あまたの星、宝冠のごとく、波長レターと共に。

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梗 概

あまたの星、宝冠のごとく、波長レターと共に。

 月兎族と地球族の混血有機ロボのアルとモカ、シリーズ2

オールトの雲へ向かう宇宙船。船内のホログラムパネルで系外惑星パズルゲームをしている。

ハビタブルゾーンの定義がわれわれの太陽系惑星とは違う幾つもの発見がなされており、そのパターン認識をTESS型宇宙望遠鏡からのデータを多くの人たちが参加して解明して行くプロジェクトの一環のひとつだ。地球ではSETIプロジェクトというものがあり、そのプログラムでは多くの地球外知的生命体の発見がなされており、系外惑星発見のデータからハビタブルゾーンを抽出後、知的生命情報を探し出す膨大な作業をパズルゲーム型として参加できるようなスポットを複数用意している中のひとつ。

わたしたちの太陽系がある天の川銀河の中だけでも2千億個〜数千億個の恒星があり、その恒星、または連星系恒星に惑星系がありその公転や自転の周期も様々だ。その中からわれわれの太陽系惑星との距離を比較して可視化したホログラフィーをピアノを弾くように操作しながらパズルを組み立てていく。

巨大ガス惑星Glise876を周回する”Glise876 d”のスピード感、アルはどちらかというと回転数の高い系外惑星が好きなようだ。きっとネザーランドドワーフの血筋の性質とリンクしているのだと思う。忙しなく動き回るその姿は地球から見たときの内惑星、太陽の周りを高速回転しているとイメージしてほしい。一体どのくらいの重力がかかっているのだろう。恒星風はどんな感じで磁力線を描くのだろうか。それとも…。

モカはロップイヤー種のため、のんびりした”Glise876 e”の軌道の方が眺めてて落ち着いて好きなようで、元々太陽系の中でも水星がお気に入りでベピコロンボの歴史の単位を選択していたからこそ、この系外惑星を無意識に選んだんだろう。有機ロボは人や月兎の持つ直感やセンスを(  )の仕組みを取り入れることで前時代的の機械式ロボットとは様式を異なる。

シリウスを超え、ベガの方向(地球から25光年)、Kepler155の方向には。

 

水の惑星、地球、600年前

太陽系第3惑星、衛星はひとつ。自転24時間、公転365日。太陽からの距離1億5000キロメートリル。水の全体質量14億km3。地球全体の表面を覆う70%は海水に覆われている、そのうちの淡水の割合は2.5%。太陽系の唯一のハビタブルな水の惑星と呼ばれていたその頃、南の小さな島にいる女の子と地球うさぎチビは、冬の空の下、いつもの海でふたご座流星群を眺めていた。

オリオン座の腕にある煌々と輝く赤い星が、今夜はなぜか弱々しい光のように見える。いつもと違うその光のスペクトルは、無意識にその女の子の感覚に侵食している。

三脚にセットした簡易赤道儀と一眼レフカメラ。横にはステッカーをいっぱい貼った天体望遠鏡。
その時代はカメラは持ち歩くような機材だったらしい。手に持った小型デジタル機器でタイマーセットをしてバルブ撮影をしている。そのあと、砂浜に直接寝転んで全天を眺めていると突然空が輝き始める。

月の出は25時ごろで、まだあと3時間ほどある。オリオンの肩にあるその赤い星が輝き出している。3時間後煌々と満月の100倍の明るさを放つようになった。いつもの海のさざ波が変化していく。その時…。

これは、640光年先にあるベテルギウスの超新星爆発によって波及していったXXXについての物語。

 

ホログラフィーの紡ぎ出すそのストーリーを見終えたアルとモカは互いに目を合わせ頷く。

そして、星間通信フラワーにメッセージを入念する。

太陽系を超えプロキシマ・ケンタウリの通信局を中継し、ぼくらは月にいる家族へ波長レターを送る。

 

 

参考文献;

国立天文台ニュース2019年11月1日No.316 特集 野辺山観測所の50年

国立天文台 星と宇宙の日2019一般公開

国立天文台4D2U   

JAXA相模原一般公開

太陽と太陽系の科学’18 谷口義明 放送大学教材

入門電波応用 第二版 藤本恭平著 共立出版

巨大ブラックホールの謎 本間希樹 講談社

銀河宇宙観測の最前線 谷口義明 (株)海鳴社

ハビタブルな宇宙 井田茂 春秋社

図解宇宙のかたち「大規模構造」を読む 松原隆彦 光文社新書

素粒子論のランドスケープ 大栗博司 数学書房

宇宙は本当にひとつなのか 村山斉 講談社

 

観測データ参照;

わたしの家の庭から見る天の川銀河と惑星、星座の定点観測。

旅先で見たふたご座流星群、天の川銀河、北斗七星、その他星座たち。

わたしの愛兎、歴代兎

系外惑星データベース

 

 

文字数:1854

内容に関するアピール

「波長レター」という造語を別の自分の作品で使った時に気に入っていたこともあり

取材というテーマ、今年のわたしの個人的課題の電波望遠鏡について書きたいと思い綴りました。

第5回テーマの主人公で連作書きたいと思って同じキャラが登場します。

普段から星空を定点観測しているので、その時によくいろいろ想像スイッチが入るのをそのまま書いた感じです。

文字数:166

課題提出者一覧