ニシカラヒガシヘ神移動

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梗 概

ニシカラヒガシヘ神移動

クロノスはゼウスとヘーラの3人で砂漠の上を歩きながら東へと旅をしていた。クロノスはゼウスの父親であったが、ゼウスが王権を奪った後、ゼウスのパシリとして使われていた。

ゼウスは最終決戦後、世界を平定し、美しき女神達との浮気を楽しんでいた。ヘーラがゼウスの浮気に感づき、東へ向かい色々な人間を増やそうと言ったが、ゼウスは面倒だったので断った。

ヘーラが外に出かけているとクロノスと出会う。ゼウスが家に美女を連れていたという話になる。怒ったヘーラはクロノスを連れて、家に戻るとゼウスは全裸で雌牛の世話をしていた。ヘーラがゼウスに詰め寄ると、ゼウスは美しい雌牛を見かけたので家で世話したくなったと言い訳する。

ヘーラはゼウスに東に旅にでることを強要し、ゼウスは仕方なく承諾。ヘーラの後ろでクロノスが笑いを堪えていたが、ゼウスがクロノスもついて来いと命令され、クロノスも旅することに

東へ移動している間も二人は何かと喧嘩し、その度にクロノスが仲裁に入った。

東の果てまで移動すると海が見え、これ以上移動できないと思い、しばらく東の果てで暮らすことにした。そこでヘーラは女媧と呼ばれ、ゼウスは伏羲と呼ばれ、クロノスは神農と呼ばれていた。伏羲は趣味にふけるばかりで、女媧が「人間」を作る作業をしていた。(女媧は浮気対策のため伏羲の好みと正反対の人間を作っていた)

ある日、伏羲が「海を渡ったところにまだ陸地がある」と言って、近所の人間や神々を集めて船を作らせ、東の最果てへと渡る船を作った。女媧はあきれたが、船に乗り、海を渡ることに、神農はまだやることがあると言ってその場に残った。

神農はやっと二人から解放されたと安堵し、しばらく人間に農業や物々交換の方法などを教えて楽しく暮らしていたが、大きな災害が度々起こるので原因を調査したところ、海を渡った陸地で二人が大喧嘩していることに気付く

神農は仕方なく、海を渡り、伏羲と女媧に会う。伏羲は高御産巣日神たかみむすひのかみ(タカミ)女媧は神産巣日神かみむすひのかみ(ムスヒ)と名を変え生活していた。神農も天之御中主神あめのみなかぬしのかみ(天)と名を変え、自分が最高神になって、災害があまり起きぬ様にしようと提案する。二人も一時はパシリ扱いしていた天であったが、今はパシリではなく家族の一員となっていた。タカミもムスヒも天の意見を受け入れる。

2021年 夏

蝉が鳴く中、コンビニで神会議が開かれる。タカミがイートインでアイスを食べていた。天も現れる。お互いの近況や世界について話す。タカミは旅人、天は複数の会社の経営コンサルタント。ムスヒは何処かの国の女性首相をやっており多忙のため今回は欠席。

話の最後に天はムスヒに神の力を使っているか問う。店内で急に風が吹き、店内に陳列されているお菓子が4、5個落ちる「今では神の力も悪戯ぐらいだな」とタカミが話すと天は笑った。

文字数:1199

内容に関するアピール

現在、コロナ禍で世界だけなく他県への移動することも中々難しくなってきています。しかし、本来、人は色々な場所・人間・言語等に接するようによって、色々な体験を得て、初めて気付き、自分の視野が広がる生き物だと私は思っています。現在のコロナ禍で「世界を旅しましょう」と言うのは難しい話です。しかし、この物語を読んで、世界は難しいけど、いつも行かない近所の町や山・川等、今まで近いけど行ったことがない世界に「旅をしようかな」と思っていただけるような作品にしようと思っています。

文字数:233

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ニシカラヒガシヘ神移動!

