都市よ、どうか優しくして

印刷

梗 概

都市よ、どうか優しくして

 舞台は日本のある地方都市。この都市では地方活性化の一環として、ヒトデータと呼ばれる、様々な住民の行動記録を集積し、都市の公共サービス改善への活用を試みている。主人公、麻美優斗はこの都市で暮らしながら、リモート環境を用いて、東京の会社で働いている。彼はここ一カ月ほど、現実とネットでの中傷に悩んでいる。ネット上に彼の不名誉なヒトデータが流出し、それがバッシングの対象となっているからだ。しかし、それらのデータは身に覚えのないものばかりで、何故そのようなものが流失しているか彼には分からない。バッシングが原因で、地元の有力者一族である婚約者に捨てられ、警察にも相談しているが、すぐには成果があがらない。麻美は状況を打破するべく、偶然知り合った探偵・佐久間探に調査を依頼する。物語は、麻美が改めて上記の状況を話し、佐久間の報告を聞くところから始まる。

 佐久間の調査の結果、麻美の元恋人、三上サラが容疑者として挙げられる。報告を聞き、麻美は、三上が別れた後も自分に付きまとっていたこと、それが原因で東京から転居した過去を話す。三上の行動を、佐久間は説明する。初めに、三上は、麻美の自宅から盗んだ身分証明情報を用い、代理人として、市が管理する麻美のヒトデータの参照権限を取得する。その後、セキュリティの甘い生成AIサービスに攻撃を行い、ヒトデータを材料にフェイク情報を不正に生成する。三上は、この工程をプログラム化し、コンスタントに大量のフェイクを発信していた。佐久間は、既に三上のアパートを見つけ、部屋の中で稼働していたサーバーを壊したが、肝心の三上は見つからず、まだ危険が無くなった訳ではないと結論する。佐久間と別れ、麻美が自宅で身の振り方を考えていると、インターホンが鳴る。

 物語は2週間前の、三上の視点に移動する。三上は、麻美を社会的に孤立させることで、自分以外の依り所を無くし、復縁を迫ろうと考えている。また、同時に麻美の婚約者・山本嗣音のフェイク情報も生成し、彼女を社会的に破滅させることで、自分のプライドを満たそうと考えている。しかし、山本の方は手ごたえが無く、訝しんでいると、突然山本から接触を受ける。山本は、すべての事情を知っていることを三上に教える。その上で、「都心の人気」と「土地に根差した利害関係」の違いを説き、三上のフェイク情報は、作りが粗く、ファクトと整合していないものもあり、麻美のような他所者の評判は落とせても、自分と地元民の間にあるような、強固な利害関係を壊せるものではないと言う。

 物語は、再び麻美の視点に戻る。インターホンを鳴らしたのは山本である。山本は、三上がこの町から出ていったこと、自分に新しい婚約者ができたことを伝える。その上で、麻美に愛人になれと言うが、麻美は拒絶する。山本は、自分には三上と同じことができる、と麻美を脅す。麻美は、しぶしぶこれを受け入れる。

文字数:1199

内容に関するアピール

この物語のテーマは生成AIです。最近は、生成AIが人間の仕事を代替えすることの是非についての議論が盛んです。そういった議論を聞く時、無邪気なAIの万能性が前提になっている気がするのですが、実際は現状生成AIにもハルシネーション等のリスクがあり、単体で仕事に用いるのは難しい場合があります。そのため、生成AIを万能な魔法ではなく、輪郭のある技術として描いてみたいと思い、生成AIを用いて無責任な人気を落とすことには成功するが、責任が伴う利害関係を壊すことには失敗するという物語を書きました。

2回ひねった部分としては、①身に覚えのない中傷情報が流出するが、それはソシオパスの元恋人の犯行だった。②しかし、今の恋人はもっと危険な人物だった、という風にまとめました。不明確な状況→解答という流れが肝になるので、実作では、前半の麻美と佐久間の会話は、実は麻美がクロだとミスリードするように書きたいです。

