『地球侵略』(仮)

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梗 概

『地球侵略』(仮)

小林囿一は、40歳で会社を辞め脚本学校に通った。子どもの頃から脚本家になることが夢だったのだ。遅い挑戦を笑われながらも、コンクールに挑み続けたが落選。それでも諦めきれなかった。脚本学校の恩師から制作会社を紹介してもらい、ドラマの企画書を書く仕事を得た。制作会社のプロデューサーから「機会があれば脚本も任せる」と言われ続け、9年も経ってしまった。囿一は今年で49歳。焦りばかりが増していく。

ある日、脚本学校の同期が連ドラの執筆に抜擢される。同期だが年齢は囿一より10歳も若い。年齢は関係ないと強がってきたけれど、落ち込んだ。酒を浴びるように飲んだ。囿一は、酔った勢いでSNSに「宇宙一面白い脚本、書きます。オファー待ってます」と投稿。すると翌朝、『執筆オファーの件』というDMとオンライン会議の招待状が届く。なんと地球から約 2,300光年離れた惑星リオのプロデューサーだった。オンライン会議の画面に現れたのは、肌が緑色だということ以外は地球人そっくりのリオ星人。彼らの星では作家業のすべてをAIが担当している。経費は大幅に削減されたが、似たような話ばかりで観客からは飽きられている。「地球映画マニアな監督がいましてね。彼がどうしても地球人と仕事がしたいと。で、SNSを探っていたところ、あなたの書き込みを見つけたのです」――作品の報酬は、時給ならぬ時間で払ってくれるという。囿一は、地球時間10年分の若返りを希望した。

しばらくすると、地球映画マニアの監督が加わった。監督とアイディアを出し合う囿一。けれども全く話が合わない。監督が小津作品やフェリーニ作品など芸術系の作品を引き合いに出すのだが、囿一はそれらの『名作』をちゃんと観ていない。もちろん脚本家として向学のためにDVD(まだネット配信のない時代)を借りたことはある。だが、数分で寝てしまった。「脚本家以前に地球人としてあり得ない」と監督から徹底的なダメ出し。

自分の原点を振り返り、自分の甘さを猛省し、やがて囿一は開き直る。リオ星人にウケなくてもいい。自分が書いていて楽しい話を書こう! 

締切当日。囿一は、「降ります」とリオ星人のプロデューサーに頭を下げる。「実はこちらも情勢が変わりまして。オファーはなかったことに」とプロデューサー。ホッとする囿一。実は、作品の初稿は出来ていた。タイトルは、『地球侵略(仮)』。リオ星人(悪者)が地球を侵略する物語。こんなの提出できるわけがない。

『地球侵略(仮)』の出来栄えに満足していた囿一は、ネットに『地球侵略(仮)』を公開する。翌日、「楽しかった。久しぶりに、時間を忘れました。」とコメントが。エンターテイメントとは、誰かの時間を奪い、心を奪うこと。売れるかどうかは、結果でしかない。遠い未来、この脚本に基づいて地球が侵略されることを囿一は知る由もない。

文字数:1175

内容に関するアピール

「エンターテイメントなSF小説」のアイディアをChatGPTに聞いたところ「売れない脚本家、宇宙人のゴーストライターになる」というものがあり、そこから地球映画マニアの異星人監督と売れない地球人脚本家のやり取りを描いたら面白そうだなと考え、梗概にまとめてみました。

文字数:131

課題提出者一覧