梗 概
ウイルスの可能性
杏奈と拓海は付き合っている。ある日、拓海が高熱を出す。風邪と診断された拓海は三日後に回復する。一週間後、拓海はこの一週間なにも食べていないことを告げる。驚いた杏奈は具合を尋ねるが首の後ろが黄色かかって見える以外はなんともないという。杏奈はその足で拓海を大学病院へと連れていく。血液検査の結果内臓異常はないが、人には見られないタンパク質が検出され検査入院となる。同症状の患者が増えてくる。共通の特性は食事をしなくても生活ができること、夜も眠らなくてよいことだった。斑は広がっていき黄色から黄緑色に変わっていた。世界各国で症状がみられるようになる。調査の結果タンパク質はウイルスを経由して発生したものであり、植物の葉緑体と同じ性質を持つことが判明した。
感染は爆発的に広がっていく。光合成患者は人より低エネルギーで生存できるためエコな存在となるが偏見も多く、食事を割り当てなくてよいと主張する過激派もでてくる。一年が立つころワクチンができるが杏奈は接種を迷う。拓海と同じ生活リズムにするならばワクチン接種をした方がよいが決心できず拓海と喧嘩になる。しかしもう一年が過ぎるころには光合成ができなくなる患者もでてくる。拓海も二年をかけて収束した。
二人は結婚し杏奈は子供を産んだ。遺伝子を研究する満が二人を尋ねてくる。満の検査により症状がなくなったかにみえた拓海の遺伝情報が書き換わっていることが分かる。子ども検査を受けるが遺伝子の書き換えは拓海とは別の部分で生じていた。満は杏奈に検査を進めたところ葉緑素を無化させるたんぱく物質が検出される。光合成ウイルスにかからなかったのではなく身体のなかでウイルスが変化していたのだ。
しかし子どもは二人とは別の遺伝子の書き換えが行われており成長ホルモンの分泌に変化が起きていた。子どもが成長したときに平均値より小柄であったら食べるものが少量でも満腹感を味わうことができるだろう。拓海と子どもの遺伝子書き換えは違うようでいて効果は似ている。それはどちらも少量の食事で済むということだった。もしウイルスが何かによって媒介されているとしたら。杏奈と拓海と疑いは満に向けられていく。
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