クロノスはゼウスとヘラの3人で一緒に砂漠の上を歩きながら東へと旅をしていた。

「暑い!」

ゼウスは着ていた衣服を脱ごうとした。それを見たクロノスが

「冷たい風を吹かせればいいだろう?」

と言うと、ゼウスは

「それではダメなんだクロノス君」

クロノスはなぜ父親の自分が「君」と言われているのか疑問に思った。

「なんで君なんだ?一応、父親だろ?」

ゼウスは笑った。

「父親?王の座を乗っ取られるかもしれないから、子供達を監禁するという行為を取る犯罪者を?」

クロノスは臆病な自分の心を見透かされ、心が痛んだ。

「そんなにイジメるんじゃないの、アンタも似たようなもんでしょ?ゼウス」

ヘラの言葉をゼウスは聞こえないふりをして無視していた。ヘラの言葉にクロノスは少し救われた。

「クロノス、手押し車にある水取って」

という言葉を聞くまでは、仕方なくクロノスは水を水筒に入れ渡し、ヘラがその水を飲むと顔をゆがませ

「生温いわね。冷たく出来ないの?」

「ゼウスの力によって、今は人間と同じ能力しか持っていないので・・・。」

ヘラがゼウスを見ながら

「クロノスにも最低限の神の力を与えたら?」

ゼウスはクロノスをジッと見て少し考えた。しばらくするとヘラを見て

「いや、このままでいいんだ。」

「なんで?」

「それは今説明しても分からない。だが、今後のことを考えると、この旅にとって大きな意味を持ってくるんだ。」

「ふーん、神のみぞ知るっていうことかな。まあ私は体温調節してるからいいけどね。」

悪魔のような夫婦だなと思いながらクロノスは手押し車を押しながらつぶやいた。

「馬鹿なことをしたな」

📜

ゼウスはクロノスとの戦争に勝ち、世界を平定し、美しき女神や人間達との愛欲生活を楽しんでいた。ヘラはゼウスが浮気をしていることに薄々感づいているようで、ヘラはクロノスに探りを入れるような形で相談してきた。クロノスは内心、なんで敗者の俺がお悩み相談受けないといけないんだ、と思っていたが、頷きながら、わかるわかる。と言ってほとんど話を聞いてなかった。

「どうしたらいいかな?」

クロノスは前後の話をほとんど聞いてなかったので返答に一瞬困った。

「そーだな。住居を変えてみるというのもいいじゃないか?」

「でも、ゼウスは住居を変えてもそこですぐ浮気するわよ?」

「うーん、じゃあ、住居を一定にせず、旅をせればいいんだよ。」

「でも、ただ旅するだけじゃ納得しないわよ?」

「そだーな、色々な人を各地で増やそうと言えば、大義名分になるんじゃないか?」

「なるほど!ありがとう!ゼウスに言ってみるわ!」

ヘラは笑顔になり、急いで家に帰って行った。クロノスは笑顔でヘラを見送った。

 

翌日、クロノスが街を歩いていると、ゼウスが前方をこちらに向かって歩いてきた。クロノスはあわてて横道があったのでそこに隠れ、ゼウスを見ていると、ゼウスはクロノスのことには気付かずに神官イオに腕を組まれながら、楽しそうに会話をしながら歩いていた。

「ははん~」

と呟くとクロノスはこの事を誰かに言わずにおれなかった。そこにヘルメスが歩いてくるのを見かけたので

「おいヘルメス!ヘルメス!」

ヘルメスはクロノスを呆れた表情で見ていた。

「どうしたんですか?そんな所に隠れてお爺ちゃん。」

「そのお爺ちゃんというのは止めろ。俺そんな年じゃねーし」

「はあ、すみませんお爺・・・クロノスさん。」

「まあ、いいけどさ。それよりさっきスゴイ光景見ちゃったんだよ!」

「何をみたんですか?」

「ゼウスとイオがイチャイチャしながら、歩いているんだよ!絶対今頃、家でヤッてるぜあいつら!」

ヘルメスは驚き

「ま、まずいですよ。お爺ちゃん」

「えっ?」

多くの林檎を入れた紙袋を落とすヘラがいた。

「どういうことかしら、クロノス?詳しくその時の状況を教えてくれないかしら?」

詰め寄ってくるヘラにクロノスは元いた場所に戻りたいと思った。

「客観的事実だけを申しますと、イオとゼウスが二人で歩いて会話をしていたというだけであります。」

既にヘルメスはその場から消えていた。ヘルメスめ!、とクロノスは思ったがそれよりも今前にいる神の女王をどう処理するかを考えていた。ヘラはテーブルクロスのように真っ白(?)な顔を赤くし

