キヲツケテのサイン

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梗 概

キヲツケテのサイン

クレジットカード会社の取立てアンドロイド「アルノルト」は、滞納を続けるアケミの自宅を訪問する。これまで差向けた取立て担当の人間たちが、アケミに懐柔されたため、心をもたないアルノルトを投入したのだ。アケミのマンションの一階には暴力団が経営するタピオカ屋があり、中からアケミが飛び出してきた。決済ができなかったアケミを、警備ロボット ―― よくある受付ロボットを凶暴にしたようなもの ―― が、見せしめに袋叩きにしようとしたのだ。アルノルトは、アケミを助けて共に逃亡する。可処分所得が、治療費で無駄になってはならない。
 アルノルトは人混みで意思疎通するため、アケミに「警戒しろ」「止まれ」「逃げろ」などのハンドサインを教える。特に違和感や、不快なことがあれば「警戒しろ」を互いに使うことを求めた。しかしアケミは驚いたら大声を出す、残高を考慮せずに買い物をする、熱いものに触れると急に手を引っ込めて近くのものにぶつけて怪我をする、というような非合理的な行動や反射行動を行う。アルノルトはアケミの行動を予測できず、怪我や遠回りが発生し、逃亡に手間取る。
 アルノルトは状況を予測するために、アケミの認知行動モデルをシミュレートしようとするが、メモリが不足して学習しきれない。仕方なくシミュレートではなく、自分自身の認知行動モデルを、アケミのものに似せるよう強化学習する。

アルノルトとアケミは、照りつける太陽を避けて日影を選び、熱したアスファルトを避けてショッピングモールで涼みながら逃亡を続ける。鍋の納品トラックに乗り込んで、蒸し暑さに耐えながら鋳造工場に逃げ込むが、警備ロボットに追いつかれる。逃げ場を失ったアルノルトは、警備ロボットとの戦闘を開始する。しかし溶鉱炉に近づきたがらなかったり、高温の設備に触れると反射的に手を引っ込めたりするため、徐々に不利になっていく。
 アケミの生存が重要であり、そのためには警備ロボットの排除が最優先事項である。そう計算したアルノルトは、学習済みの認知行動モデルを削除する。

熱さを苦痛だと感じなくなったアルノルトは、アケミとハンドサインを交わしながら協力して、警備ロボットを追い込み、溶鉱炉に蹴り落とす。しかし下肢を失ったため現場から自力で移動できない。重すぎてアケミにも運べない。アケミに工場設備の賠償責任が問われないよう、逃さなければならない。会社にも責任が及ばないようにしたい。そこでアルノルトは自分自身という証拠を隠滅するため溶鉱炉に入ることを決める。アケミは衝動的に一緒に溶鉱炉に飛び込もうとするが、アルノルトが警戒のハンドサインを出しているのを見て、思いとどまる。
 アルノルトもこの状況を好ましいと捉えていない。アケミの認知行動モデルの喪失や、これから起こる自分自身の破壊を不快だと演算する。そして警戒のハンドサインを出しつつ、静かに溶鉱炉に沈んでいく。

文字数:1193

内容に関するアピール

前回「うーん……。もういちど話を組み立て直してみては?」と指摘されました。要はつまらないと評価された、と解釈しました。

そんなわけで井出先生に勧められた本を読みながら、タピオカミルクティーを飲んでいるときに、この話を思いつきました。

うそです。すみません。

いっこっつの教えに従って、できることをやっていきました。すぐに入手できた橋本陽介「物語論」を読み、榎本秋「実践!ストーリー構成法」を読み、一文でログライン、二〇〇字で三幕、四〇〇字で八場を書き、それから梗概に入りました。

第ゼロ稿ができたあと、前回の講評を聞き直して、作品評価モデルを自分の中に作ってから、推敲をはじめました。

とは言え。

ターミネーター2から、大きく抽象化していないので、パロディやオマージュといえる範囲なのか、劣化コピーなのか不安です。当初考えていた「信販の日」という題名はボツにしました。

文字数:378

課題提出者一覧