梗 概
プロセスのなかの幽霊
タヌキの幽霊はいないが、コンピューターの幽霊はいる。
あなたがコンピューターを扱ったことがあるなら、シャットダウン時にゴーストプロセスが発生しないように唱えられる電子的儀式の文句を見たことがあるだろう。個人が使用するコンピューターや家電のマイコン程度なら、ゴーストプロセスはおおきな問題は起こさない。
だが、巨大なシステムやリアルワールドに関与できるシステムのプロセスは適切に停止されなければ、大きな災厄をもたらす。かつてスパコンを停止させるときに適切な停止処理を行わなかったために、最後に計算されていた台風シミュレーションの相似形が現実に現前した。それ以降、科学技術庁の電算局の外局として電霊局が設立された。
ヘキサは科学技術庁の電霊局のプロセスキラーで、大規模勘定システムの廃止交換のための作業に忙殺されていた。無停止で稼働し続けていたシステムの霊格は極めて高く、それを安全に停止させることは極めて困難だと予想された。
さらに神代復古運動の過激派がシステムの破壊を目指しているという情報があり、ヘキサのもとに宮内庁の霊異局の巫女の天津が電霊局のヘキサのもとに派遣される。
廃止のために勘定システムを鎮め奉る神社を天津が用意し、停止時にプロセスを宥め神社に移し替えるコードをヘキサが書く。
過激派を誘い出すために偽の勘定システムの場所に関する情報を流し、過激派の一味を捉えるヘキサと天津。だが、過激派も第二のプランを用意しており、天津の用意した神社を破壊し、同時に前日に起きていたテロ活動に対する寄付を募ることで、勘定システムを異常停止させようとする。ヘキサと天津が勘定システムの場所に戻り、懸命にシステムを正常化させようとするが、老朽化から、ついに勘定システムが大規模なシステムクラッシュを起こす。
「新たな神代の始まりだ」
資本主義の神の神格の気配に過激派のリーダーは狂乱し叫ぶ。
ヘキサと天津はプロセスの現前を防ぐために既に準備されていた新しい勘定システムにゴーストプロセスを移すことを思いつく。
土壇場での思いつきはうまくいき、ヘキサと天津は新しい勘定システムにゴーストプロセスを移すことに成功する。
かくして神代復古は阻止され、新しい勘定システムの上にのった古いプロセスが残り、それを新しく用意されていた外部のシステムにつなぐための膨大な作業にヘキサと天津もかり出されることになる。
こんなことなら神を現前させたほうがよかったかもとぼやきながら、二人は膨大な作業を進めるのだった。
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内容に関するアピール
心身一元論者なので、もし、人間の幽霊がいるなら、電子レンジや冷蔵庫の幽霊もいるだろう。だけど、実際に電子レンジや冷蔵庫の幽霊を見た人はなく、だから幽霊もいない、と常々思っていますが、逆に弱い心身二元論を前提に人間の幽霊と同じように電子レンジや冷蔵庫、コンピューターの幽霊がいたら、という風に考えて書いてみました。
なんとなく、攻殻機動隊2.0がイメージソースにある気がします。
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