晴れの海から、泡宇宙へ

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晴れの海から、泡宇宙へ

 オールトの雲へ向かう宇宙船。オランダの天文学者ヤン・オールト、太陽系を取り囲む1万〜10万auの球核状の微惑星の分布。航路は彗星の生まれ故郷へ。

窓からは漆黒の闇に地球では星座と呼ばれている星々と幾千億個の恒星が煌めいている。船内のアクティビティルームでは、ホログラムパネルで系外惑星パズルゲームをしている月兎族と地球族の遺伝子情報を持つ有機ロボのアルとモカが楽しんでいる。

系外惑星パズルゲームとは、我々の住む太陽系とは別の恒星を中心に持つ惑星系のことで、電波望遠鏡や宇宙望遠鏡などを利用して多くの発見を続けている。ハビタブルゾーンの定義がわれわれの太陽系惑星とは違う幾つもの発見がなされており、そのパターン認識をTESS型宇宙望遠鏡からのデータを利用して、多くの人たちが気軽にゲームを通して参加し解明して行くプロジェクトの一環のひとつだ。

地球ではSETIプロジェクトというものがあり、この何世紀も多くの地球外知的生命体の発見がなされている。地球の高所にある大型パラボラアンテナと100近い電波望遠鏡群は多くの系外惑星発見のデータからハビタブルゾーンを抽出後、知的生命情報を探し出す膨大な作業をパズルゲーム型として参加できるようなスポットとして船内にも用意されていた。

わたしたちの太陽系がある天の川銀河の中だけでも2千億個〜数千億個の恒星があり、その恒星、または連星系恒星に惑星系がありその公転や自転の周期も様々だ。その中からわれわれの太陽系惑星との距離を比較して可視化したホログラフィーをピアノを弾くように操作しながらパズルを組み立てていく。音を可視化するようなイメージと言えばいいだろうか。

巨大ガス惑星Glise876を周回する”Glise876 d”のスピード感、アルはどちらかというと回転数の高い系外惑星が好きなようだ。きっとネザーランドドワーフの血筋の性質とリンクしているのだと思う。忙しなく動き回るその姿は地球から見たときの内惑星、太陽の周りを高速回転しているとイメージしてほしい。一体どのくらいの重力がかかっているのだろう。恒星風はどんな感じで磁力線を描くのだろうか。それとも…。

モカはロップイヤー種のため、のんびりした”Glise876 e”の軌道の方が眺めてて落ち着いて好きなようで、元々太陽系の中でも水星がお気に入りでベピコロンボの歴史の単位を選択していたからこそ、この系外惑星を無意識に選んだんだろう。有機ロボは人や月兎の持つ直感やセンスの仕組みを取り入れることで前時代的の機械式ロボットとは様式を異なるように作られている。

シリウスを超え、ベガの方向(地球から25光年)、Kepler155の方向に思いを馳せながら。

 

水の惑星、地球、600年前

太陽系第3惑星、衛星はひとつ。自転24時間、公転365日。太陽からの距離1億5000キロメートリル。水の全体質量14億km3。地球全体の表面を覆う70%は海水に覆われている、そのうちの淡水の割合は2.5%。太陽系の唯一のハビタブルな水の惑星と呼ばれていたその頃、南の小さな島にいる女の子と地球うさぎチビは、冬の空の下、いつもの海でふたご座流星群を眺めていた。

オリオン座の腕にある煌々と輝く赤い星が、今夜はなぜか弱々しい光のように見える。いつもと違うその光のスペクトルは、無意識にその女の子の感覚に侵食していく。

三脚にセットした簡易赤道儀と一眼レフカメラ。横にはステッカーをいっぱい貼った天体望遠鏡。その時代はカメラは持ち歩くような機材だったらしい。手に持った小型デジタル機器でタイマーセットをしてバルブ撮影をしている。そのあと、砂浜に直接寝転んで全天を眺めていると突然空が輝き始める。

月の出は25時ごろで、まだあと3時間ほどある。オリオンの肩にあるその赤い星が輝き出している。3時間後煌々と満月の100倍の明るさを放つようになった。いつもの海のさざ波が変化していく。その時…。

これは、640光年先にあるベテルギウスの超新星爆発によって波及していった土星の衛星エンエラドゥスについての物語である。

 

ホログラフィーの紡ぎ出すそのストーリーを見終えたアルとモカは互いに目を合わせ頷く。そして、星間通信フラワーにメッセージを入念する。

太陽系を超えプロキシマ・ケンタウリの通信局を中継し、ぼくらは月にいる家族へ波長レターを送る。

 

晴れの海から

晴れの海からローバーとムーンバブルが一定のリズムを刻んでホップしながら接近してくる。月面上空2000km、最接近まで500kmの楕円軌道上。地球では今夜は月齢18日を過ぎた頃だろうか。ローバーには地球人の血統を持つ月面人が2人。ムーンバブルには、耳垂れ月海ウサギ1羽。

月軌道プラットフォームゲートウェイからの資材を受取る為に2人と1羽は通信コンタクトレンズへ、ルリビタキの囀りリズムの瞬きで切り替える。

ややブルーグレーのフィルターがかった視野の先に、選択ポイントがあり視線を送ることで合図を送る。軌道上のプラットフォームゲートウェイ「オリオンV宇宙船」へと。

150年前、人類は初めて月面へ降り立った。

85年前、人類は赤い大地へ降り立った。

西暦2119年の現在は月面軌道上の基地を経由して太陽系惑星間旅行を開拓し、カッシーニの環までのプラネットトラベル及び現地アクティビティを楽しむ人々がいる。

地球上への深海アドベンチャーを好む人々、第二次火星基地建設ブームによる惑星間移住、衛星フォボスとダイモスへのアクセス旅行が人気プランとなっている。

トップランナーの日本を主軸にした国際探査機チームたちが火星と木星の間にある小惑星ベルト帯へと惑星起源の謎や資源を求めて遠隔採取をする一方、宇宙遊歩者と呼ばれる芸術家たちは単身用小型宇宙船クォークへ乗込み、イオン噴射のついた宇宙服を纏い、トロヤ群から好みのC型小惑星等を見つけ出すゲーム機のホログラムをアームバンドに設定しナビゲーターとして向かう。磁気センサーで衝突防止装置があるとは言え難易度の高いアクティビティだ。コンタクト型カメラに接続できる探査機からの鮮明な画像データの方が美しく立体化された映像が見えるにも関わらず、リスクを負ってまで見に行く前時代的な人々。口頭で小惑星番号を呟くか、好みの環境をオーダーすれば自動的にリアルタイムから好きな時代のデータまで再現してくれるにも関わらず。

そんな変わり者達をフォロー&ガイドするのが、ガモフJU42とカツヒコiPM 3K、綿あめの様な毛並みの月海ウサギ、ジャスミン999のチームだ。

2人と一羽に波長レターが届く。

 

 

 

文字数:2693

内容に関するアピール

今まで書いたものを連作のようにつなげようと思い、、
間に合わないですが短いまま提出します。
続きはどこかで最後まで仕上げたいと思います。

文字数:66

課題提出者一覧