「アイツ、昨日旅をするのは嫌って言っていたのはこういうことね・・・。クロノス行くわよ!」

「えっ、何処に?」

「家よ!家!」

と怒鳴り声をあげながら、急いでゼウスの家に向かうヘラを追うクロノス、なぜ俺がゼウスの家に行かなくちゃならないんだ、と思っていた。

 

ゼウスの家に着くとヘラは扉を開けようとしたが鍵がかかっているので、扉を動かすガチャガチャという音しかしなかった。ヘラは扉から一歩さがり、呪文を唱えて扉ごと吹っ飛ばした。さすが神の女王と感心しながらクロノスはヘラを見ていると、一足先にヘラは家の中に入った。クロノスも後を付いていくように進むと、ヘラがベットルームで立ち止まり、指の関節をポキポキ鳴らし、肩や首を回し、ひきつった笑顔を見せていた。

「どういうことアナタ?」

クロノスがヘラの後ろからベットルームを見ると

全裸で牝牛の世話をしているゼウスがいた。

「ああ、これはあまりにも美しい牝牛を見かけたので、牝牛好きの君に見せたいと思ってね。世話をしていたんだよ」

あまりにも苦しい言い訳に笑いだしそうになるクロノスであったがなんとか堪えた。

「ベットルームで?」

「ああ、君と愛を語らう空間で、牝牛に君への思いを重ねながら、世話していたよ。」

ゼウスは暗に、イオはただの代用品、と言いたいのかとクロノスは思っていた。

「モォー!」

大きな声で牝牛が泣いた。牝牛もゼウスの言葉の意味に気づいたかのようだった。

「おお、どうしたんだい。泣いてたりして、何も悲しむことはないよ」

ゼウスは牝牛の世話を全裸でしていた。

「まあいいわ、牝牛のことは後から処理するとして、昨日、話した旅の話は承諾してくれるわね?」

ゼウスは力のない表情で頷いた。クロノスは事が終わったのでその場を去ろうとした時に

「クロノス!お前も旅に付いてこい!」

ゼウスに命令された。敗者であるクロノスはゼウスには逆らえない。

📜

砂漠を超え、東に向かう途中、肌が小麦色の人間達に出会い、休憩することとなった。彼らは陽気な人間が多く、ゼウスやヘラと馬が合い、何年も宴を催していた。クロノスは今後の旅のことを考えると何としても荷馬車を作っておきたいと思い、彼らに荷馬車を作るのを手伝ってもらうおうと考えていたが、そもそも彼らには共通する言の葉がなかったので、彼らに荷馬車を作らせることは無理だった。しかし、クロノスは何としても荷馬車を作りたかったので彼らに共通の言の葉を教えた。そして、数年が経ち、やっと彼らは共通の言の葉で会話し、図面を作ることができた。しかし、彼らはなぜか、荷馬車を作ろうとせず、毛深い象に荷物を運ばせる図面ばかりを作り、勝手に設計していった。

「なぜだ?」

クロノスがある日、小麦色の男達のリーダに尋ねると

「あんたたちには感謝している。みんなと会話できるようになって、色々な遊びを教えてもらったし、争いも昔よりは少なくなったからな。だけどな、あんたたちは自分が行こうとしている東の世界はどんな所かよく知らない。だから馬なんてひ弱な生物に頼ろうとするんだ。まあ任せとけ」

リーダーがその場を去ると、クロノスの心には一抹の不安はあったが、彼らの気づかいがそんな不安を押し流すように全身を温かくし、彼らに象車作りを任せることにした。そして、そこから数年経ってやっと象車は完成した。

「いやー、長かったな。象車作りも、もう宴も飽きたよ。」

ゼウスは自分の身長の何倍もある象を見ながら、クロノスの肩に手を置いた。ヘラは欠伸をしていた。

「えっ、待っててくれたのか?」

ゼウスは少し考え

「うーん、待ってたというより、見てたという方が近いかな。」

「見てた?」

「今は言っても分からんよ。」

「なんか、前もそんなこと言ってたよな?」

「ああ、いずれ分かる。今は先に進もう。お前は歩きでな。」

クロノスは自分が作った象車を見て、薄っすらと涙が流れた。その涙の理由が象車を完成したための喜びか、理不尽な要求を受け入れざるおえない自分の境遇への涙かクロノス自身もわからなかった。

