梗 概
邪神天皇
その生命体は居場所を求めて宇宙を彷徨っていた。
自分が存在しているという意識はあるけれど自分がどんな姿形をしているのかは分からなかった。
何故、自分が存在しているのか、その理由も分からなかった。
とにかく何処かに辿り着きたい、自分がやりたい事を成し遂げたい、という執念の塊だった。
やりたい事?それは何だ?その生命体は自問自答した。それも分からなかった。
その生命体はある星に辿り着いた。そしてその星の生命体の姿になった。ここが自分が求めていた場所なのだろうか?ここでなら自分がやりたいことができるのか?生命体はそんな疑問を抱きながらもこの星を自分の居場所に決めた。
それから長い時間が過ぎていく。
宮坂ヒロは40歳のごく普通のサラリーマンだったけれど彼の会社は倒産してしまった。12月の寒空のした彼は無職になった。
年が明けて平成31年。ヒロは心機一転して再出発しようと思い、初めて一般参賀に参加しようとして皇居に向かっていた。平成最後の一般参賀に参加しようとする大勢の人ごみの中をヒロは歩いている。すると突然、激しい頭痛に襲われ人ごみの中で気を失う。
ヒロは意識を取り戻す。どれくらい気を失っていたのか分からなかった。あれだけいた大勢の人達はいなくなっている。ぼんやりする頭であたりを見回すと、そこは確かに皇居のようだったけれど見たことのない大きな城が目に入った。
「そこにいては危ない!」背後から女の声が聞こえた。ヒロの頬を鋭い風がかすめて痛みが走る。指先で触れてみると血。「こっちへ!」女の声が近づきヒロは右手をとられて引っぱられるようにして走った。
振り向くと何本もの矢が襲い掛かってきていた。ヒロは隠れ家に連れてこられる。そこには数十人の人々がいた。
その中の一人からヒロは話を聞く。
この世界の日本は戦争に負けなかった。だから天皇も国民の象徴になっていない。
現人神のままだった。
しかし、神は神でもその神は、人々に対し天災や疫病あるいは戦乱などの災いをもたらす邪神だった。
邪神が人の姿をして天皇になっていた。
日本国民は邪神天皇を崇め奉り、邪神天皇の命令に背くことはできなかった。
邪神天皇は江戸城天守閣にいる。
この世界では江戸城天守閣は火事で燃えていなかった。
日本は世界を征服して、世界の国々は日本にひれ伏していた。
邪神天皇はそれほどまでに世界中の人々から恐れられていた。
邪神天皇は宇宙生命体らしい。日本がまだ倭国で卑弥呼がいた頃に地球にきたらしい。
そして、神武天皇を倒して自ら天皇になり日本を支配し世界を征服した。
そんな宇宙生命体も永遠には生きられない。一つの生命体の寿命は100年くらい。
寿命がつきると生殖することなく自分一人で新しい生命体を生み出し邪神天皇の天下は何百年も続いていた。
邪神天皇は生まれ変わるたびに元号をつけていた。
その元号は人々を恐怖に陥れる言葉だった。
地獄・煉獄・磔刑・獄門・大獄・流刑・苦行・苦悶・悶絶・絶叫・叫喚
こんな世界でもレジスタンスはいた。彼等は革命を起こす機会を窺っている。
その機会は今まさに訪れようとしていた。今の邪神天皇が亡くなり新しい邪神天皇が生まれようとしている。
その生まれ変わるほんの短い時間だけ邪神天皇の力は無くなる。
宮坂ヒロはレジスタンス達と協力して邪神天皇を葬りさる。
そして宮坂ヒロは元の世界に帰ることができる。
文字数:1398
内容に関するアピール
現在の日本の天皇は人間宣言をして国民の象徴になりましたが、
天皇が現人神のままでいる日本を想像してストーリーを作りました。
その神は邪神です。
邪神が人の姿になり天皇になって日本を支配しているパラレルワールドに入り込んだ男の話です。
邪神天皇を不気味に描きたいと思います。
無職になってしまった男が、邪神天皇を倒すことにより力を得て、
元の世界に戻ってきて再出発できる、希望が持てる話にしたいと思います。
文字数:196