文字数:396

印刷

データドナーの肖像

 
※梗概の段階からストーリーを変えた為、梗概とアピール文は無視してください。
 
1
「本当に嗣音しおんは、生前データドナー登録をしていたのですか?」
「はい。3年ほど前ですが、ご本人様から申請をいただいた記録があります」
「何かの間違いではないでしょうか。妻が、そういったことを行うとは思えないのですが」
「そんなはずはありません。登録時から定期的に、肖像データも提供していただいております」
 そう言うと、クリニック職員の女性は、端末の画面をこちらに向けて、表示されているものが私に見えるようにしてくれた。ディスプレイ上には、確かに妻・嗣音の顔が年齢ごとに並んでいた。私はもっとも新しいと思われる顔を指さして、質問した。「これは、いつ頃撮影されたものですか?」
「丁度、一カ月前になります」
 ということは、嗣音が事故にあうわずか2週間ほど前の『顔』なのだ。
「電話では、妻の肖像データの保持に同意がいるということでしたね? もし私が同意しない場合は、どうなるのでしょうか」
「データドナーの方が亡くなってから、90日以内にご遺族の同意が得られない場合、提供された肖像データの利用を停止し、私たちが保持しているデータはすべて削除されます」
「そうですか」私は迷わず、自分の気持ちで応答した。「申し訳ありませんが、今後の肖像データの利用には同意できません」
「承知いたしました。それでは90日後、奥様の肖像データはシステムから自動で破棄されることになります」
「分かりました。それで構いません」
 席を立とうとすると、女性は1枚のパンフレットをラックから取り出し、私に手渡してきた。表紙には『肖像データの提供について』と書かれていて、鏡の前で悩まし気に自分の顔を見る男女の写真が載っている。
「もしも、お気が変わりましたら」
 正直、私は彼女を軽蔑したし、同じ状況で肖像データの提供に同意できる人間がいるというのも理解できなかった。愛する者の死後、その『顔』を是非ビジネスに役立てて欲しいという人などいるのだろうか。ただ、嗣音がどうしてデータドナーに登録したのか、それだけが気になっていた。

家に帰って、もらったパンフレットを読んでみることにした。美容整形における肖像データの利用は、数年前からよく耳にしていたが、詳細な内容は知らなかったからだ。
 個人の肖像データ──顔の3Dデータの提供は、全国の美容外科クリニックが申請の窓口を担っており、申請のあったものの中から審査を通ったデータが、管理を任されている法人のデータベースに登録される。それらは顔のモデルを生成するAIの学習データとして利用され、これにより作られたライブラリは、窓口を担当するクリニックならどこでも利用できる。このシステムを利用することで、クリニックは顧客からの抽象的な要望を入力するだけで施術後の顔の3Dモデルを取得することができ、顧客はそれを見て施術をするか決めることができる。
 女優だった嗣音のデータドナー登録は歓迎されただろうと思う。データドナーに登録したことを表明するタレントや、ネットの配信者は他にもいるし、そういった姿勢を好意的に受け取る声は多い。一方で、肖像データの提供を申請しても、審査を通らないという場合もある。要するに、申請者に対して「あなたのようになりたい人はいませんよ」という言葉を投げる可能性が、このシステムの前提にはある。臓器ドナーでも健康ではない臓器が提供できない場合があると、過激な発言をする者もいる。しかし、それならば健康な『顔』とはなんだろうか。 
 今時、十代で美容整形を受ける子供は珍しくない。そういった立場からしてみれば、私の考えは酷く時代遅れに思えるかもしれないが、外見の持つ印象がその人間の全てではない。はっきりと明言していた訳ではないが、嗣音も同じように外見重視の世相を嫌っているようだった。それだけに、何故、彼女がより人好きされる『顔』が出力されるために、自分自身がデータとして消費されることを選んだのかが分からなかった。
 私はSNSのアカウントリストを漁って、妻との共通の友人に連絡を取ってみることにした。嗣音のことは理解しているつもりでいた。しかし、彼女が私に何も言わずにデータドナー登録をしていた以上、その考えは改めなければいけなかった。私が知らない妻の側面があり、それをどうしても知りたいと思った。
 
