【未完】コトトイ塚で、君を呼ぶ

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【未完】コトトイ塚で、君を呼ぶ

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コトトイ塚で、君を呼ぶ

 

 

■1.

 

 

 辞書が好きだった。

 昆虫の翅のような、うすい紙。そのおもてに羅列された記号の組み合わせが、どうやら世界の事象ひとつひとつと対応しているようだと気付いたとき、幼いわたしの心はとてつもない禁忌に触れた予感に震えた。この書物をよすがにすれば、世の万象すべてを理解し、また表すことができる……それはなんて恐ろしく、またなんて魅惑的なことなのだろう。

 だが、すぐに思い知る。

 あの日見た辞書に乗っていた「ことば」すべてを覚えても。

 そのあとの十年弱で目を通したあらゆる「ことば」を動員してさえも。

 世界どころか、自分自身のことでさえ、完全には描写しえないのだということを。

 

 だからこそ、わたしは――「ことば」を吐くことをやめられない。

 

 

 

 昼休みの校舎裏、敷地の内外を隔てる生垣に面した小さな花壇。右手の裏山と左手の建物に挟まれ、真昼でさえ色濃い影が落ちるその場所が、誰にも言えない「儀式」の舞台だった。一日を通して薄暗く、その割に校舎からの人目も遮れないこの場所に、好んで来る生徒はほとんどいない。さらに美化委員の仕事を口実に花壇を向けば、校内のどこから窺っても、わたしの背しか見ることはできない。入学後すぐ、入念に調べて見つけ出した定位置だった。

 明らかに咲くべき場所を間違えた萎れかけのサルビアに水をやってから、スカートに気を使いつつ、膝立ちになる。昨晩の雨がじゅっとにじんで肌を濡らし、不快な寒気が背筋を這う。教室に戻る前に、きちんとハンカチで拭いておかないと――そんなことを思いながら、手早くすませてしまうために背を丸める。

 はじめるには、両手を本でもひらくようにして、口の下にかざすだけでよかった。それを合図として、腹筋が条件反射で力み、喉の奥が沸き立った。意志とは無関係に漏れる呻き声。その直後、それは口から押し出された。

 黒い、砂。

 液体と見間違えるほどにこまかい、月の砂にも似た粒子。校舎の影よりもなお黒い一条の流れが、喉の奥から湧き出て落ちる。それはかすかに震えるわたしの両手を塗りつぶし、円錐の小山となって頂点を伸ばした。砂が零れ落ちないよう、吐きながら両手をお椀のような形にして、成長し続ける砂山を抱き留める。

 いつも十秒ほどで、発作は収まる。砂の流れがじゅうぶんに止まったのを見届けてから、わたしは荒くなった息を整えた。吐くのが辛いと泣いていたのは何歳までだったろう。あのときは盛大に流していた涙や鼻水も、いまでは目じりに小さなしずくがひっかかるだけ。小さな咳を、ひとつ、ふたつ。それでもう、平静な心が戻ってくる。

 手にうけた砂山を見た。

 確かに自分の体から出てきたものなのに、それはいつだってひどく無機質に見える。温度も、湿度も、やわらかさもない。一切の光を反射しない黒山は、まるで見知らぬ他人のような顔をして、皮膚との断絶を主張し、体温の交わりを拒んでいた。

 だけどわたしは知っている。

 それが紛れもなく、自身から出たものであることを。

 てのひらに積もった山が、かすかにふるえた。リーンという、鈴虫のような共鳴音が響く。山の表面が毛羽だち、そして渦を巻き始める。磁石にたかる砂鉄のように。不可思議な法則に叱咤された粒子たちは、凝視するわたしの目の前で、ねじれ、離散し、かと思えばふたたび急に凝集して、少しずつ明瞭な輪郭をまとってゆく。

 ……やがて、わたしの手のうえに、いくつもの小さな立体が残された。

 その形に統一性はない。あるものは球であり、あるものは上端が緩やかに広がっている角柱。また別のものは、雪の結晶を立体に起こしたように、六角柱の表面を、内側に向かって相似形に折りたたんでいくような構造をしていた。だがいずれも共通しているのは、それらの外形が蔦のような黒い線によって編まれているという点だ。

