梗 概
カッシーニから君へと届く物語
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カッシーニから君へと届く物語
我輩は探査機である。名はカッシーニR。
30年周期で太陽を回る。15年ごとに消失する環。
発見された衛星は合計82個で太陽系最多を誇る。
その中のひとつ、人気の衛星エンケラドゥスからひとつの小さな物語を。
巨大ガス惑星かつ美しい環を持つその天体に惹かれた月、その氷球の天体について語ろう。
地球と同じように惑星や衛星にも北極南極があり、ぼくは、いや我輩はオーロラを期待して観測していると漆黒の空にうっすらと美しく吹き上がるプルームを南極領域に発見する。そう太陽を観測している時に見られるコロナを想像するといい。または君たちの星にある火山から噴き出す蒸気。冷たい厚い氷に包まれた星から噴き出すホットスポットを発見したのだ。
ー氷の下の世界ー
「ねえ、わたしも早く空の隙間から顔を出してみたいの。それはいつ頃になるの?」
「まだ君の身体の生成が第3段階だからあと3つ終えてからだ。10キロメートル浮上するに耐えうるようにね。それにあの空の裂け目から出ると君の塩分濃度は減少していく。何層かに分けて蒸着してからになるよ。いいね。美しい姿のまま世界へ飛び立ちたいだろう?」
氷衛星が母惑星を周回する時に起こるほんのわずかな振動が起こるごとに、その身体に内部の岩石と熱水が反応し鉱物が生成されていく。熱水の熱源はエンケラドゥスの地殻の一部の岩石たちが見上げる空、白っぽい氷の向こう側に見える何か、裂け目から飛び出して行く変容した勇気ある冒険者たちの熱い泡がぷくぷく上昇していく様をずっとずっと憧れている想いが共振したものだ。母惑星土星の周回とリンクし続け15年に一度最大となる。
ナノシリカ、二酸化珪素の層を重ねて美しい球体、小さな泡を形成していく。水晶や石英、瑪瑙にオパール、透明性の高いものから、淡く麗しい乳白色のマーブル模様、シャボン玉のようなオーロラ色に移り変わりながら上昇していくのだ。その姿を生成していく為に地球時間での30年周期、15年ごとのタイミングで連結している岩石表面の一部のちいさなわたしたちは手を伸ばし繋ぎ合わせて変容の瞬間を待つ。
何度目かの振動に共振し変化し生成したわたしたちの思念が美しい球体となり10キロメートルの上昇と高鳴る心拍数と
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