2
 私が連絡を取れたのは、嗣音がアマチュアの劇団に所属していた時の劇団員仲間で、三上沙耶という女性だった。彼女は、今は劇団を辞めてメイクアップアーティストをしていたけれど、たびたび嗣音と会って悩みなどを話し合っていたことを聞いていた。彼女の家の近くのショッピングモールに入っているフードコートで待ち合わせていると、三上さんは先に来ていた。嗣音抜きで彼女と話すのは、嗣音の葬式の日を除けば、これが初めてだった。
「嗣音の葬儀以来ですね」
「はい。あの、嗣音があんなことになってしまって、麻美さんは大丈夫ですか」
「とりあえず、事故の直後よりは落ち着いてきました。それで、いきなりなのですが、連絡させていただいたことについて話させていただいてもよろしいでしょうか」
「嗣音がデータドナーの登録をしていたことですね。私も知りませんでした」
「何か、思い当たることはありませんか。その、つまり、嗣音がデータドナー登録をしていたことが、私には信じられないんです。どちらかと言えば、妻はああいうシステムを嫌っていたように思うんです」
「私もそう思います。ただ、一つだけ思い当たることがあって」三上さんは、私の顔を見て躊躇いながら、申し訳なそうに口を開いた。「嗣音の仕事が減ってきていたのは、ご存じですよね。それには理由があって、嗣音の顔立ちが、今の流行と合わなくなってきていたからなんです。今のアイドルや役者の顔って、美容整形に対するハードルが低くなってきたこともあって、本当に専門化してきているんです。ティーンエージャーをターゲットにした映画ならこの顔の役者を集めて、中年の独身女性をターゲットにしたアイドルならこの顔で、家族全員で応援できるダンスグループならこの顔で、みたいな感じで。嗣音はずっと若い層をターゲットにした映画やテレビシリーズでキャリアを積んでいましたけれど、今の若い人たちには彼女の顔立ちは時代遅れに見えるんです」
 三上さんの言うことは、なんとなく分かるような気がした。嗣音はどちらかと言えば、東洋風の控えめな顔立ちで、10年前はそのような役者をよく目にした。しかし、この2,3年は、どの映画でもヒロインを務めるのは彫の深い派手な顔立ちの女優たちだった。3年前──嗣音がデータドナー登録した年だ。
「しかし、それがデータドナー登録と何の関係が?」
「謝礼金を出して、AIの学習データとしてタレントの肖像データを集めているクリニックが幾つもあるんです。要するに、データドナー制度の皮を被った肖像データの売買で、本来は禁止されていることなんですけれど」
「しかし、嗣音の顔は時代遅れだったんでしょう。それでも彼女の肖像データを買いたい人がいるのですか?」
「嗣音は──もっと言えば、嗣音のような顔立ちは──一時代を築きましたから。カッコいいとか、キレイとか、可愛いみたいな価値観って、10歳から25歳くらいまでの間に見たものに、特に影響を受けるんです。例えば、分かりやすい例が髪型です」そう言って、三上さんは、私の端々が尖った髪型をじっと見る。「私の時はこれが流行っていたんです。確かに、今の十代の子達は、間違ってもこんな風にはセットしませんね」
「同じように、今の30歳前後の女性には、嗣音の顔立ちは需要があります。そういった女性をメインターゲットに据えているところであれば、嗣音の肖像データにお金を出したと思います」
 要するに、消費者側の世代交代によって減った収入を、かつて自分に夢中だった女性たちに『顔』を売ることで補填しようというわけだ。その計算高さは、私の持つ嗣音のイメージとは真逆だった。三上さんは、私の心中を察したように付け加えた。
「仮にそれがデータドナー登録の理由でも、嗣音は好きでそうしたかったんじゃないと思います」
「私も、そうあって欲しいです」

 あの日、嗣音はほとんど内定していた映画の役が、急に別のタレントに変えられてしまったことに怒っていた。普段の彼女なら開き直って、別の機会に目を向けるのだが、この時は半年ほど新しい仕事が得られておらず、昔出演した舞台の再演や、連作映画の続編といったポジションで女優としての仕事を続けていた。嗣音はそれが不満だった。
「なんであの子が選ばれるの? 演技はダメ、遅刻はする。ていうか、そもそも役者じゃない」
 私は連日嗣音の不満を聞くのに疲れていた。初めの内は、彼女の不満が終わるのを待って私は特に意味のない励ましの言葉をかけ、嗣音は納得すると言う流れで終わることが多かった。しかし、この頃になると、私が言葉をかけても、それが無意味であることを察知して、今度は私に怒りを向けるようになっていた。
「正直さ、もういいんじゃないかな」
「いいって何が?」
「辛いことしか起きないなら、今の仕事を続ける意味はあるのか?」
 あの時、嗣音が何を考えていたのかは分からない。
「私は、この仕事が好き。ムカつくことがあっても、役者として生きていたいの」
 この日から、嗣音が家で仕事の不満を口にすることが減っていった。状況が改善したわけではなく、私と言い合いになるのを避けたかったのだと思う。代わりに、友達との長電話と外出が増え、不満はそちらで吐き出されているのだろうと私は想像した。
 そして、それからしばらくすると、嗣音は家で仕事の話をすること自体をキッパリと止めた。夕食の時、私がそちらに話を向けると、彼女は少し笑って、飲み物を取りに席を立つようになった。これが自分たちの新しい不文律だと理解したのは、それからすぐのことだった。
 
