梗 概
イン・ザ・スモーキングルーム
ラッキーストライクは名の知れた殺し屋だ。いつも煙草を咥えて、悠然と標的を撃ち抜いている。この男はなんでも「当たる」という能力を持つ。
相棒のマルボロは発火能力を持つ渋い中年男。
ふたりに共通するのは、特殊能力が煙草を吸っている間だけ発動するという点だった。
義賊として悪党を狩るラッキーストライクは、去り際必ず決め台詞を吐く――「当たらない弾はないぜ。ラッキーストライク!」
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完全栄養食のパウチが散乱する部屋で目覚めた児玉友樹――現実世界のラッキーストライクは、冴えないフリーターだ。昨晩は遅くまでオンラインゲーム『イン・ザ・スモーキングルーム』で遊んでしまった。日本で喫煙が禁止されて以来、煙草会社はパチンコやゲームでのIP化に活路を求め、その中で生まれたのがこの人気作だ。
今日も友樹はそのゲームを生み出したゲームメーカーの会社で、ビル清掃員として働く。ビルには〈喫煙室〉と呼ばれるサーバールームがある。一部の社員がこっそりと集まり、違法に入手した煙草を楽しむ部屋だ。
ある晩、友樹はサーバー室から出てきた冴えない中年男性を尾行し、脅迫する。男はあっさりと首を縦に振る。友樹は思わず、チャットでよく使うセリフを呟いた。途端、男性は驚いた様子で自分がマルボロだと明かす。一転、意気投合したふたりは誰もいない時間を見計らい、〈喫煙室〉で煙草を吸いながらゲームをするようになる。やがて、会社の開発サーバーをランサムウェアでハッキングするという計画を思いつく。
ランサムウェア攻撃は驚くほど簡単に成功した。開発中の大型タイトルのデータは暗号化され、復号キーと引き換えに高額の仮想通過が要求される。
しかし、事態は急速に悪化する。違法煙草の出所を追っていた警察がマルボロに目を付け、〈喫煙室〉の存在が明らかになる。警察はオフィスビルで二人に事情聴取をしようと試みるが、焦った友樹が逃げ出してしまい、〈喫煙室〉に立てこもる。マルボロは仕方なくその人質になる。
追い詰められたふたりは、いったん煙草を吸う。吸いながら、『イン・ザ・スモーキングルーム』をプレイする。いつかは出なければならないが、出たら逮捕されるだろう。
煙草が残り一本となったところで、友樹がふと「当たらない弾はないぜ。ラッキーストライク!」と呟く。と、突然ビルに雷が落ち、停電する。暗闇の中、ビル内は混沌とする。待機していた警察が〈喫煙室〉に突入するが、マルボロが落とした煙草が、ヤニと埃の溜まったサーバーのファンに引火。大騒ぎの中、ふたりはなんとかビルを逃げ出すことに成功する。
ラッキーストライクとマルボロは、今でも日本の各地を転々としながら、こっそりと『イン・ザ・スモーキングルーム』をプレイしているらしい。
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内容に関するアピール
エンタメといえば異能力バトルを書きたい! と最初に思い、「煙草を吸うと異能力を発現する」という設定で考え恥じました。ところが、異能力にSF的な説明をつけることができなかったため、異能力パートはゲームの世界ということにしました。メインはうまくいかない青年と中年が無茶苦茶をする話です。気づけば異能力の話ではなくなってしまいましたが、展開はテンポよく進められそうかなと思っています。
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