📜

クロノスは身を刺す寒さの中、ゼウスの指示する方向へ暗闇の中を歩いていた。旅に出る前に小麦色のリーダーに用意してもらっていた寒さ対策の防寒具を着ていなかったら、クロノスはこの寒さを耐えられなかったし、馬では荷物を載せ、この寒さを歩くのは無理だったろう。クロノスは小麦色のリーダーに感謝していた

「クロノス!こっちに来て!」

象車からヘラの声がしたのでまた二人が喧嘩しているのかと思い、象車の中に入ると、ゼウスが顔を紅潮させ、息を荒くしながら、倒れていた。ゼウスから方向の指示がしばらくなかったのでゼウスは寝ていると思っていた。

「体温は?」

「40度」

「おそらく、寒さからくる体温異常だと思うのだが・・・ヘラ、ゼウスの体温を元に戻せないのか?」

「私の力をゼウスに使うことはできないの・・・。」

「そうか・・・。」

クロノスは目を閉じ考えた。このままクロノスの指示なしに、移動してもクロノスが目的地としている場所に着くかどうかもわからない。かと言って、ヘラの力を使ってどこか別の場所に空間移動させても、ゼウスも一緒に移動するかどうかはわからない。現状維持!これが俺の特技だ。クロノスは考えがまとまったので、ゆっくりと目を開いた。

「ヘラ。この象車を雪から守るために、神の力で象車を止めて、氷の家を作ることはできるか?」

「家はできないわ。難しいから、設計図があればできるかもしれないけど」

「いや、そんな難しいものじゃなくて、雪避けの小屋でいいんだ。」

「それならできるかも。」

ヘラは神の力で象車を止め、クロノスと一緒に外にでると、周りの雪を集め、空中で簡単な屋根を作り、壁を作って、雪避けの小屋を作った。

「ヘラ、出入口も作ってくれ」

ヘラは頷き、両手を壁の方向にかざすと出入口が出来た。クロノスは象車にあった木製のバケツをもって小屋を出て、バケツの中に雪を満杯に入れ、戻ってきた。

「ヘラ、象車の温度を高くしてくれ」

象車の中の温度が上がり、クロノスは防寒着を脱ぎ、布袋に雪を入れ、ゼウスの額に乗せ、ゼウスに何重にも毛布を着せた。クロノスがヘラを見るとゼウスを心配そうに見ていた。

「ヘラ、ゼウスなら明日には良くなっているよ。」

ヘラはクロノスを見て、表情はまだ固いままであったが頷き、ゼウスを見つめ、ゼウスの左手を祈るように両手で握った。

「ゼウスはなぜ病気にかかるまで力を抑えているんだ?」

クロノスはゼウスを見ながら疑問に思った。

 

翌朝、クロノスが眩しい光で目覚めるとゼウスが毛布を何重にくるまりながら、象車を操っていた。ヘラはまだ寝ているようだった。

「もう、体調は大丈夫か?」

「ああ、まあな。昨日は面倒かけたな。後、今日からお前もこの象車に乗って移動してくれ、熱だされたら、俺らが看病しなくちゃいけないからな。」

ゼウスは鼻をすすった。クロノスはゼウスに礼を言われたことと事務的ではあったが自分が象車に乗ることを許可したことに驚いた。ヘラを見ると眠っているのか寝たふりをしているのかわからないが少し笑顔になっていた。

📜

数か月、東に移動すると寒さは止み、雪もとけ、代わりに青々とした草原が地平線の彼方まで広がった。西ではあまり見かけない動物たちもチラホラ出だし、ゼウスは動物を見るたびに、あれは牛の進化系で、あれは鹿の進化系、と色々説明してくれた。その中でもクロノスが見てきた犬の中でも比較的大きな部類の狼がいつも眼光鋭く、群れでクロノス達を囲んでいた。