 この瞬間が、いつだって忘れられない。

 ため息が漏れる。

 頬が熱くなる。

 そのうちのひとつを指先でつまみあげ、いまにも崩れそうなほど精巧な模様を目でなぞり、そっと指をすべらせて凹凸を確かめた。幾重にも重なった線が、それらが織りなす立体の稜線が、そのひとつひとつすべてが、確かにわたし自身をあらわしていることを確かめた。この小さな立体に込められた意味と、わたしの脳裏にある鮮やかなイメージとが、ズレなく完全に結合する感覚――

 ああ、これだ。

 わたしは目を閉じ、その確信を、納得を、飴玉のように何度も反芻する。

 

「ことば」だ。

 わたしだけの。

 

 この角柱は、不意に雨あがりの空が目に飛び込んできたときのおどろきを。

 その球は、談笑の中にいて、ふと目の前に見えない幕が降りたように感じた瞬間を。

 この棘だらけの多面体は、それら一切を伝えようとして伝えられないもどかしさを。

 日本語でもない。ましてやどこの国の言葉でもない。これまでの歴史にも存在せず、どんなふうに発音するのかもわからない。けれど確かにそれは、わたしが見たあの風景や、わたしが感じたあの気持ちを、どんな辞書よりもずっと正確に描写してくれていた。

 ひととおり感触を楽しんでから、花壇の煉瓦のうえに「ことば」を並べた。それぞれの順番を替えたり、置く角度を変えてみたり、上に重ねたり上下左右に置き換えたりして、より適切な「文章」を作るのだ。日記のようなものだった。見たこと。感じたこと。思ったことのすべてについての精確な表現を作ろうと、吐き出した「ことば」を使って試行錯誤する。

 ずっと昔から変わらない。

 辞書をむさぼるように読んでいた、あのときと。

「ことば」を使って世界を切り分け、取り込み、表現する。その興奮と高揚――

 

「あれ、ハク?」

 

 弾かれるように立ち上がった。

 かばうように「ことば」を背に隠して振り返ると、面食らったような表情が目に入る。

 同じクラスの備海(びかい)くんだった。

「いや、ビビりすぎだろ」

 苦笑にあいまいな笑みを返しながら、肺にため込んだ息を、気付かれないようにゆっくりと吐く。「ことば」はちゃんと隠せているだろうか。立ち上がった膝裏のあたりにあるはずのそれを意識すると、皮膚がちりちりとかゆくなるような感覚がした。

「どうし、たの」

 言葉を絞り出すと、備海くんは「どうしたっていうか」といったん視線を外してから、「そもそもきょうの当番、俺じゃん」と言う。

「むしろなんでハクがいんの? って思ってさ」

「え?」

「いやまあ別に、こっちは助かるから別にいいんだけど……」

 頭の中に、昼休みの水やり当番表が思い浮かぶ。わたしは火水金で、備海くんが月木。きょうは確かに火曜で――というところで、

「あっ」

 気が付いた。

 月曜日が祝日で休みだったから、備海くんがきょうは月曜日だと勘違いしているのだ。

「ん?」

 だけどそれを伝えようとした瞬間、わたしのことばは喉の奥で引っかかって止まる。言おうとしたことが、いざ音に変換しようとした瞬間にほどけて消えてしまう。

「どうした?」

 伝えようとする。

「あっ」

 備海君が曜日を勘違いしていて、きょうは火曜日だということ。

「えっと」

 だからわたしがここにいることは別に問題ないということ。

「……」

 ただ別にそれは備海くんの発言を否定したいわけではなくて、ただ事実として違うということを伝えたいだけで、だから気にしないでほしいということ。

「どうした?」

 それから、さっきびっくりしたのは後ろから急に声をかけられたからで、でも別にそれは備海くんが怖いとか嫌いだからというわけではなくて、単純にまさか声をかけられると思っていなかったからだから、気にしなくても大丈夫だということ……。

