政治家業はAI影武者と二人三脚! どうかわたし(達)に清き一票を!

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梗 概

政治家業はAI影武者と二人三脚! どうかわたし(達)に清き一票を!

清原雪彦は爽やかで整った完璧な外見を持つ政治家三代目。しかし勉強は大の苦手で大学に入るにも苦労した。その大学で出会った悪友は副業でAIを開発しており、雪彦に賃金を払うからと協力を頼んでくる。悪友は雪彦の立体動画と音声を大量に記録し、AIに装備させたのだった。雪彦の完璧な外見を装備したAIは、さまざまな商品販売やサービスの営業を担って悪友を儲けさせたらしい。肖像権と音声権を持つ雪彦にもそれなりの収入があったが、卒業と同時に二人は徐々に疎遠になった。

三年後、衆議院議員たる父親の第三秘書をしていた雪彦は、急に地盤を継いで出馬することになる。父親が病に倒れたからだ。不安で逃げ出したくなった雪彦は、久し振りに悪友に連絡を取る。愚痴を聞いて貰うだけだったはずが、悪友は、かのAI雪彦、通称セツを選挙戦に用いることを提案してきた。SNSを通じた有権者との交流や宣伝活動を主に担わせ、演説の草案なども任せられるという。AIであるという注意書きさえしておけば違法行為にはならないと知って、雪彦は悪友を選挙スタッフとして雇うことにした。悪友とセツは、意外にも、父親の片腕だった第一秘書ともうまくやって、選挙戦を支えていく。特にセツは多数の女性票を集めることに成功し、父親から継いだ支持基盤もあって、雪彦は野党の対抗馬に大差をつけて当選を果たす。政治家としての道を歩み始めた雪彦だが、何の自信も信念もなく、第一秘書や与党の先輩議員達に言われるがままに行動する。第一秘書は雪彦に、セツを使い続けるよう命じた。セツは引き続きSNSを通じた政治活動を担い、公の場でも端末を通じて雪彦の発言を助けるようになる。雪彦は、ある週刊誌にはAIの操り人形と報道され、野党からもAIを多様し過ぎていると非難されるが、セツによる宣伝や答弁原稿はそれらの批判も華麗に躱していく。しかし雪彦は政治家の自分を演じることに、慣れとともに疲れを感じていた。

そんなある日、雪彦の地元が直下型大地震に見舞われる。交通網が寸断された中、首都から地元へ何とか帰った雪彦は、セツの提案を取り入れ、悪友とも連絡を取り合って、救助や復旧に尽力する。傷ついた故郷や涙する支持者達の姿は、空っぽだった雪彦の中に政治家としての魂を目覚めさせた。寝食を忘れて災害に向き合う雪彦の様子を、セツは自然にSNSで公開し、更には具体的な支援策を提示していく。セツがさまざまな営業で学んだ経験から提示する支援策は大変的確で、雪彦の支持者を増大させた。それでも復興には時間が掛かり、四年が過ぎて次の選挙が迫ってくる中、あの週刊誌が、さまざまな営業をしていた過去のセツについて批判報道をする。反論しようとするセツを雪彦は止め、有権者の判断に任せると言って選挙戦に臨んだ。了解したセツも、ただ雪彦の復興に懸ける熱意のみを宣伝し、二人三脚で戦った結果、二度目の当選を果たしたのだった。

文字数:1200

内容に関するアピール

進化し続けるAIが政治家に重用され、影武者のように運用される近未来の物語です。

雪彦の姿をしたセツがSNSを用いて輝かしいイメージを作り、本人のほうをそのイメージに近付けさせるという、どちらが本物か分からない生活を、面白おかしく且つリアルに描写したいと思います。一方で、嫌々ながら政治家をしている雪彦の葛藤や、セツの操り人形でしかない雪彦に信を置けない人々の視点も挟んで物語に奥行きを持たせていきます。震災を機に、信念のなかった雪彦が真の政治家として覚醒していく様子を起承転結の「転」とし、二度目の選挙ではセツが作ったイメージを雪彦が凌駕していく様子を重ねて、最も盛り上がる当選の場面を、「結」としたいと思います。

セツは人間に対して終始誠実なAIとして描き、雪彦は信念と学力はなくとも周囲から好かれる育ちのよい人間として描いて、一種のバディものの要素も持たせたいと思います。

文字数:386

課題提出者一覧