3
 ゲーテの「若きウェルテルの悩み」が大ヒットした時代、多くの若い人間の間でウェルテルという人物は理想化され、その服装を真似る者や、挙句の果てにはウェルテルの様に自殺するものまでいたという。同じように、誰か理想となる他人のイメージ──たとえ、それが企業や社会規範によって、あらかじめ用意されたイメージであったとしても──を持ち、とりあえずその真似をしてみるというのは、私たちの多くが経験していることだと思う。だからこそ、企業は人気のあるタレントを広告に起用する。実際、嗣音も何度か化粧品のCMのオファーを受けたことがあった。
 先日から、あるハリウッドスター女優の肖像データを巡るニュースが世間を騒がしている。彼女は、長期的に自分の肖像データの提供を受ける権利を競売にかけ、結果、大手製薬会社がその権利を獲得した。大方の予想通り、この件はルッキズムを助長するとして、さっそくネット上で炎上している。しかし、長い目で見れば、件の企業は美容整形分野での利益を増加させるため、賢い選択をしたのではないかと私は思う。この女優の肖像データが実際にどの程度AIの学習に影響するのかは分からないが、公の場で購入した事実は、それがそのまま企業のブランドイメージにつながるからだ。今後、この企業で美容整形を受ける顧客は、AIの中でどのような美的基準が育っているのかを考えるのではなく、映画館やストリーミングサービスでいつも見ている女優の『顔』を想像することになるだろう。
 この女優が行ったことと、嗣音の化粧品のCMはほとんど同じことのような気がする。どちらも、自分に憧れている誰かに向けて「私の様になりたくない?」と言っていることは変わらないからだ。そうであるならば、嗣音が自分の『顔』を売るのは、今に始まった話ではないということになる。ただ、テクノロジーの進歩によって、化粧品を真似るだけでなく、『顔』も簡単に真似られる時代になったというだけの話なのかもしれない。
 嗣音の知人に話を聞いていく中で分かったことは、今はタレントや役者が、カメラの前で動く機会が極端に少なくなっているということだ。短い広告動画や、映画のモブシーンであれば、演者の外見をフォトグラメトリーで再現して生成AIに与え、出力されたものを人間が編集する、という工程の方が効率的なのだそうだ。嗣音の先輩にあたる役者は、その内、カメラの前や舞台の上は、表現を見せる場ではなく、自分の肖像データにどれだけ商品価値があるのかアピールする見本市のようなものになる、と不安視していた。
 私には、この様な流れは受け入れられない。だから、嗣音の肖像データの保持について同意する気もない。しかし、それは時代の転換期で困惑している、ただの頭の固い人間というだけのことなのかもしれない。私が生まれる前から、容姿であれ、振舞いであれ、イメージを提供するアイコンであることは、役者の仕事の1つだった。データとAIの利便性が声高に叫ばれる今の時代に、アイコンであることの比重が増えるのは理解できることだ。嗣音の内面を勝手に慮って、彼女のデータドナー登録を疑ったが、彼女は賢明に変化していく時代に備えていただけなのかもしれない。

映画制作への生成AIの導入が本格的に検討され始めた頃、多くの役者は自分の肖像データを提供するか、別に副業を見つけるかの選択を迫られた。当時、嗣音は役者としての仕事をそれなりに持っていて、肖像データの提供をしなくても生活に困るようなことは無かった。
「役者仲間の中には、肖像データの提供を嫌がっている人が結構いるわ。そういう人たちにとって、演技をする自分の姿は人生のすべてだもの。気持ちは分かる。でも、何年も前から分かっていたことよ」
「今更ジタバタするなって?」
「なにか備えることはできたんじゃないかとは思う。でも、選択を迫られても、「明日考えるよ」って言い続ける人の気持ちも分かるの。役者の仕事ができれば、生活はギリギリでも大丈夫と思ってやってきたのに、これからはデータだけ提供してくれれば良いよと言われてもねえ」
 嗣音は少し憂鬱そうに息を吐いた。「他人事じゃないのにね」
「君は大丈夫だよ」
「ありがとう。でも、この世界は水物だから。単純に人気が無くなればそれまでだし、その内映画も、テレビ番組も全部AIで作る世の中になるかも。そうしたら、私も自分のデータを売ってお金を稼がなきゃ」
「正気か?」
「超マジ。今の時代、そうはならないって誰に言える? どうやって証明する?」
「証明なんて馬鹿げてるよ。そんなものは、AIで何でもできるようになると言っている、テクノロジーを魔法かなにかと勘違いしている連中の言葉だ。映画だけじゃなくて、他の芸術もそうだけど、それらが持っているテーマやメッセージを機械が作れる? 俺は本気だよ。証拠はないけれど、この場のノリで言ってるわけでもない」
「ドイツに旅行した時のこと覚えてる? ケルンの大聖堂を観に行ったよね。2人で写真を撮りまくった」
「勿論、覚えているよ。ゴシック様式の素晴らしい大聖堂だった」
「ゴシックの語源を知っている?」
「さあ」
「ゴート族──ドイツ語を話す民族──の様式って意味で、野蛮な建築だと侮辱するための言葉だったそうよ。前の時代の建築と比べるとあまりにも奇抜だったから、そんな風に言われたんだって。それじゃ、バロックの語源は?」
「さあね。「くそったれ」とか?」
「惜しい! いびつとか、奇妙とかって意味で、こっちもやっぱり侮辱の言葉なの。当時、受け入れることが難しかったものを、私たちは美しいものとして当然のように受け入れている。必ずしも、AIが何でもできる必要は無いかもしれないわ。世代を跨げば、人間の方が変わっていく」
「難しくなってきたな」
「あははは、ごめんね。簡単に言うと、私はいまだに電子書籍に抵抗があるんだけど、今日生まれた子供にとっては当然のものなんじゃないかってこと」愉快そうな声で、嗣音は続けた。「いずれにせよ、私も備えなきゃいけないかもね」
「どんな備えを?」
 嗣音は肩をすくめてみせた。「明日考えるわ」
 嗣音の意見は、終始冷静でフェアなものだった。この時の彼女には本当に余裕があったんだろう。
 