 だめだった。

 いつの間にか怪訝な表情になっている備海くんを前にして、わたしの口は溺れかけた魚のように開閉するだけだった。

 頭に渦を巻くいろんな考えがまとまってくれない。形になってくれない。

「ちょっと備海!」

 重たい静寂を破ったのは、わたしでも、備海くんでもなかった。

 上から降ってきた声の主を、わたしと備海君は、同時に見上げる。

「またハクのこといじめてんの?」

 クラスメイトの智詠(ちよ)が、校舎二階の窓からこちらを見下ろしていた。眉間にすごい数のしわを寄せて、備海くんをにらみつけている。

「いや待てって。俺はただ、月曜が当番だからここに」

「きょう火曜じゃん」

 指摘されてすぐさま、備海くんは「あっ」と気が付いたようだった。こっちに気まずげな視線が向き、わたしはうつむく。

「ほら怖がってんじゃんハクが。謝んなって!」

 大声で責め立てられ、備海君は苦り切った顔をした。

「悪い。俺が勘違いしてた」

「あっ、」大丈夫……と、とっさに言おうとした言葉もまた、形にはなってくれない。いままでの文脈を踏まえて、なにがどうして大丈夫だということなのか。その微細なニュアンスを考えた瞬間に、喉の奥で言葉が霧消してしまう。

 うつむいて、首を振る。それができる精一杯。

「あんま迷惑かけんじゃねえよ!」

「……うるせえな」

 上からわめく智詠に、備海君は小さく舌打ちをして、

「悪い。じゃ、あとよろしく。……あとその膝、ちゃんと拭いたほうがいいよ。めっちゃ土ついてるから」

 そう言って、足早に校舎へと引き返していった。 

 ……ぴきん。

 その背中を見つめるわたしの後ろで、甲高い音がなった。

 振り返ると、並べた「ことば」のほとんどが砕け散って、黒い砂に戻ってゆくところだった。まだ形を保っているいくつかを掌でころがしているうちに、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。わたしは残った「ことば」と砂を一緒にして、花壇の土に埋めた。吐き出したばかりの胸の裡に、はやくも澱のように感情が積もっていくのを感じながら。

 けほりと咳をまたひとつ。

 萎れたサルビアが、わたしの目の前でうなだれたまま揺れる。

 

 

「十歳以降も砂の吐き戻しが見られる児童は、薬物による治療の対象となります」

 担任からそう聞かされたときの衝撃は忘れられない。

 治療されるとはつまり、奪われるということだ。あの「ことば」の数々を。世界の在り方を鮮やかに教えてくれる、美しいオブジェを。

 それはわたしにとって、とても耐えられることではなかった。

 心配するようなものではありません。適切な治療を受ければすぐに治りますから――動揺する両親を教師がなだめているころにはもう、決意を固めていた。

 欺く日々がはじまった。

 もらった薬は、飲むふりをして捨てた。

 人前で吐かないように訓練した。

 吐いた「ことば」も(本当はとっておきたかったけれど)すぐに捨てるようにした。

 ずっと聞き分けのよい子どもだったから、誰もわたしのことを疑わなかった。

 口下手でおとなしいけれど、素直な子。

 そんな印象に隠れて――

 十四になったいまでも、わたしは「ことば」を吐き続けている。

 

 

「あー、めっちゃ寝た!」

 智詠は講堂から出るなり、そう言って大きく伸びをした。そのすぐ後ろに立つ澤(さわ)先生がうんざりした表情でにらんでいたので、小さくつついて知らせてあげる。

「やば」

「遅いよ、気付くのが」

 白髪まじりの鬢をおさえて、先生は重たい溜息を吐いた。

「あのな乃村。そういうのは俺がいないところで、こっそり言え。わざわざ時間を作ってもらってるんだからな」

「はーい、すみません」

 元気に返す智詠に、先生は心底うんざりした表情をし……たぶん彼女に言っても無駄だと思ったのだろう。一年生たちに片付けの指示をするため、講堂へと戻っていった。

 先生の視線が外れるやいなや、智詠が口許を耳に寄せてくる。

「だってさ、面倒じゃんね? 毎年同じ話でさ」

「あっ、うん」

「まあハクは真面目だから関係ないか。わたしと違って成績もいいし。わたしはダメだなあ。頑張って黙ってようと思ってたら、どうしても眠くなるんだよね。ていうかみんなどうやったらあの暗い中で二時間ずっと起きてられるんだろ。ねえ?」

