受刑者404

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梗 概

受刑者404

死刑の代わりに、「存在凍結刑」が導入された世界。
凶悪犯は、その存在を国民の認識から削除される。誰からもその名前や顔、抱いていた感情を思い出されなくなり、自分でさえ自己認識が出来なくなって抜け殻のように強制労働をさせられる。

14歳で殺人犯として「存在凍結」を受けた主人公・サガンは、真犯人の逮捕により冤罪が証明され、例外的に「復活」する。
9年間の服役中に監察官から受けた苛烈な暴行によりボロボロになった体を引きずり帰郷したサガンは、かつての恋人が新しいパートナーと暮らす現実を目の当たりにする。かつての恋人は記憶の復元とともに涙するが、今の生活を選びサガンを退ける。サガンは、自分を孤独に追い込んだ真犯人を憎む。だが真犯人はすでに凍結されており、どうしても名前も顔も思い出せない。覚えているのは、事件現場に5歳ほどの少女がいたことだけだった。

やがてその少女キサトア(14歳)が訪ねてくる。サガンの凍結解除をきっかけに、封じていた凄惨な記憶が揺らぎ、真相を知りたくなったという。二人は当時の調査記録に辿り着き、「×××が孤児院の養父を殺害。居合わせた孤児のキサトアとエーコを保護」という一文を見つける。だが「エーコ」という名は、目を離すと認識から滑り落ちるように消えてしまう。サガンは忘却に抗うため、自らの腕に「エーコ」と刻みつける。断片的な情報と、刻まれた文字に触れサガンを抱きしめたキサトアの温もりから、過去が思い出される。

真実は、こうだった。
エーコは、キサトアの姉だった。そして、姉妹とサガンは、同じ孤児院で育った。孤児院の養父には裏の顔があり、ある夜養父が幼いキサトアに暴力を振おうとしたところを、守る一心でエーコが殺害してしまう。サガンは、エーコを守るために殺人の罪を被って自首したのだった。エーコはサガンを救うため、真犯人は自分だと訴え続けたが、サガンの「存在凍結」実施は決定してしまう。エーコはサガンを忘れないようにするために、存在凍結者の情報を唯一閲覧することができる「監察官」になり、密かに無実の証拠を集め続けていた。そして最新の鑑定で自らの罪を証明し、サガンと代わって「存在凍結」を受けた。

サガンは、国から支払われた冤罪への賠償金のすべてを使って、ダークマーケットで一人の存在凍結者を買いに行く。誰にも気にかけられることがない存在凍結者たちは、監察官たちによって人身売買の恰好の商品にされていたのだ。しかし、サガンが9年間も肉体を売られずにいたのは、監察官になったエーコが虐待狂を演じてサガンを傷つけ、「こいつは売り物にならない」と同僚に言って守っていたからだった。
サガンは、「存在凍結」受刑者のなかからエーコを探そうとするが、その顔を認識することができない。
すでに売り払われてしまったのか、と思ったとき、一人の受刑者の腕に、サガンの名が刻み付けられていることを見つける。

文字数:1194

内容に関するアピール

憎いと思っていた相手が、自分が守ろうとしていた愛する存在であった、という展開を描きたいと考えました。
存在を忘れさせてしまう技術は、科学というよりは魔法のように扱い、巨大な勿忘草が受刑者の存在を忘却させる香りを放つ様子とともに描きます。

「エンタメ」と聞いて、最初に思い浮かんだのは白亜紀末の恐竜人間の物語でしたが、考えていくうちに、人間関係の変化が一番のエンターテイメントなのではないかと思うようになりました。

文字数:204

課題提出者一覧