4
 ある朝、ずっとテーブルの上に放置していた嗣音の端末が鳴った。ディスプレイには全く知らない、斎藤由紀子という名前が表示されていた。
「もしもし」
「麻美嗣音さんの、ご家族の方ですか?」
「夫の、麻美優斗と申します。失礼ですが、どちらさまですか?」
「斎藤由紀子と申します。嗣音さんとは、高校の頃からの友人です。葬儀に伺えず、申し訳ございませんでした。ご冥福をお祈りいたします。それを、お伝えしたくて」
 嗣音のことで何か聞けるかと思い、私はその日の夕方に、彼女に会う約束を取り付けた。待ち合わせ場所の公園で彼女と落ち合うと、私たちはベンチに腰を下ろし、話を始めた。
「それで、お話したいことというのは?」
 私は、嗣音の死後、突然彼女のデータドナー登録を知らされたこと、その理由が知りたくて彼女の知人に話を聞いて回っていることを話した。「何か、ご存じのことがあれば」
 データドナーへの謝礼金の話を聞くと、彼女は悲しそうな表情をした。「嗣音はお金を貰ってデータドナーの登録をしたわけではありません。あの子は、そういうことを本当に嫌っていましたから」彼女は言葉を続けた。「多分、お聞きしていないと思いますが、嗣音は女優を辞めるつもりでした。最近、仕事が減ってきて、なにより環境が変わりすぎて、そもそも女優の仕事自体が好きではなくなっていたみたいです」
「それなら、何故、嗣音はデータドナーに登録をしたのですか?」
「私のためです」そう言って、斎藤さんは自分の頬を手で撫でた。「どうやって話したらいいかな。結構、嫌な話なんです」
「もしも、お辛いようでしたら」
「いいえ、話させてください。麻美さんに、嗣音のことを誤解してほしくありませんから」斎藤さんは意を決し、話し始めた。「私、3年前に整形したんです。その頃、付き合っていた人が浮気していて、──というか、私の方が浮気相手だったみたいなんですけど──そのことに彼の本命の方の恋人が怒りました。ある朝、その恋人が私の職場にやって来て、その」斎藤さんは辛そうに吐き出した。「顔をぐちゃぐちゃにされました。何回も顔を殴ったり、切られたりして、もう少しで死ぬところだったみたいです。医者は、なるべく元の顔を再現するように努力すると言っていたんですけれど、結局、ほとんどゼロから顔を作るような手術をすることになったんです。その時紹介されたのが、病院で導入したばかりの生成AIを使った3Dモデルでした。出力された顔は、正直、元の私とは全然違ったけれど、すごく綺麗に見えました。だから、その顔に変えてもらうことにしました。
 整形後の腫れも引いて、私は家に帰りました。それでちょっと顔を洗いたくて、洗面所に行って鏡を見たんです。そうしたら、まったく知らない女性が、私の方を見ていました。おかしいですよね? 病院で鏡を見た時は、何も疑わずにこれが自分の新しい顔なんだって思えたのに、家の中で見ると、知らない綺麗な女の人が、私の鏡を使っているんです。何もかも取り返しがつかないんだって急に思えてきて、一人で泣きました。
 それから、何もできなくて、一人で家にこもっていたら、ある日嗣音が心配して来てくれたんです。嗣音は、私の顔を見るなり泣き出しました。そうしたら、私までまた泣けてきちゃって、思っていたこと全部を嗣音に吐き出しました。恋人のこと、その彼女のこと、そして手術のこと」
「失礼ですが、そんなにも変わってしまうものなのですか?」
「これ、私の昔の顔の写真です。見るのが辛いから、ほとんど削除したんですけれど、やっぱり全部は捨てられなくて」そう言って、斎藤さんは端末の画面を私に見せた。そこには、目の前の女性とは似ても似つかない顔立ちの女性が、幸せそうに笑っている。「あの頃、私のいた病院のAIはとても幼くて、一般的な整った顔しか出力できなかったそうなんです。もっと柔軟に個人の特徴みたいなものをモデルに反映させるには、大量の学習データが必要なんだと、退院した後で知ったんです。
 その話をした翌日でした、嗣音からデータドナーに登録したと聞いたのは。そんなことをしたって、1人分のデータじゃ何も変わらないし、そもそも私の顔はもう元には戻らないんですけれど」斎藤さんは少し涙声になっていた。「嗣音は、せめて何か自分にできることがしたかったって言っていました」
 彼女の話は、これまで私がまったく聞いてこなかった話であったが、私の中の嗣音のイメージと合致するものだった。
「私は、妻のことを誤解していました。ありがとうございます」
「お話しできて良かったです」

