梗 概
すべての業には時がある
時間停止AVの八割はヤラセである。その理由は本物を撮影しようとすると時間停止AV絶対許さないシスター・国崎真琴が現場を破壊しに来るからだ。
夕方の環七通り。教会の事務員・篠原はAVファンの間で「例のコンビニ」と呼ばれる、コンビニを模したスタジオに車を停める。
後部座席から降りた真琴は聖書と斧を持ち、スタジオに乱入。
撮影現場では尼僧・蓮寂が時間停止空間を展開。仏教の「刹那即永劫」、つまり悟った僧は一瞬と永遠が同じに見えるという思想から、蓮寂は脳波を増幅させ空間に干渉、時間停止空間を出現させていた。
真琴はその空間を斧を振りかざし破壊した。
かつて大学院で真琴が研究したループ量子重力理論は相対性理論と量子力学を統合し、時空が連続体ではなく分割不可能な最小単位の集合体であることを示す。かつてラマヌジャンが女神の神託により定理を発見したように真琴も神の啓示を受け、最小単位同士の結合、つまり物事の因果を物理的に壊す方法を発見。時間停止空間を破る斧を発明したのだ。
スタジオでは真琴と蓮寂の異能バトルが炸裂。だが、蓮寂は逃亡。真琴と篠原も撤退する。
教会へ戻った夜、真琴は語る。
二年前、蓮寂の時間停止空間が変質し暴走。撮影現場の近くをたまたま通った真琴の父が空間に飲まれ行方不明になった。それをきっかけに真琴は復讐する道を選んだ。
篠原が研究のため作品を見ると、時間停止空間で平然と動く犬・ジョンに気づく。ジョンの映る時間停止作品は大ヒットしジョンはメーカーの広告塔になっていた。
篠原はジョンの瞳の映像を拡大して背筋が凍る。目玉が割れ、触手が生えていたのだ。さらに真琴も動揺する。――父が消える前にかけてきたビデオ通話で、父の背後にジョンがいたのだ。
真琴と篠原はAVメーカーの本社を強襲。本社ビルに展開された時間停止空間で真琴は蓮寂と対峙。蓮寂は借金のカタでメーカーに強要されて時間停止空間をつくったことを告白する。
するとその場にジョンが現れ喋りだした。ジョンはこの宇宙と時間軸が直交する別宇宙から迷いこんだ知的生命体で時間停止空間でも動けるのだった。しかしジョンはこの宇宙では異物であり、因果律が複雑に絡み合いってしまい別宇宙へ戻れなくなっていた。
真琴は思う。――創世記でアダムは、蛇にそそのかされたとはいえ、自ら神を離れる選択をしたのだ。
真琴はジョンに別宇宙への帰還脱出を手伝うと提案。蓮寂もメーカーへの復讐のために協力する。ジョンは了承し、真琴は因果を斧で断ち切り、蓮寂は空間の刹那と永劫を合一する。別宇宙への入口が開き、ジョンは元いた宇宙へ帰り、メーカーの社屋はこの宇宙とジョンの宇宙の間にある虚無へ堕ちた。
平穏な日常が戻る。諸行無常を覚え、蓮寂は再度修行し教会近くの寺で住職になった。真琴と篠原が寺に呼ばれると蓮寂はジョンに瓜二つの犬を連れていた。三人は犬を愛おしげに撫でた。
文字数:1199
内容に関するアピール
エンタメSFの定義を考えながらYouTubeを開いていたとき、バキ童チャンネルでAIにSFと官能小説を書かせる企画を観て閃きました。
この講座で官能的な題材の作品を出していいか迷いましたが、クリーチャー映画のスピーシーズだったり、森奈津子の小説群など、官能的でも評価されるSFは数多くあり、それらに続く作品になればと梗概を書きました。
SF要素として仏教の「刹那即永劫」、キリスト教における自由意志の問題、ループ量子重力理論が示す時空の量子構造を接続。時間とは何か、因果は破壊可能なのかという問いに挑みます。
また、エンタメ要素としてアメリカの禁酒主義者のシスター、キャリー・ネイションをもとに主人公像を作成。斧を振りかざて暴れるシスターと尼さんの超能力バトルを書き、読者を興奮させ、笑わせ、そして読み終わった読者が時間が少しだけ違って見えるようになる作品を目指します。
文字数:385