「えっ、あっ」

「でもさ、見たよね? 横に立って見張ってた澤先生も時々……」

 講堂から校舎までをつなぐ渡り廊下を歩きながら、智詠はわたしの返事なんておかまいなしに話し続ける。わたしに対してもそうだし、わたし以外に対してもこんな調子。だから人懐こい割に女の子の友達は少なくて、同じようにクラスで浮いているわたしと一緒にいる時間が多くなった。

 自分にとっても、彼女といるのは気楽だった。黙って聞いているだけでよかったから。

「てかあの人らも毎年、よく来るよね。三番目に話したおばさんとか小学校のころから皆勤賞じゃん。なんだろ、大変だったってのはわかるけど、わたしたち生まれる前だしなんかピンとこないっていうか。超能力? 病気? ノージョナントカ? って言われても、難しくてよくわからんし。あれってさ、要するに……」

 止まらない智詠のおしゃべりと、教室へ戻る同級生たちの雑談。わたしが決して交わることのできないノイズの海。ふと周りの音が遠のいた気がして顔を上げれば、裏山から吹き下ろした風がわたしたちの間を通り、西側の校庭へ、その先にある落下防止のフェンスの向こうへと抜けていった。その先にはいっぱいの海が広がって、午後の陽光を散らしている。

 あと二時間もすれば、赤い太陽がそこに沈んでいくさまが見えるはずだった。

 二十年前まで、わたしたちの島は「房総半島」と呼ばれていた。

 海向こうにかすむ本土とは地続きで、大きく弧を描く内湾の手前にはかつて、この国でいちばん大きな街があった。

 いまでは祝日となっている五月三十一日に、きれいさっぱり消えてしまうまでは。

 智詠の言う通り、実際に経験していないわたしたちにとって、それは昔話の絵本のように現実感のない話だ。毎年のように聞かされる体験談も、ウェブ上にあふれる当時の動画も、ニュースが語るいろいろな統計の数字も、嘘の上塗りのように白々しく見えた。

 だけど、確かに、それは起きたのだ。

 その名残りは確かに残っている点在する「塚」。子どもらの吐く「ことば」の砂。

 それから……。

「げ」

 不意に上がった智詠の声に、我に返る。

 彼女だけではなかった。いつの間にかあたりは、不穏なざわめきに包まれていた。いくつもの人差し指が宙を泳ぐ。その先が指し示す先をなぞり、そしてわたしは、裏山のふもとにたつ人影を見た。

 西へと傾き始めた陽光が、雑木林のすそから伸ばす影。その突端の境界に、それはじっと立っていた。

 鴉のように黒い襤褸。荒れた髪はうなだれた前方に垂れてその目元を覆い、鼻のところで割れた髪の隙間から、口から顎にかけて巻かれた、ぼろぼろの包帯が覗く。

 はるか先に対峙しているだけなのに、鳥肌が全身を襲った。

 それは厄災の落とし児たち。彼らは災害の跡地である「塚」を不法に占拠し、定期的に――とくに五月三十一日の前後に、活発に街を徘徊する。小さなこどもが追いかけられ、ついにはさらわれてしまう話は、幼いころから聞かされた怪談では定番のエピソードだった。

