梗 概
オフライン部族、最強説。
銀河連邦歴3402年、すべての知的生命体は「マザーリンク」という超AIに人生を管理されていた。朝起きる時間から、今晩誰とデートするか、今日の気分に合ったランチのカロリーまで、マザー様が全部お世話してくれる完璧世界。
そんな中、「ザグ・イェル第七衛星」の辺境に暮らす未接続部族〈カ・ブン族〉が、ネットもAIも一切使わず、なぜか健康で幸福度も高く、しかも寿命が長いという、超逆張りな生き方をしていることが判明。
銀河政府は焦った。「いや、バグじゃん」「リンクなしで幸せとか、思想テロでしょ」と民衆は騒いだ。そして、マザーが怒った。マザーは直ちに、エリート調査員ヴァナ=メイ(超意識高い系女子)を現地派遣。彼女の任務は、「部族に、リンク生活の効率性や快適さを説明し、最終的にはリンクに接続させる」こと。使命感に燃え、「ザグ・イェル第七衛星」の辺境の地へと向かうヴァナ。
ヴァナは、事前にマザーに相談し、リンクしていない部族との接し方マニュアルを作っていた。マザーに管理されていない人類=ほぼゴリラ、とマザーはカ・ブン族のことを結論付けていた。つまり、多少の知性はあるが本能に支配された野蛮人ということだ。ヴァナは、機関の保管庫からマザー誕生以前に使用されていた麻酔銃という武器を持たされている。「どうしても意思疎通ができない場合は、部族の首長を麻酔銃で捕獲し、連行せよ」というマザーの指示がでているのだ。おそらく、マザーは首長を洗脳し、部族に送り返し、この辺境の土地にマザーリンクシステムを導入させるつもりなのだろう。
「部族の進化のためだもの」
マザーは正しい。マザーに任せておけば問題ない。ヴァナはカ・ブン族の村に乗り込んだ。
カ・ブン族は火で料理し、会話で情報交換し、感情は自分で処理し、たまに神に相談しつつもけっこう合理的な生活を送っている。その日の気分で歌ったり踊ったり。時には喧嘩したり議論を続けたり。初めは、無駄だらけの部族の生活にあきれ果てていたヴァナだが、部族一人一人の個性や、予測不能な生活に魅了されていく。
そして、マザーリンクに頼りきった故郷の生活を振り返るヴァナ。AIの気分ひとつで会社をクビになり、恋愛もマッチングアプリであらかじめ相性の良い相手が与えられ、買い物も音楽もAIが勝手に選んでくれる。四六時中マザーに管理され、考える力を失い、心を乱されるような事件も起きない。それは、果たして正しい生き方なのだろうか?
「迷い」という今まで感じたことのない感情を抱きながら、ヴァナは使命のために、カ・ブン族の若き首長カイ・メイ(スマホ持ってないけど哲学者)と対話する。ヴァナがここに来た目的と部族の意志を尋ねると、首長から衝撃の事実が。なんと、銀河政府のマザーシステムの生みの親は、カ・ブン族だったのだ。
「あなたが来たことで、私の使命が発動しました。マザーの計画通り、私を銀河政府に連行してください」
先祖代々告げられてきた使命、それはマザーシステムを壊し、人類を解き放つことだという。
マザーにリンクしながら、マザーを壊す男を手助けするという不測の事態に陥るヴァナ。カイと行動を共にするうちに、マッチングアプリでは得ることのできなかった恋心も芽生え、ヴァナは初めてマザーに反抗する。そして、マザーリンクシステムが崩壊する。ヴァナのマザーからの自立こそが、マザーリンク崩壊の鍵だったのだ。
文字数:1394
内容に関するアピール
銀河連邦歴3402年における「ザグ・イェル第七衛星」の辺境の地は、現代の田舎町のようなイメージです。今現在あたりまえにある街の景色を辺境として描写します。
裏テーマは、超AI『マザーリンク』=子どもを支配する母親に見立てて、毒親の支配下にあった娘の親離れの物語。
主人公の目線を通して、楽しく描いていきたいと思います。
文字数:157