小学校の夏休みの課題といえば、かつては「アサガオの観察日記」が定番でした。それで思い出したのですが、もう40年ぐらい前、中学校の技術家庭科の授業でキク(挿し芽)の福助作りに挑戦したことがあります。隣のクラスのS君の鉢だけ、明らかに葉の形が異なるものが伸びてきて、どんなに世話をしても最後まで花をつけず、ひとり涙目になっていたのが忘れられません——あれはいったい、何だったのだろう?

閑話休題。今回の課題は「何かを育てる物語」です。

火星でジャガイモを育てる小説がありましたが、育てる対象は生物でも無生物でもかまいません。人工知能や組織的集団はもちろん、神や宇宙、言語化できないウンタラカンタラでも何でもござれです(育てる主体も同様)。ただし「何を育てるか/誰が育てるか」のアイデアだけに自足して、設計図通りに「作る」だけ、あるいは完全放置して「なりゆく」さまを観察するだけでは物足りない。

皆さんは「ゲンロンSF創作講座」の受講生として、「育てる/育てられる」関係の非対称性に自覚的であろうと思われます。そうした関係のせめぎ合いにも目を配りながら、「××育成シミュレーション」のテンプレに収まらない、育てる主体とその対象の間に生じるダイナミックな相互作用のドラマを描いてくれることを望みます。
(法月綸太郎)

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