梗 概
つとむちゃんの暴走
つとむちゃん(28)は幼少期虐められたことがきっかけで「怖くて人の体に触れることができない」と言う障害を持っていた。だが、エリコ(32)に駅のトイレに引きずりこまれ無理やり強姦され、そのトラウマが克服された。そして「強姦魔と結婚するなんて狂ってる!」と親戚一同に止められるが、エリコのことを病的に好きになってしまい、結婚する。
そして、貧乏S EつとむちゃんとドS女王エリコの結婚生活が始まるが、早々に離婚寸前に。それはエリコの散財癖と男癖の悪さのせいだ。つとむ家はすぐさま借金まみれに。そんな中、マジで少子高齢化が進み、子供が世界から失せた。政府が人工子宮で子供を産んだ家庭には莫大な援助金を出すと知って、つとむちゃんはエリコに子供を産んで欲しいと言う。
「産んだらこんなにお金貰えるんだよ!? シャネル買えるよ!?」「なあお前。子供産めっつったら離婚するって言ったよな? 育児なんてめんどくせーっつーの!」「育児はぼくが全部やります! ほんとほんと!」
莫大な援助金が出てもこの不景気の中ではなかなか出生率は増えなかった。人工子宮に妊娠を「外注」する価値観もそこまで定着せず、著しい効果をあげられなかった。そこで最後の策として、男性を女体化し、出産できる体に作り替える手術の研究が始まった。つとむちゃんはそのニュースを知って、ぜひ世界初の被験者になりたいと申し出る。「被験者になって出産する代わり、エリコを監視してください。エリコは男癖が悪いから他にも男いるんですよどうせ!!」と頼む。
出産に必要なのは相手の女の髪の毛1本とつとむちゃんの体だけでよかった。エリコは「テメエが勝手に産んで育てるんだったらいいよ。あーしはめんどいのが嫌なだけだし」と言って歯を磨きながら髪の毛を引きちぎってつとむちゃんに渡す。
そしてつとむちゃんの女体化手術が始まった。生殖器ごと丸ごと改造して二度と男性に戻れなくなるので、また親戚一同は止めたが、崇拝するエリコの子供を持ちたいという気持ちと借金まみれの生活への不安、またエリコの監視を条件につとむちゃんは手術を決行する。だが世界のマスコミがつとむちゃんの女体化手術を取り上げたことで、つとむ家に取材が押し寄せる。それを疎ましく思ったエリコは別の男と家から逃走してしまう。
それを知ったつとむちゃんは悲しみに明け暮れ、抗鬱剤漬けになった。女体化手術をストップしようという研究者も現れたが、研究チームのリーダーが言った。「このままやりましょう」
そしてエリコを失ったまま、つとむちゃんは無事に子供を出産する。だが、子供は4分で死んでしまい、女体化されたつとむちゃんの体だけが残った。
つとむちゃんは男装して毎日あのトイレに通った。毎日毎日。女体化したのでセックスはできないが、エリコが再び会いにきてくれることを願って。そしてついにその日が訪れ、ふたりは再び出会う。もう四年の月日が経っていた。
「チンコないやん!!」
「うん。あの男とは別れたの?」
「秒で別れたわ」
「じゃあ、うちに帰ろう。まだ離婚してないから」
文字数:1270
内容に関するアピール
話としてはストックホルム症候群で狂人のようなエリコを好きになってしまった男が女体化したり男装したりと暴走する話です。男性の女体化は、女体化できる神(ユーピテル)から取りました。神話に出てくるような、ある意味神のように振舞う残虐なエリコにすがるしかない・崇拝するしかない悲劇的なつとむちゃんという登場人物が、宗教っぽさを帯びていたらいいなと思います。
序盤の強姦魔と結婚するくだりはポリコレ的にはどうなんだと言われそうですが、あえてです。強姦魔を恨むのは当然のことです。ですが、その反面愛してしまうマイノリティも世の中にはいるでしょうし、今のところ強姦魔と結婚してはならないという法律はありません。
文字数:299