異次元からの来訪者

印刷

梗 概

異次元からの来訪者

普通の大学生ジェームズは車に轢かれる夢を見て目を覚ます。すごくリアルな夢だったと思いながら彼は大学に行く。講義室に入って席に着くと同級生のルイーズが隣に座る。「来週の金曜日までに十万円必要なの。何とかして。お願い」と懇願される。急にそんなこと言われても困る、と思いながらもジェームズは「わかった、僕が何とかするよ」と言ってしまう。「ありがとう」と言ってルイーズは立ち上がり、他に何か言いたげな視線をジェームズに向けながら講義室を出ていく。
 ジェームズは喫茶店でバイト情報誌を読む。来週の金曜日まであと十日。高額報酬の短期バイトを探すけれどみつからない。「いいバイトって無いもんだなぁー」思わず呟く。その声が聞こえたのか近くに座っていた中年男性が声をかけてきた。
 「バイトお探しですか? いい仕事ありますよ」「どんな仕事ですか? 来週の金曜日までに十万必要なんです」「ちょうどいい。日当一万円の簡単な仕事です」
 話がうますぎる。ブラックかもしれない。と思いながらもジェームズは中年男性とバイトの契約をする。

そこは探偵事務所だった。事務所といっても小林と名乗る喫茶店で声をかけてきた中年男性一人しかいない。ジェームズの仕事は電話番だった。小林は一日中出かけていて電話も全然かかってこない。ジェームズは退屈してスマホでニュースを見る。『車に轢かれた男消える!』というニュースを見て数日前に見た夢を思い出す。他にも何か重要なことを思い出しそうになったとき電話が鳴った。
 固定電話の受話器を取り耳にあてると、頭の芯を強く刺激する異音が聞こえてきた。その異音には受話器を耳から離すことができない強い力が働いている。数分で唐突に異音は止まった。受話器を置き呆然とするジェームズ。頭の中は靄が晴れたようにスッキリしている。「記憶戻ってきたかな? 記憶再生電波作るの苦労したぞ」いつのまにか小林が戻ってきていた。

ジェームズは記憶の一部を失っていた。車に轢かれる夢は現実だった。病院に運ばれたら正体がばれてしまうのでルイーズがジェームズを回収した。ジェームズとルイーズ、そして小林は、惑星ゼファリスからきた異星人だった。自分は異星人だというジェームズの記憶を取り戻すために、ルイーズと小林は一芝居打った。回りくどいことしやがって! とジェームズは苦笑する。

ジェームズたち三人は惑星ゼファリスの警察官で、地球へ脱走した囚人を確保するために、地球人に成りすましている。アバウトな成りすましだけれど周囲の人々に集団催眠をかけてバレずに済んでいる。ゼファリス人は異次元ホールを自由に操り宇宙空間を移動する。ジェームズたちは囚人を異次元ホールに逃げ込む寸前に捕える。惑星ゼファリスに連行しようとすると囚人は不敵な笑いを浮かべる。
 「この星の人類はもうおしまいだ。奴らを召喚した」
 異次元ホールから不気味な異次元怪物の集団がやってくる。

文字数:1202

内容に関するアピール

ひねることにより物語を変化させる、ということを体をひねりながら考えて書きました。
   【ひねり1】夢だと思っていた交通事故が現実だった。
   【ひねり2】普通の大学生の話だと思わせて、実は記憶喪失の異星人の話だった。
   【ひねり3】ハッピーエンドで終わったと思ったらバッドエンドだった。
実作では、後半のジェームズたちと囚人との対決をサスペンスフルに描きたいと思います。できればもっとひねりを加えたいです。
今度こそ実作がんばります。

ジェームズ、ルイーズ、小林という名前は、ゼファリス人が、怪しまれずに地球人に成りすまそうとして、多い名前を調べた結果です。舞台は日本なので三人とも日本人の名前にすればよかったのに。ちょっと間抜けな三人です。

文字数:319

課題提出者一覧