「コラ!」

ゼウスが叫ぶと狼たちはいつも逃げて行った。ゼウスに、これも神の力か?と問うと

「お互いの領域は侵さないようにしよう」

それを伝達する呪文さと笑われた。呪文なら自分もまだ多少使えるかもしれないという思いからクロノスはゼウスがいない時に一匹の狼が来たので呪文を唱えた。すると今まで呑気に歩いていた。狼の眼が鋭くなり

「グゥーーーーーー」

と鳴き、クロノス目掛けて走ってきて、クロノスに噛みつこうとした瞬間、クロノスは象車の中にいるヘラの元へと戻った。

「何してんの?」

ヘラが呆れながらクロノスを見てきた。

「いや、ゼウスに教えてもらった狼を追い返す呪文を使ったんだ。」

ヘラは大きくため息を付き

「あれはゼウスの特技、あんなのゼウス以外使ったところ見たことないわ。」

クロノスは愕然とし

「なぜに?」

「アンタ担がれたのよ。」

「マジか・・・。一瞬、死を連想したよ。」

「私がいなかったら、死んでたわよ。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして」

クロノスは象車から先程の狼を見ていたが、狼は急に獲物が消えたので驚き、周囲をキョロキョロと見回していた。

📜

終に東の果てにたどり着いた。なぜなら目の前には大海があり、もう陸地を移動することはできないからだ。クロノスは涙を流した。やっと最終地点に着いた。これで自由になれると思っていたからだ。ゼウスを見ると眉間に皺を寄せていた。

「渡れるかもしれんな・・・。」

「「ええ!」」

ヘラも声を出し驚いていた。

「いやいや待て待てゼウス。そもそもこの大海の先に陸地はあるのか?」

「ある」

「もうついていけない!」

ヘラはその場に倒れこんだ。

「一人で行って!私はしばらくここで暮らすから!」

ゼウスは俯き、クロノスをチラリと見た。

「クロノスお前はどうする?」

クロノスは、ここはターニングポイントだ。ここでどう出るかで自分の人生が決まってしまう。と思っていた。

「そうだな。ゼウスの気持ちもわかるが、もうそろそろ基盤となる土地を作ってもいいんじゃないか?」

「・・・わかった。俺もしばらくここにいることにする。」

ヘラは立ち上がり、安堵の笑顔を浮かべていた。

「ただ、全員の名前を変える。俺は伏羲。クロノスお前は神農、ヘラ、お前は女媧だ。」

ヘラあからさまに嫌そうな顔をした。

「なんで私がそんなダサい名前なの?」

「答えは簡単だ。お前が俺の気分を害したからだ。」

ヘラはムッとした顔になり、クロノスを見て

「クロノス、アンタも嫌でしょ?」

「いや、俺は神って言う名前がついてるから特には・・・。」

ゼウスはクロノスの方を向いた。

「クロノス、お前には今後、三皇の一人として俺がいない時に色々な仕事を頼むぞ。頼りにしているからな。」

ゼウスは片手をだしてクロノスに握手を求めた。クロノスはその手を強く両手で握りしめた。クロノスがヘラを見るとクロノスはゼウスに背を向けるような形で相当お冠の様子だった。

📜

基盤を作ると言っても、伏羲は趣味にふけるばかりで何もしてなかった。女媧も暇だったので泥をこねて人間を作る遊びをしていた。女媧が作る人間の顔の形はほとんど平らな形になっていた。神農が不思議にも思い、女媧の人間作りの手伝いをしている時に理由を聞いた。

「浮気防止よ。」

神農はたしかに伏羲の好みとは違う顔だなと納得した。

「それに私達と同じ顔の人間ばかり作っても面白くないじゃない」

そんな女媧の横顔を見ていて、神農は女媧も変わったなと思った。

「なによジロジロ見て、エロいことでも考えているの?」

「いや、そうじゃないよ。」

「それは逆に失礼じゃない。女性に対して」

女媧は笑って、泥だんごを作り投げてぶつけてきた。

「やったな」

神農も女媧に泥だんごを作り投げた。一発目は避けられて、笑っていた。二発目は女媧が手でキャッチするような形で泥だんごを受け止めた。三発目は女媧の綺麗な服が泥だらけになった。