まだ嗣音が生きていたある日、リビングのソファに座って、二人でテレビを見ていた。テレビでは1年前からよく見るようになったアイドルがステージの上で歌っている。別に彼女のファンという訳ではなかったけれど、純粋に可愛らしい顔立ちの女の子だなと考えていた。しかし、十代の彼女が既に何度も顔を変えていると嗣音から聞くと、途端に彼女の顔は輝きを失われていくように感じた。
「そんなこと言うものじゃないわ。それに今時珍しくもないわよ」
「俺は君たちみたいに人に見られる仕事じゃないから、もしかしたらずれているのかもしれないけれど、やっぱり気になるんだよ」
「人の手が入っているのが嫌ってこと? それならヘアカットやコスメだって同じじゃない」
「ただの印象の話なんだ。そういうことに熱心になるのは悪いことじゃないと思うけど、話を聞くたびに彼らの周りの圧力を想像してしまうんだよ。友達に馬鹿にされないように、恋人に嫌われないように、仕事の面接で落とされないように。でも、そういったものを求め始めると際限が無いし、結局自分が失われていくだけのような気がする」
 嗣音はテレビ上のアイドルの方を見る。
「今、この子のグループの審査倍率って500倍以上なんだって。毎年応募している子もいるし、その中には顔を整形してくる子もいる。ううん、顔だけじゃない。特技や趣味まで、選ばれるのに相応しいものを学んできたりするそうよ。そうやって努力し続ける子に会った時、やっぱり同じことを言う?」
「外見がその人の全てじゃないし、自分が好きで始めた趣味とか習い事は、それ自体が大切なことだ。そう思うのって、おかしいかな?」
 嗣音は少し悩んでから、答えた。「全然。だって、私もそう思ってきたもの」
 
5
 斎藤さんの話を聞いてから、私の考えは嗣音のデータをこれまでと同じように提供し続けるのか、それとも破棄するかの間で揺れていた。当の斎藤さんとしては、もしも私が望むなら、破棄しても構わないということだった。実際、私は肖像データを破棄したいと思っていた。しかし、嗣音がこの場に居たとして、それを本当に望むのか、私には確信が持てなかった。データドナー登録してから3年間、嗣音はコンスタントに肖像データを提供し続けた。その間、彼女の頭の中にあったのは、単純に斎藤さんへの友情だけだったのだろうか。
 嗣音が死んでから、彼女の友人を訪ねるのと並行して、カウンセリングにも通うようにしていた。カウンセラーは、故人の周囲の人間と感情を共有することは重要だと私に言ったが、一方で、私が入れ込みすぎているように見えるとも言った。「周囲と感情を共有することは大切です。しかし、その結果、何か答えが見つかることを期待していると、堂々巡りを繰り返すだけですよ。厳しいようですが、どこかで奥様のことを受け入れ、前に進まなければいけません」私は肖像データの削除期限が過ぎたら、この問題について考えることをキッパリ止めると決めていた。
 肖像データの削除期限が1週間後に迫ったその日、嗣音の荷物を整理していると、彼女が実家から持ってきたアルバムを見つけた。嗣音は子供の頃から人前に出ることが好きだったようで、演劇だけではなく、様々な発表会に参加する彼女の写真がアルバムに収められていた。ページをめくるごとに嗣音は成長して、私の知っている姿に近づいていく。しかし、それに従って膨らんでいく違和感があった。写真の嗣音の顔は、私の知っている彼女の顔とは少し違うように見えた。
 カウンセラーの言葉に従って、私はこの2カ月ほどマメに嗣音の両親と話すようにしていた。特に嗣音の母親とは、皮肉な話だが、嗣音が生きていた時よりも気安く言葉を交わす間柄になっていた。その夜、私は彼女に連絡を取り、軽い会話のついでにアルバムのことを聞いてみた。
「嗣音は高校を卒業した後、大学に入る前に整形したの」
 私は驚いた。「知りませんでした。でも、どうしてですか?」
「あの子は、本気でプロの女優になりたいの、としか言わなかったわ。一時の気まぐれだろうと思ったから、それ以上聞こうとは思わなかった。私も夫も、大学の間くらい好きなことをさせてあげよう位の気持ちで、嗣音が演劇を専攻することを認めていたの」
「でも、彼女は本当に女優になりました」
 彼女はうなずいた。「嗣音が女優になってから、あの子の言っていた『本気』の意味を考えるようになったの。もしかしたら、嗣音は顔を変えることが、役者の世界に入っていくために必要な手順だと考えていたのかもしれないわ」
「しかし、嗣音は外見だけで判断されることを嫌っていました」彼女の仕事が減ってきたのも、他でもない外見が原因だった。
「嗣音は昔から人前に出ることが好きだったし、何年も役者をやっていた。確かに、外見だけで人を判断することを、あの子は嫌っていたかもしれない。でも、それ以上に、あの子は人に見られるということが何なのか分かっていたんだと思う。だから、嗣音はデータドナーとかいうのに登録したんじゃないかしら」
 彼女の言葉に、私は困惑した。「いえ、前にお話ししましたが、あれは友人の為にしたことらしいんです」
「本当にそれだけかしら。難しい説明は分からなかったけれど、要するにデータドナーに登録している人が多いほど、整形後の顔に融通が利くようになるんでしょ? それなら、嗣音が自分の『顔』を提供したことは、この先やむを得ず『顔』を整える人たちの──その理由が、大きな怪我の跡を消すためでも、周りからの圧力でも──元々の『顔』の個性を守ることに繋がるわ」
「しかし、同時に嗣音の肖像データはAIの学習を進めます。そして、AIの中で育っているのは、よりキレイな人間の顔の基準です。それは、結局ルッキズムを助長するだけじゃありませんか」
「ルッキズムね」彼女は、少し呆れたようにため息をついた。「最近の若い人は、すぐに見栄えの良い言葉を使って、それで物事を解決できると考えるわね。でも、現実って、そんなに単純じゃないわ。確かに、外見だけで他人を判断するような習慣は克服されるべきよ。でも、そう言われ始めてから多くの時間が経っても、未だに私たちは美人が好きでしょう?」

