ムゲン・クエスト

印刷

梗 概

ムゲン・クエスト

‣強力な力を持つ魔族が世界に誕生しました。そう遠くない未来その魔族は魔王となって人間世界を襲うでしょう。

‣あなたの子どもは勇者となります。あなたが子どもを立派な勇者へと育ててください。

第一子が誕生する当日の朝に神託の夢を見た主人公。男の子が生まれた。この子どもはたしかに他の人間よりも頑強で、三歳で成人男性を抱きかかえることができた。主人公は、夢で見た神託を忘れることはなかったが積極的に息子を勇者へと育てることはしなかった。息子が十歳になったとき、魔王は世界を侵略し始めた。神託が本物だと知った主人公は、子どもを勇者へと育てようするが、時期は遅く、鍛冶しかしらない主人公には子どもに戦う方法を教えることもできなかった。結局主人公は勇者を育てることはできず、魔王が世界を支配した。

 

主人公は同じ神託の夢を見て目覚める。世界は魔王の侵略以前、子どもの誕生の日に時間が巻き戻っていた。今度の子どもは女の子だった。今度も強い肉体を持って生まれ、世界を救わせるため厳しく育てたが、あっけなく魔族との戦いに負けてしまった。

主人公は子どもの死にショックを受け、こんなことはもう二度と起きないことを望む。悲しみに暮れながら世界が滅びるのを見て、神託を受けた朝に主人公は戻る。

 

神託から世界の破滅までをループしつづける主人公。何度も子どもの死を経験したが、勇者を育てることはうまくなり、魔王城に乗り込めるぐらいの勇者を育てられるようになった。同じ妻とのあいだに子どもを授かっているが、どの子どもも同じではなかった。主人公の目の特徴を持った子がいれば、次の子は妻の目の特徴を受け継ぎ。時にしぐさが似ていたり、性格が似ていたりするが、奇妙に似ていなかった。

 

万事順調とはいかないまでも少しずつ確実に魔王攻略に近づく勇者を育ててきた主人公だったが、勇者は、魔王城を攻略を始めてから一度も魔王にたどり着くことなく死んでしまうという行き詰まりを三百周回ほど繰り返し始めた。繰り返す世界に変化がなくなってくると、この子どもの死に意味があるのかと、千年を超える時間を過ごしその間なんども繰り返された問いが、ついに勇者の親であることをやめようかと主人公に考えさせる。

周回する人生で何度も見た光景も、ほんの少しの差異を持った子どもがいることで全く異なったものに感じられた。すべての子どもとの出会いが特別ならばこのまま無限に現れる子どもと戯れつづけるのもよいと考えた主人公は、既に旅だった現在の勇者の死を願う。魔王はこの時あらわれた、主人公だ。勇者は主人公の前に戻り、主人公を殺す。

世界はやっと進行を取りした。

文字数:1084

内容に関するアピール

課題に対して考えた主軸は「ゲーム」です。はっきりと育成ゲームといってもよいのかもしれませんが、いいところまで進めたのに消えてしまったセーブデータということで、広く「ゲーム」といってみます。主人公は育てることになんども失敗する、しかし失敗しても育てる経験値は増えていく。ドラマとして主人公(プレイヤー)は育てる記憶を持っているのに、育てられる子ども(キャラクター)の記憶は消えるので、主人公は何度も初めから関係や思い出を作らねばならないというところです。

 

文字数:226

課題提出者一覧