粘菌の原

印刷

梗 概

粘菌の原

A5’は、いろんな色に照り返す蒸し暑い粘菌の原にでていくBたちを見ている。オレンジ色の恒星をまわる、この地球型惑星にたどりついた宇宙船は、飛ぶ役を終えて基地となった。一つの面が透明なシールドになって、ひとびろと見渡すことができる。
 宇宙船内は、更にシールドされ、いちばん奥には、人工冬眠で数百年かけて、若いころにこの惑星にやってきた「母(ママ)」が、高齢となってほとんどずっと寝ている。
 Aの5代目A5’は、たまに母の部屋まで行く。Bたち、産まれた順にB7、B9、B14 は、外に出られる代わりに、母の地球型大気の空間では長く生きられない。
 たくさんの生物の卵細胞や種子のストックを持って、ここであらたに生物系をつくりあげようという試みはことごとく失敗してきた。シールドのすぐ中は緩衝空間になっている。より母に近いA5‘は地球型大気と緩衝空間、Bたちは緩衝空間とこの星の毒性大気に適応している。人工子宮からうまれたのち植えられる細菌叢が大気と粘菌から彼らを守るのである。細菌が生着するため、卵細胞時点での分泌腺の遺伝子の改変が必要であった。AシリーズもBシリーズもすべて女性系である。母は、男は有害だといつも言った。しかし一方で、地球がおかしくなったときにこの船を用意して脱出させたその父親を、いつも誇らしげに語った。
 A5’が植物の遺伝子を改変し、Bたちが屋外に植える。その作業のために出るのである。ごくまれに発芽することはあってもそれ以上にはならない。植物がないので動物も再生できない。清潔室で食用植物をパネルからの発電で育てる程度で、生存できる人数は限られる。
地球についてはライブラリの母の好みに偏ったの映画やドラマから知っていた。
 B9個体は、黒人の卵細胞からつくられた。彼女はかなり遠くまで歩き、粘菌にからまれ身動きの取れない、隔離服をきた人間個体にであう。自分ら以外の他者が今まで存在しないので、それがどういう意味を持つかもまったくイメージできない。
 B9が粘菌に触れると、粘菌はそれを避けようとし、人間個体は解放される。人間個体は、すこし違う話方をするが意思疎通が可能で、ハリムと名乗る。歩こうとすると粘菌がまたはりついてくる。B9は、汗をふいたバンダナを渡す。それを近づけると粘菌は避けていく。
 滅びなかった地球からきたのだとハリムはいい、ポッドにのって飛び去る。基地で話をすると、A5’は汚れた地球からやってきたものを相手する必要はないと激怒する。それをほかのBたちもみている。B9以外の肌は黒くない。
数日後、粘菌の原でB9は防御服を着ない軽装のハリムが出る。ハリムが男であることにB9は気づく。肌の色もずっと白い。生物年齢としては、B9の半分程度であるが、B9にはそれはわからない。
 ハリムは、バンダナを解析して、体表面や粘膜等の遺伝子一時改変を行ったという。この技術は母の出たころにはなかった。B9と語り合う。基地に戻っても、B9 はハリムのことをいうことができない。A5’の激怒を避けたいことを、話がもっと聞きたいと正当化する。B9は自分たちのことを語り、ハリムは、ドラマのような話し方といいながら注意深く聞いている。
 B14 が基地に帰ってこなくなり、B9 と B7 は探しに行く。そこへハリムがあらわる。彼はB全員と接触していた。B14は崖から落ちて亡くなっていたとハリムは告げ、ふたりは、A5’には、行方不明でみつからない、死んだ可能性が高いと報告する。
 ハリムは、ボディタッチが増えていく。B9は拒めない。そのうち、ハリムは、地球の動物種が激減しており、以前の動物卵細胞ストックのある基地の助けが欲しいと語る。
 ハリムの話をあらためてA5’にするB9。やはり激怒、しつこくB9はくいさがり、A5’は母を覚醒させて裁定を乞う。なにも改善されないこの星を見て、母は、地球にストックを戻すようにと、ロックを外す。
 A5’は、それまでの自分が否定されたためさらに激怒、シールドを破壊、外気に触れて母は死ぬ。A5’はそのままストックを破壊しようとする。換気装置から流れる地球型大気に、B9は気が遠くなりながらもA5’を羽交い絞めにしている。
 外から、ハリムと、B14が入り込む。若くて白いB14は、母船に連れられて、この星以外でも生きられるよう生後遺伝子改変をうけていた。ふたりは機械を操作して、ストックを運び出してポッドに載せ、飛び去る。ポッドを追って走り出したA5‘は、そのまま粘菌に包まれる。2人のBが、残される。もうなにもない。

文字数:1876

内容に関するアピール

今回どうにも1200字におさまらずすみません、あまり飛ばすと、梗概でわからない設定はいけないなど言われますし、下手で困っています。
 前回うまく回らなかった話を、もういちどいじくってみました。テラフォーミングがうまくいかない、という話です。
 テラフォーミングについてはけっきょくwikipediaでいろいろ見て回っただけになりました。
 細菌叢が人間を守るというのは、
「細菌が人をつくる (TEDブックス) Follow Your Gut:The Enormous Impact of Tiny Microbes TEDブックス ロブ・ナイト, ブレンダン・ビューラー, 山田拓司, 東京工業大学山田研究室」
によるものです。設定の一部にしか使えていません。もうちょっといろいろ使えるかと思います。
 また、B9だけ肌が黒いので別扱いされる、知らないはずなのに、という部分もわかりやすく入れたいと思います

文字数:385

課題提出者一覧