テンセグリティの吸血鬼

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梗 概

テンセグリティの吸血鬼

女子高生・瑠衣の住む街で、体内から血液の抜かれた状態の怪死体が相次いで発見される。同時期に、ビーム状の格子で組み立てられた半球に、人がいきなり吸い込まれたとの目撃情報も発生。その半球の中で血を抜かれて人間が放り出されるという都市伝説が広まる。半球の外観を見た人が、「テンセグリティ構造」であると主張し、通称「テンセグリティの吸血鬼」と呼ばれるようになる。

謎の構造物に興味の湧いた瑠衣は無作為に街を探検する。家族との折り合いが悪く学校でも孤立していた瑠衣は、現実世界から逃避できるなら危険に巻き込まれてもいいと思っていた。
学校をサボり繁華街で遊んでいた瑠衣は、小学校の同窓生の男子・須堂に出会う。地元の中古車販売・整備店で働く須堂は、車の改造に詳しく運転も上手い。須堂にドライブに誘われた瑠衣は、助手席に同乗する。
須堂の車が高速道路を走っていると眼前に突然、都市伝説の半球が出現。よけきれずに車ごと半球に衝突した瞬間、二人とも中に吸い込まれてしまう。

半球の中で意識を取り戻した瑠衣は、須堂とはぐれたことに気づく。須堂を探し回る内に、他に迷い込んだ人間数名と知り合いになる。
その中の一人はバイオメトリクスの男性研究者・十(つなし)で、テンセグリティの構造は人体の構造にも通じると言う。「互いに接触しない圧縮材が散在した状態で骨組みを支える構造」は、通常のトラス構造よりも部材数を大幅に減らせるため、究極の軽量構造として進化にも取り入れられてきたのだと。
十は研究機材を詰んだ車ごと半球に吸い込まれたが全て失わずに済み、独自に解明に取り組んできた。半球のビーム状の格子はカーボンナノチューブの電気的性質に似ていること、人体のタンパク質がその材料に使えること等、調査して分かった事柄を元に、この半球は地球外生命体による「人を取り込むことで自らのDNAを傷つけて、修復させて進化させる細胞体(突然変異で実例あり)」だと推論を立てる。人が血を抜かれるタイミングは分からず、場所も法則がないから、生き延びたければ一緒にいるべきだと瑠衣に言う。だが須堂に会いたい瑠衣は、隙を見て十の車を盗んで逃走を図る。

※以降は考え中です。

・紆余曲折を経て瑠衣は須堂と再会。二人で遭遇した体験から、自分たちは錯視アートを使った構造に迷い込んだことが分かる。錯視によって半球の空間のねじれが隠されていたのを二人は発見し、十の車でねじれに避難。車を改造して住み家を作る。

・追いかけてきた十を死なせてテンセグリティに吸収させることで、当面は標的から逃れることになる。

・半球は面を挟んで下にも存在することも判明。瑠衣は、校外学習で見た「アクアポニックス」の球体(アピールの写真参照)を思い出す。自分たちのことを、水槽の死角で敵から逃れて泳ぐ小さな魚のようだと思う。このねじれに同じように仲間を呼び寄せて、須堂と共に何とか生き抜こうと画策する。

文字数:1200

内容に関するアピール

・テンセグリティとは、張力(Tensile)と統合(Integrity)の二つの単語からなる造語で、バックミンスター・フラーが発案した構造物の骨組みのこと。代表例:ジオデシック・ドーム
・アクアポニックス:水耕栽培と水産養殖を組み合わせた循環システム(添付画像ご参照)

参考文献:「宇宙エコロジー」「宇宙船地球号操縦マニュアル」バックミンスター・フラー著、「人の生きた筋膜の構造」竹井 仁監訳 他
取材協力:パナソニックセンター東京様、今岡 仁様(NECフェロー)、バイオメトリクス研究所主任 海老原 章記様、ウジタオートサロン様

取材メンバーとの打ち合わせで、未完成部分の構想を考えて実作に取りかかります。

ゲンロン関係者の皆様には大変お世話になりました。またお目にかかれたら嬉しいです。

文字数:339

課題提出者一覧