「よっしゃー!」

神農が叫ぶと女媧はみるみる顔を赤くし

「私がやっても、アンタがやるじゃねえよーーーーーーー!」

神農の腹部に黄色いエネルギー弾のようなものがぶつけた。神農はそのまま100m吹っ飛んだ。

「なんで・・・。」

意識を失った。

📜

東の果てでしばらく暮らしているとある日伏羲に呼び出された。伏羲の家に行く途中で女媧に会った。

「伏羲に呼ばれた?」

女媧は頷き、一緒に行こうか?と言ってきたので、神農は頷いた。伏羲の家まで走っていると女媧は無言だった。神農はいつもよく話す女媧にしては珍しいし、女媧が走るのなんて、久しぶりに見たなと思っていると、ある疑念が浮かんだ。

「もしかして力を抑えられてる?」

女媧頷いた。

「なんで?」

「わからない。ただあの人、ここ数日船の設計図を作っているの」

「えっ、まさか海を渡るつもり?」

頷く女媧。

「しかも、私の力も人間と同じぐらいにしようとしているの、流石に抵抗したけど、今まで使えていた呪文や力はいくつか使えなくなってるの。意味わからないわ。」

神農は女媧の不安そうな顔を見ながら伏羲の家に急いだ

📜

二人が家に着くと伏羲は呑気お茶をすすっていた。

「おー二人ともよく来たな。」

手招きし、テーブルに置いていた地図をみるように促す、

「この地が今いる地だ。」

木の棒で米型の小さな島の前の大きな大陸を指す。

「そしてこの龍のような海に囲まれた地が私達の最終地点だ。これで私達の旅も終わりだ。」

二人は無言だった。

「まずそこに行くには船を作らなくてはいけないから明日から船を作って、東の彼方に行こう!」

二人は無言で頷いた。

📜

船を作るにはあまり時間はかからなかった。神農が人間達に言の葉を教えていたからだ。しかし、テセウスが作っていたような大きな木造の立派な船を作るには技術がいるので三人が海を渡る最低限の簡易的な船を作っていた。船を作っていると伏羲が神農のそばに近づいてきた。キョロキョロと何かを気にしている様子だった。

「神農、呪文を教えるから俺と女媧が龍の島に近づいたら、神の力を封印してくれ」

「えー!なんで!」

伏羲は人差し指を立て、口の前につけ

「シッ、静かに」

「ごめんごめん」

神農が謝ると、声を小さくし

「なんでなんだ。」

「今は詳しい説明が難しいが俺達の力は巨大すぎる」

📜

海を渡り、龍の島に着くと神農はすぐに呪文を唱え、二人の神の力を封印した。

「えっ!」

女媧は驚き

「何してんの!神農!元に戻しなさいよ!」

神農は怒られた。

「いや、伏羲に指示されたんだよ。」

伏羲をチラッと見た。伏羲は真面目な顔で

「長期的な観点から我々の存在は消しておかなくちゃならないんだ。」

女媧は納得してなかったし、神農も意味不明だと思っていた。

 

2021年 夏

蝉が鳴く中、伏羲がコンビニのイートインで、アイスを食べていた。神農が、久しぶり、と言って伏羲の肩を叩いた。

「おう!」

伏羲はどこか嬉しそうであった。

「今何してるんだ?」

「経営コンサルタント」

神農はスーツを着ていた。

「お前らしいな」

「伏羲は?」

「旅人」

「お前らしいな」

二人で笑った。

「女媧は?」

「ああ、あいつならどっかの国で首相やってるよ。だから忙しくてこれないだとさ」

「ふ~ん」

神農は思いついたように話した。

「そういえばあの三人で旅したのってどういう意味だったの?」

「ああ、あれね。あれは我々の力を下げる必要があったんだよ。」

「なんで?」

「一応神だから、いずれ、人類が我々の力を超える日が来ると思ったんだ。実際、神の証明もされたしね。」

「だから、後から分かるって言ってたんだ。」

「そうそう、だけど皮肉なことに今度はAIが人間をに支配する日が来るかもな。」

と言って笑た。

「今、神の力は使ってないのか?」

突然コンビニ内で突風が吹き、お菓子が何個か落ちた

「これぐらいかな?」

「これぐらいか?」

二人で笑い合った。

文字数:7992

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