梗 概
霊剣破り鮫歯
幕末の奈良で剣術使いを狙った辻斬りが横行していた。
辻斬りは腕が立ち、必勝の剣切落を習得した一刀流の達人すらも、敗れていた。
無外流の高弟である鮫口は、師が辻斬りに殺されたことを皮切りに辻斬りを追い始める。
死体を調べると、次のことが解った。
一つ、全ての刀が綺麗に折れている。
二つ、辻斬りは踏み込んでいない。
三つ、刀傷は焼け焦げている。
どれも異常だ。刀は簡単には折れないし、踏み込まない斬撃では威力が出ない。辻斬りは、踏み込まずしても刀を折る力を持っている。では、焼けた刀傷は?
初めて辻斬りが行われた日に、石上神宮から布都御魂剣が盗まれたことを知る。
布都御魂剣は雷神が拵え、断ち切るという意味を持つ剣。
雷が剣となったのなら、辻斬りがそれを持っているのなら、あの異様な死体を作ることも可能なのではないか。
だとして、どうすれば全てを断つ神剣に勝てるのか。
今まで死んだ剣客達は、神剣と刀を合わせるも斬り落とされ、攻撃能力を失ったところを仕留められたのだろう。折れた刀では、まともに人を斬ることはできない。
剣を防いではならぬ。打ち落としてもならぬ。辻斬りは剣に体重を乗せる必要がないから、身体が流れることもなく、対応も速い。
肘肩を囮にし、体の前後を入れ替えることで躱しながら斬るか。否、相手は振って攻める必要がない。通用しないだろう。
対抗策が見つからず悩む鮫口。その時、弟子が刀を石にぶつけ傷つける姿を見て、一つの手段を閃く。鮫口は砥石を片手に、ある作業をした。
あとは辻斬りに会うだけ。大々的に辻斬りを挑発し、夜1人出歩く。自然と、辻斬りのほうから鮫口に会いにきてくれた。
夜の路地で対峙する二人。
辻斬りが取り出した筒から、青白い光が昇る。あれこそが布都御魂剣であろう。
共に構える二人。鮫口は八相に。辻斬りは斜めにした中段、新陰流の城郭に近い構だ。
辻斬りの企図は解る。防御的な構で敵の刀をいなし、切断。返す刃で斬る。後の先。
構わず鮫口は身体を投げだす勢いで踏み込み、袈裟に斬り下ろす。
鮫口の刀と辻斬りの刀が交差し、鮫口の刀が音もなく折れる。
辻斬りが勝利を確信した次の瞬間、鰐口の折れた刀が辻斬りの首筋に深く食い込んでいた。
折れて短くなった刀が、構え直しもしない動作で、人体を傷つけられるはずがない。何故、と驚く辻斬り。
秘密は鰐口が刀身に施した工夫にあった。鍔元の刀身を砥石で削り、鋸状の細かい傷をつけていたのだ。
寝刃と言われるそれは、刃の付け食いつきを増す効果があり、殺傷力を高める。本来は刃の先端に施すものだが、鍔元でも効果は出る。
どうせ刀身が斬り落とされるなら、囮にしてしまえというのが鮫口の策だった。
首に刃が食い込んでも、なお抵抗しようとする辻斬りに対し、鰐口は両肩から先を固定し、右足を中心に旋回。胴の力が鋸刃に乗り、辻斬りの首筋を無残に引き裂いた。
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内容に関するアピール
ライトセーバーvs日本刀。神話に名だたる神剣、宝剣を相手にした時、果たして平凡な武器で勝てるのか。
神話の武器を見ていたところ、布都御魂剣には断ち切るという意味があるらしいので、もし何でも断ち切れる剣があれば、伝説になるかもしれないと考えたところから始まりました。
布都御魂剣を授けた建御雷神は剣と雷の神。雷は自然のプラズマ。プラズマ+剣=ライトセーバー。これなら大抵のものはぶった切れるかなと……。
参考 https://www.youtube.com/watch?v=xC6J4T_hUKg&t=660s
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