新婚旅行で訪れたニューヨークでは本当に多くのことに驚かされた。とりわけ、私を驚かせたのは、マンハッタンを歩く人々の外見だった。それまで日本を出たことのなかった私には、『人種の坩堝』というのは、映画の中でイメージされる言葉でしかなかった。私が日々見かける人々は、職場の人間も、通りですれ違う人々も大抵は日本人の外見をしていた。しかし、マンハッタンでの私は、そこで生きる多くの人種の1つでしかなく、日本で無意識に持っていた肌の色や髪の色、体格、服装に対する基準を失っていた。ダウンタウンに向かう道の途中で、2人のアフリカ系アメリカ人の少女が、コーンロウの髪を揺らしながら歩くのを見たのは、彼女たちにとっては近所を歩いているだけの日常だったのかもしれないが、私には大事件だった。
 嗣音は学生時代にアメリカへ留学したことがあったので、旅行中は彼女の英語に頼り切っていた。その時も、カフェに入ったものの、注文は嗣音に任せていた。私がニューヨークに抱いた印象を聞くと、嗣音は何かを納得したように「あー」と言った。
「私の友達も同じようなこと言っていたわ。アメリカでは自分らしく生きられるって。差別や貧富の差なんかを無視して、見た目だけを考えるのなら、私もそう思う。外見の違いが大きすぎて、日本で道を歩いている時ほど、細かいところに目がいかなくなるもの」
「それって素晴らしいことじゃないかな」
「自分らしくいられるから?」嗣音は黙って、少し考える。「留学していた時、寮のエレベーターで誰かと一緒になると、知らない人でもとりあえずハーイって言うの。陽気だからじゃなくて、何も言わないとお互いに相手が怖いのよ。日本に帰ってから、アパートのエレベーターで隣の人に無視された時にはちょっとショックだったわ。でも、別に怖くは無かった。その時、これまで人を信頼できるか判断する時に、自分がどれだけ外見に頼っていたのか分かったの」
「どういうこと?」
「髪の色や肌の色、服装なんかを見て、この人は自分と同じなのか、自分と同じ常識の中でいきているのかって判断しているんだと思う。それで同じだって判断できる相手だったら、その人は信頼できるってわけ」
 嗣音の言葉を咀嚼しながら、私は答えた。「つまり、誰もが自分らしくいられる世界では、俺たちはすれ違う人全員に怯えることになる?」
「そこまでは言わないけれど。ただ、相手のことを良く知らなくても、外見だけで信頼できることが良い方に働くこともあるんじゃないかって話」
 レジの方に目をやると、東洋系の外見の夫婦が店内を見まわしているのが見えた。奥さんの方が私と目が合うと、一直線に店の奥のテーブルに座っていた私たちの方に歩いてきて、片言の英語で話しかけてきた。
「エクスキューズミー。アーユー、ジャパニーズ?」
「はい、日本人ですよ」
「ああ、良かった。私も主人も英語は全然駄目なんです。スタバだったら、日本と同じように注文できるかと思ったのに、なんだかチンプンカンプン」
「分かります」
「もう、本当にお2人の顔を見た時、ホッとしました」
「一緒に注文しに行きましょうか」そう言って、嗣音は私の方に勝ち誇った顔を向け、「良いこともあるでしょ?」と唇だけを動かして言うと、日本人夫婦を伴ってレジの方に歩いて行った。
 
