梗 概
重力解の向こう側へ
Ⅰ
宇宙がブラックホール内の存在でバルクに覆われ空間的端が存在する。今やそれは標準学説であった。内側にあるのは銀河だけであり、我々はそこに閉じ込められている。静止して見えるとはいえ外が観測出来るのは謎であった。だが光が超空間的な性質を持ち、重力解を跨いでも屈折しその重力解に適応して直進すると祖父が証明した。人類の平均寿命は500年となっていた。
世間に宇宙の崩壊を警告した学者の父に連れらて移住した。学期の移り目に、友人達に別れを告げる間もなく急に寂れた土地に移住することになった。子供であるリヤナにも父が中央を追放されたと分かった。
人類発祥の地のとの伝説を利用し、かつては観光で賑わったらしい。何世代前に自分たちの星系を「太陽星系」と唯一の天然居住可能惑星を、古い言葉での「つちくれ」という語を当て「アース」と改名していた。天王星圏でそれらを事実と教育される。その歴史に異議を唱え、級友と喧嘩した。その日、既に故人であった母に続いて、父も急逝してしまう。
Ⅱ
リヤナは太陽星系の執政官に任命された。中央にいた頃の友人にも引き立てられた。だが一番の理由は父の学説と警告の正しさが証明されからだ。つまり銀河中央での宇宙の変調が原因である。喧嘩した級友は私を支えてくれ、今や夫である。息子がいるが多忙で手をかけてやれない。
リヤナは父が残したプランで太陽星系を救う手筈を検討していた。太陽を囲むダイソン・スゥオームをエネルギー源に星系全体を覆うフィールドを生成。アルクビエレ・ドライブを用いて、宇宙の端を越え、親宇宙へと脱出するのである。猶予は200年ほどの計算だ。成功すれば他星系も倣うかもしれない。
執政官として太陽星系を率いて進める。だが計画に従事していた夫を亡くし失意に沈む。成長した息子の励ましで、執政官として旗振りを再開する。それ以降この星系が人類発祥の地であると信じることに決める。苦難の末、太陽星系を銀河の端、宇宙の果てに航行させる。宇宙の越境も成功する。
Ⅲ
アルクビエレ・ドライブをこちらの重力解に適応させ中間領域であるブラックホールから逃れる。
親宇宙に出ると深淵なる何もない空間。孤立ブラックホールと太陽星系が隣り合う。はるか遠方に数多の銀河。調査すると外の世界は静止している。重力解を越えたためフィールド外内で時間軸がことなるのだ。
太陽星系の大学教授となった息子は言う。
「悲しむことはない。特定の時空領域の重力解を、量子情報のホログラフィック再構成によって別の時空的解釈に変換できないかを研究してる。時間軸そのものをエントロピーの流れの向きとして再編成するんだ。そうすればフィールドなしに親宇宙に存在できるワケ。僕の孫が成し遂げるかもしれない」
息子の理論は分からなかったが「生命も光も必ず道を見つけ出す」祖父の言葉がリヤナの頭によぎる。我々はまだこちら側にいるのだけれど。
文字数:1200
内容に関するアピール
◆PR
晴れ渡る空に輝く太陽は何もかも解決してくれます!!
◆お題への応答
銀河全域で文明が発達した場合、
物流の関係で寂れるであろう太陽系を選びました。
太陽星系と表記し未来の制度の命名から来る違和感を表現しています。
◆宇宙の変調
仮設定
時空が確率論的に崩壊し存在の連続性が失われていくエントロピック・フォグ。
リヤナの父は銀河中央を観測してスペクトル異常を空間の変容と推定しました。
◆太陽星系・アルクビエレ・ドライブ
ダイソン・スゥオームのエネルギーは、
推進装置やフィールド発生装置に対して量子エネギー転送さます。
アルクビエレ・ドライブはWikipedia参照ください。
◆演出プラン
太陽星系の移動を描写。
アルタイルやベガをかすめ、銀河の果て宇宙の外へ向かいます
ブラックホールの重力圏を太陽星系が振り切って脱出します。
文字数:352