梗 概
崇めよ我が名はRADIO!
少年時代、主人公の「観木彦」は叔父から手話を教わる。両手をグーにして上下する駄々をこねる赤ん坊のような動きの意味が自由だと知る。しばらくして叔父はテロリストとして逮捕され、殺人電波で焼き殺される。観木彦はそれがトラウマとなり吃音症となる。
知性を持ったラジオに支配されている世界。電波はすべてラジオに割り当てられ、違法表現などは常に盗聴システムによって取り締まられている。
そんな中で観木彦は800MHz帯でラジオパーソナリティをやっている。彼は、叔父のことと、吃音症が原因で、極超短波帯のパーソナリティに甘んじている。
しかし、彼は平凡な生活に不満を抱いておらず、帰宅後はRadicoでラジオを聞く模範的な市民だった。ラジオ以外の唯一の趣味は蟻の飼育。将来はもっと上位の周波数帯でパーソナリティを出来たらいいなと思うものの、今の生活で十分だと考えていた。
観木彦のラジオにネタを投稿していた電波系の少女「レイ」が接触してくる。
レイはテロリストであり、様々な非合法な行為の共犯者となることを強いてくる。
観木彦は平凡だったレイの父親が自分の叔父にそそのかされ不法行為に手を染め、処刑された事実を知り、負い目を感じる。一方でラジオ番組『聞いて観木彦』の聴取率が伸び、どうするか悩むが、とうとうテロの道に進む。
一方、上位のバンド帯で働いているオーソン・オーウェルは自分の番組の聴取率低下に悩んでいた。何か過激なことをやりたいのでアイディアが欲しいと尋ねてくるオーソン。観木彦はばれないよう不法行為を繰り返す中で、テロリストとしての才能が開花していく。
最終的にオーソンにばれる。しかし、オーソンはそのテロ行為を番組として街録しようと言い始める。
オーソンの筋書き通り観木彦は行動するが、それによってレイと仲違いする。結果的にレイが逮捕される事態となり、観木彦とオーソンはもめる。
しかし、観木彦は叔父の残していたテロ計画について気がつく。蟻だと思って育てていたキリギリスにバイオプログラミングで違法音声を記述し、ばらまくなどといった計画を実行し、偉大なるラジオ様を打倒。レイを救う。
今までの顛末がすべてラジオ番組で生放送されており、その制作にオーソンとラジオ様も関わっていたことがわかる。
オーソンやラジオ様から歴代ナンバーワンの聴取率だと称賛され戸惑うレイと観木彦。
ノイズの音と共にRadicoが起動し、全国に偉大なるラジオ様の声が放送される。
「この素晴らしい番組をぜひ再放送したいと思います」と言い、準備されていた観木彦とレイのクローンが登場する。オーソン、レイ、観木彦が困惑する一方、人々は「自由万歳、電波万歳、ラジオ様万歳」と斉唱。その様子がラジオで実況中継されている。
観木彦とレイは偉大なるラジオ様の殺人電波で焼き殺される。
観木彦は死ぬ瞬間アリとキリギリスの童話を思い出す。
文字数:1203
内容に関するアピール
本作は高度な知性と狂気を合わせ持つラジオによって支配されている世界を舞台とした古典的ディストピアSFです。
取材対象は「ラジオ・電波など」で、監視社会ではなく盗聴社会なレトロフューチャーを描いていきます。
本作をやろうと思った動機は幾つかあるのですが、一つ目は「なぜSF界隈はラジオをやりがちなのだろう?」という謎がきっかけでした。ダールグレンラジオ、読んで実木彦、創元GENESISラジオ、ゴッドガンレディオetc。
なぜこれだけ文明や技術が発展しているのにも関わらず、ラジオなのか?
「ラジオに支配されているディストピアなのか?」
「東海ラジオのコールサインがJOSF(通称SF)だからだろうか?」などと色々と邪推してみましたが答えはでません。これは取材するしかありませんね。
二つ目は、音楽をテーマに寄稿してほしいという依頼を受けたことです。「どうせなら課題もやりつつ寄稿もやってしまおうか」という人としてダメな発想から、「音楽だとあまりにも詳しすぎるテーマなのでラジオにしましょう」みたいな流れで「取材対象=ラジオ」に落ち着きました。
三つ目は三度の飯より好きなありがち過ぎる古典ディストピアSFの枠組みに、ありがちじゃないものをブッ込んでどこまで壊せるか実験してみたかったというのがあります。
やり尽くされた古臭いディストピアに、オールドメディアであるラジオをブッ込んだらどうなるのか?
「古臭いけど真新しくも見える狂気のディストピア」という奇跡のマリアージュが起こるのか。
B級ディストピア好きにとっては堪らないほど気になるのです。
実作はまだまだ取材が足りているとは言い難い状態ですので、ラジオ関係者から取材し、もしくはラジオ局に突撃し、ディティールを詰めようと考えています。また実作は筒井康隆とサウスパークと伊集院光のラジオを足して3で割ったようなブラックユーモアに満ちた文体、表現で彩ろうと考えております。
追記
ラジオを悪者にした作品を書くためにラジオ関係の人に取材依頼をしているわけですが、高確率でソシオパス扱いされるので、未だに成功しておりません。どなたかラジオの恐怖を描くためにご協力いただけませんでしょうか?
■参考文献
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井上伸雄『「電波と光」のことが一冊でまるごとわかる』(ベレ出版 2018年)
井上伸雄『「電波」のキホン 周波数帯の再割り当てで注目される電波の世界』(SBクリエイティブ 2011年)
沙村広明『波よ聞いてくれ』(講談社 2019年)
Dan Gelber, Greg Costikyan, Eric Goldberg, Allen Varney『パラノイア トラブルシューターズ・リトル・レッド・ブック』(ニューゲームズオーダー 2016年)
■取材先
未定
文字数:2091