GAL-AXY TELEVISION ― 宇宙で一番たいせつなもの―

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梗 概

GAL-AXY TELEVISION ― 宇宙で一番たいせつなもの―

地球軌道上の生放送ステーション〈GTV-01〉、通称ギャル衛星から配信される長寿番組『GAL-AXY TELEVISION』は、深夜特番として「宇宙でいちばん大切なもの」を決める回を迎える。銀河規模の視聴者が見守る中、ギャルMCミナとアシスタントのぬいぐるみクマノフが進行し、スポンサーであるサイゼリヤ提供のもと討論が始まる。配信は各文明圏へ同時送信され、自動翻訳と視聴者反応の集約により番組へ反映される。コメント欄には#尊い #草 #神回 #はじまた が高速で流れる。

「はーい、みんな? 生きてる? そこ大事ね〜」

出演者は、資本主義のカネオ、平等を掲げるアカネ、宗教代表のセイラ、環境代表ミドリ、虚無主義のクロ、AIのアイ。自由と平等、祈りと市場、自由意志の有無をめぐる議論はすぐ対立へ傾くが、ミナの進行で決裂は回避される。論点は保留され、話題は次へ送られ、結論だけが残されない。互いの主張はぶつかるが決定は行われず、番組は止まらない。議論は積み重ならず、保留だけが増えていく。#どっちも #保留で #それな #結論いらん

「はいはい深呼吸〜。CO₂上がるとミドリ怒るし」

スポンサー表示の誤作動や総合ディレクターのジョージ・ルーカスの乱入といった混乱も、番組の流れに回収されていく。討論は次第に見世物化し、釈迦、イエス、ニーチェ、アインシュタイン、ノーベルが登場しラップバトルへと変質する。信仰、虚無、科学、倫理は韻と言葉の応酬として消費され、観客は歓声を上げる。思想は正しさではなく、ノリで評価されていく。#DJ煩悩  #イエス無課金 #韻えぐ

「ウケる〜!」

さらに「歴史ガチ介入」企画として、人類最初の争いの現場へ出演者が直接介入する。言語が通じない原始人たちを、彼らは身体で争いを止めようとするが収まらない。ノーベルが差し出した男梅を原始人たちに口に入れさせると、強烈な酸味に全員が顔をしかめ、注意が争いから逸れる。その瞬間、争いは止まる。酸味という感覚の共有が言語や文化を越えて作用する。争いの理由は残されたまま、行為だけが中断される。#男梅つよ #酸味和平 #案件確定

「すっぱすぎ~!」

番組終盤、「宇宙でいちばん大切なものランキング」が発表される。第5位チェキ、第4位ファミレス群、第3位スター・ウォーズの版権、第2位男梅、そして第1位サイゼリヤ。みんなでチェキを撮った出演者と偉人たちは猛烈な眠気と空腹の中、千葉・本八幡へ降り立つ。そこはサイゼリヤ第一号店の所在地であり、聖地だった。空にはスポンサー表示が流れ続け、宇宙規模の討論と歴史介入のすべてが、スポンサーであるサイゼリヤへの『よいしょ構造』の中にあったことが露わになる。#結局ここ #サイゼ優勝 #腹へった

ギャルMCミナが看板を見て爆笑する。

「ウケる~。神、まだ開いてないじゃん」

文字数:1160

内容に関するアピール

大昔、深夜ラジオのディレクターとして、まとまりきらない話や矛盾した意見、過激な発言、エロチックな会話、出演者同士の口喧嘩、どうでもいい雑談まで、そのまま電波に乗せてきました。コンプライアンスなんて概念がまだなかった時代です。段取りどおりに進まない夜ほど妙に面白く、収拾がつかないまま番組は続き、カオスな時間を共有したという感覚だけが残る。行き当たりばったりの進行や、何が起きても止めずに流してしまう深夜ラジオの作法の中に、ふと世界の真実のようなものが紛れ込む瞬間がある気がしていました。本作は、その空気を銀河規模の討論番組に置き換えたものです。資本主義や宗教、科学、AIがぶつかっても、ギャルMCミナは整理せず、排除もせず、ただ同じ場に置き続ける。放送が終わったあと、腹が減ったなと言いながらみんなでファミレスに向かったあの感覚を、読者と一緒に分かち合えたら嬉しいです。

文字数:385

課題提出者一覧