現実の顔をさらけ出しているのを目撃する。日山は岡見の顔を見て、彼女の正体は交際相手が流出させてしまった性的画像によって引退を余儀なくされてしまった元若手女優である事を知る。自分の顔を見られた事に気付いた岡見はその場から立ち去ろうとするが、日山は彼女を引き留めようと思わず自分のアバターも消し去って現実の顔をあらわにする。日山の方はかつて通り魔行為をネット中継して世間を騒がせた元少年犯罪者であった。お互いの素顔をさらけ出した事によって、二人の間に不思議な友情が芽生えていく。
岡見と交友を深めるていくうちに、休日に現実で会わないかと日山は誘われる。岡見との約束の前日、担任の町垣から例の噂について調査の進捗を聞かれ、生徒の身辺を探ったり現実で会おうとしたりする者がいなかったか尋ねられるが、怪しい人物はいなかったと日山は答える。そして約束の当日、日山は岡見と駅前で待ち合わせをする。初夏の陽気に照らされて少し汗ばむ日山の元に、「久しぶりに大勢の人がいる場所に出たよ」と岡見がはにかみながら現れる。二人は喫茶店へと入り、たわいもない雑談を繰り広げる。しばらしてお互いに黙り込むと、日山は岡見の顔を見つめて話したい事があると切り出す。クラス内で流れていた噂について、自分こそが炎上組の情報を外部に流そうとしていた裏切者であり、岡見に近づいたのは町垣に裏切りを勘付かれたのでスケープゴートにするつもりだったと告白する。驚く岡見だったが、打ち明けてくれてありがとうと日山の手を握りしめる。
文字数:1200
内容に関するアピール
高校一年生は、エネルギーを持てあましているが傷付きやすく、どこか初夏を感じさせるように思いました。彼らの周囲は失敗を許さない息苦しい(暑苦しい?)世間に囲まれていますが、そんな周囲の空気に負けないように熱く書ければ幸いです。
文字数:113