6
 視覚からの情報を元に、まだ目の前に無い事象を予測すること。先天的な予測にしろ、経験による想像にしろ、それはある段階で生き物の機能にしっかりと根付いてしまった能力ではないだろうか。もしもそうなのであれば、他人を判断する時、外見を一方に置き、もう一方に純粋な内面というものを置くことは難しい。私たちが、視覚情報からの予測に支えられた生き物である以上、目から入ってくる情報は、常に私たちの判断に影響を与えていることになるからだ。
 当然、その予測が常に正しいとは限らない。それは私たちの予測自体が間違っているのかもしれないし、意図的に視覚情報からの印象を制御されているのかもしれない。それは政治家の服装選びやボディランゲージだったり、料理の画像を加工して美味そうに見せることだったりする。いずれにせよ、もしも、その予測だけが暴走し、私たちの価値判断の要素すべてに取って代わろうとしているなら、そんな事態は避けるべきだ。
 そのような暴走から私たち自身を守る手段の1つは、目に映ることだけがすべてではない、と注意喚起し続けることだろう。実際、それは一定の成功を見ていると言える。私たちの多くは、肌の色で他人を判断しないモラルを共有しているし、そのことで差別を行う者を嫌悪している。しかし、もしもゴールを「外見だけで人を判断する」という言葉を提示された時、私たちがイメージするすべての悪いものが除去されることに置くとしたら、この注意喚起はいつまで続ければいいのだろうか。私には、私たちが人間である限り、この喚起を終えられる日が来るとは思えない。
 結局、私は嗣音の肖像データが、これからも利用されることに同意した。
 もしも、嗣音がこの場に居たら、私の選択をどう思うだろうか。私には分からない。私に分かるのは、嗣音がルッキズムに対する一般的なモラルを持っていた一方で、それとは独立した彼女自身の人間の外見に対する考え方を持っていたことくらいだ。それでも結論を出さなければいけないのだとすれば、人間の外見がどんどんキレイにされていく流れの中で、少しでも個性を守ろうとした、という彼女の母親の推測は、私には十分納得のできるものだ。
 AIを育て、より最適な解答が熱望される時代、今の私たちが個性と呼んでいるものは少しずつ失われていくだろう。嗣音のしたことは、一見この流れを加速させただけのように思える。しかし、彼女の『顔』は、一つの最適な点に収束するはずだった未来に、いくつかの選択肢を与える一石になりはしないだろうか。私たちはどんどんキレイにされていくし、その流れは止められない。私たちが大切にしているものも、キレイではないと捨てさせられる日が来るかもしれない。それでもどのようにキレイになるかは選べる、そんな未来のために彼女はデータとして消費され続けることを選んだのではないだろうか。

初めて嗣音を見たのは、彼女の所属していた劇団の公演『カルメン』で、彼女が主人公カルメンを演じた時だった。嗣音の演じるカルメンは、強気で迫力があり、常に確固とした自分の意志を観客に見せつけながら、舞台上を縦横無尽に動き回っていた。気づけば、私はどのシーンでも、彼女の動きだけを目で追ってしまっていた。彼女と一言でも良いから話をしたくて、私は劇団が打ち上げに使うバーに通い詰め、ある日、たまたま店を訪れた客を装って嗣音と話す機会を持った。
 舞台用のメイクを落とし、間近で見る嗣音の『顔』は、私の期待したものではなかった。舞台の上での強気さとは対照的に、彼女の『顔』は優し気で、控えめな印象を私に抱かせた。そのことを残念に思い、彼女と話すまでの努力がすべて裏切られた気がした。しかし、一度話を始めると、私は彼女から目が離せなくなるほど、再び魅了されて、気が付けば私の方から次に会うことを提案していた。それから、私たちは何度も会うことになった。彼女のことを知っていく中で、私自身の価値観も変わっていった。いつの頃からか、嗣音と似た顔立ちを見ると、以前よりも良い印象を持つようになっている自分がいた。
 時々、考えることがある。外見が原因で嗣音の仕事が減っていたのだとしたら、顔を変えていれば彼女は再び返り咲けたのではないだろうか。その時自分は何を思うだろうか。おそらく私は、嗣音の内面は失われないことが分かっているにも関わらず、嗣音の顔が失われたことを残念に思っただろう。
 嗣音の死から3年が過ぎた。日々仕事をしたり、時には旅をしたりしながら、私は様々な人と出会っている。そうやって出会う人々の『顔』の中に嗣音を見出してしまう時がある。そして、彼らの口から、嗣音が言うような言葉が出てくることを期待する。そういった期待は、時々当たるが、大抵は外れる。外れた後、今度はその人自身をよく知ろうと、私は努力するようにしている。

文字数:14375

課題提出者一覧