ギャンブラーが確実に儲ける方法

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梗 概

ギャンブラーが確実に儲ける方法

 年に一度ポーカー最大の大会が開かれる。優勝賞金一〇〇〇万ドルの大イベントであり各ブックメーカーはAIを使った優勝者予想で大会を盛り上げる。AI予想は年々精度が向上しており、賭ける側も一定の信頼を置いている。それでもAIは進化の途上であり、だからこそ出し抜いて一儲けすることができると考えたのがウィリアムだった。
 彼は数年来の計画を立て、その大会で無名の挑戦者として、世界一のボビー・フォックスと戦う。ボビーとは旧知の間柄だった。
 二人は同じ哲学――儲けられるときに確実に儲ける――を共有していた。
 元々ウィリアムは野良ゲーマーでボビーともどこかの街のゲームで知り合った。ポーカーに必要なスキルは全て街のゲームで身につけ、磨いた。そして、それこそがAI予想を出し抜くための武器でもあった。
 AI予想にはデータが必要だが野良ゲームのデータなどなく、掛け率も高くなる。そこで二人は互いにウィリアムに(もちろん他人名義で)賭け、決勝でボビーがわざと負ける。賭けでも儲かるし賞金は山分け。事前に――何年も前に――そう取り決めた。
 確実に儲けるために。
 だからウィリアムは試合で自分が勝つことを知っていた。
 だが――試合が始まるとボビーは勝負を降りなかった。
 最後は手札の勝負になる。
 ウィリアムはフルハウス。
 ボビーは――ウィリアムはうめき声を、観客は歓声を上げる――フォーカード。
 大会後すぐに二人は会う。問い詰められたボビーが訳を話す。
「いま裁判中なんだよ。どうしても金が要るんだ」
「俺をばかにしてるのか」
「ちがう。取り決めは守るつもりだった。でも手札がよくて……」
「そんな言い訳が通用するか」
 以降、二人が会うことはなかった。
 年月が経ち、ウィリアムは交通事故に遭う。命は助かったものの、脊髄を損傷して後遺症が残るかもしれなかった。ウィリアムを担当するロジャー・ハイレンという医師は再手術による根治の可能性を口にした。
「成功の確約はできませんが」
「俺はギャンブラーだドクター。あんたに賭けるよ」
 手術は成功する。
 ウィリアムは入院中、ロジャーの生い立ちを聞く。
 彼は実の両親から虐待されていた過去があり、幼くして別の夫婦に引き取られた。数年前にその養父母が離婚し今は母親の性を名乗っていた。
「旧姓はフォックスです。養父はボビーという名前です。昨年、他界しましたが」
 驚いたウィリアムはボビーの言っていた裁判について知らないか尋ねる。ロジャーはすぐに頷く。彼を養子縁組するために実の両親と争った裁判だった。
「養父には今も感謝してます。僕を引き取るために多額のお金を払ってくれました」
「多額の金って一〇〇〇万ドルくらい?」
 ロジャーはきょとんとした表情を浮かべ、首を大きく横に振る。
「まさか。最終的には三〇万ドルくらいかなあって言ってました」
 ウィリアムは笑った。
 ボビーの野郎、一杯くわせやがったな。

文字数:1198

内容に関するアピール

ひと口にギャンブルといっても色々あります。

競馬や競輪、競艇といったレースもの。パチンコ。スロット。そしてカード。

この作品ではカードギャンブルのなかでもポピュラーなポーカーに焦点を当てています。

梗概中に言及はありませんが、テキサスホールデムというルールを念頭に書きました。

実作ではそのあたりの詳細も織り交ぜて書く予定です。

ギャンブラーって、いろいろな人がいると思うので一概には言えませんが、私の中で「こいつはやべえな」と思っているギャンブラー像があります(もしかしたらそれが生粋のギャンブラーなのかもしれませんが)。

それは「ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうとする人間」です。

今は疎遠になった私の知人にもそういう人がいますが、疎遠になる前からなるべく近寄らないようにしていたことを思い出しました。

気楽に読んでもらえると嬉しいです。

文字数:367

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