 かつての災害の恐ろしさを、わたしたちは大人からではなく、彼らから学ぶ。

「……棄言(キグサ)」

 どこからともないささやきが影の名を呼び、興奮したささやきが、そのあとに続く。

「なんで」

「どっからきたの」

「裏山の向こう?」

「言問(こととい)塚か」

「てかやばくね、こっち見てる」

 発されたそばから、声はまるで無響室にでもいるように、どこか別のところへ吸い取られて消えていく。智詠も、そのまわりの生徒たちも、興奮して口を動かしているはずなのに、押し殺したささやきの声は、彼らの意に反してますます小さくなってゆく。

 一切の言葉を捨てたかれらは、向き合った相手からも言葉を奪う。道を歩いていて、急にまわりの音が消えたら注意しろ――それが大人たちから受ける注意だった。あんまり長く近くに居ると、すべての言葉を奪われてしまうのだと。いちどテレビで、保護されたこどもを見たことがあった。唇が紫になるまで噛みしめ、まるで最初から喋る器官などは存在しないかのように、何を問われても頑なに口を開こうとしない少年を。

 彼が元どおり言葉を取り戻すには三か月を要したと、そのニュースは伝えていた。

 不意に、うしろから制服の裾を強くつかまれた。

 同時に、押し殺した声が、耳元でかすれる。

「どうしよう」

 智詠はふるえていた。

「目……あったんだけど」

 大丈夫。そう言おうとしたのにやっぱり言葉が出てこなくて……かわりにわたしは、智詠のうつむいた顔を見つめ、彼女のてのひらに、自分のてのひらをそっと重ねる。

 ――突然、みえないなにかが、わたしの背を貫いた。

 氷の牙を突き立てられたように、心臓が縮み、息が止まる。声にならない悲鳴をあげて、智詠がわたしにしがみつく。

「やばい、見てる……こっち、見てる」

 涙声になる智詠の声を聞きながら、わたしは心の裡でその台詞を否定する。

 直感していた。あれが見ているのは彼女じゃない。

 わたしだ。

 そう思ったとき、胸を締め上げていた感触が嘘みたいに緩んだ。解放されたわたしたちは、溺れかけた後のように空気を貪る。

 顔を上げると、講堂のほうから走ってくる澤先生が視界に映る。

「ハクちゃあん!」

 声を取り戻した智詠が、大声をあげて抱き着いてくる。

 それを合図に――音が戻ってきた。

 やっべえ、やっべえ、と繰り返しあう男子たち。うずくまって泣き崩れる女子たち。先生が落ち着いて講堂に戻れと叫び、前を歩いていた生徒たちが逆流してどっと押し寄せてくる。もみくちゃになっても強情にしがみつく智詠が、涙声で繰り返す。

「めっちゃ怖かった……マジで、言葉が盗られたかと思った」

 ……その言葉に、わたしの息が、止まる。

 とられる。

 ことばが。

 さきほどまでの恐怖が嘘のように、勢いよく振り返る。

 そして見た。

 人垣の向こう。わたしたちの喧騒を尻目に、校舎裏のほうへ消えてゆく棄言(キグサ)の姿を。

 急に立ち止まったわたしの両横を、迷惑そうな顔をした生徒たちがすり抜けていく。

「……ハク?」

 問いかける智詠に応じる余裕はなかった。

 不気味な視線。

 あれが立っていた場所。

 言葉を奪う人々。

 向かうその先にあるもの。

 ……わたしの「儀式」。

 さまざまな断片が嫌な予感で結びつき……額からいやな汗がにじむ。

「ハク? 早く行こ」

「……ごめん」

 あれほど出すのに苦労していた言葉が、淀みなくこぼれた。

 戸惑う智詠を振りほどき、わたしは人並みに逆らって渡り廊下を進みはじめる。

 校舎のほうへ。

(未完)

 

文字数:7621

内容に関するアピール

アピールというか言い訳というか。すみません間に合いませんでした。それでも参加した以上は恥を晒すことになっても提出すべきと考え、公開します。

SF創作講座を通じて思ったのは、一人暮らしという環境と時間の確保の大切さでした。

うまいとかへたとか以前の問題……。

とりあえず仕事に戻ります。すみません。

文字数:145

課題提出者一覧