Monny MAN

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梗 概

Monny MAN

夢の世界で見せかけの社会生活を営むようになった時代で日常生活を送るぼくは木村という男と出会う。夢の中で出会う他人は、現実の世界で自分と同じように眠っている誰かの意識をもとに自分自身が作り出す住人だった。現実の世界では人間は意識を共有して人類の維持に必要な食事、生殖、生産を行うだけで個人生活はなかった。

木村は退屈で平凡な夢の世界を一緒に楽しまないかとぼくに提案してきた。夢の世界で生きるものなら誰でもあらゆる脳内刺激の快楽、支配欲を充たすような快楽、名誉を充たすような快楽はなんども試している。最終的に人はそれらの快楽に飽きが来る。夢の世界で生きるものはひきこもって無為に考え続けるか、あるいは結局最終的に21世紀の人間と変わらないような平凡な暮らしをするものが大半だった。ぼくは後者だった。

木村はあらゆる脳内刺激、支配欲、名誉を充たす物語で試していないものがまだお前にある、それは世界を破壊することだ、と言った。木村はぼくにこのぼく自身の夢の世界に破壊を仕掛けようと誘った。

ぼくと木村はテロリストとして夢の世界の国々を破壊して回った。アメリカの貿易ビルに飛行機で突っ込んだ。中国の広場で暴動を起こした。日本の地下鉄で化学兵器を散布した。毎日、現実の社会で意識を他人と統一させて群体としての人類生命維持の仕事を終えると楽しい殺戮の時間だった。

しかし、やはりぼくは夢世界の破壊に次第に飽きていく。どれだけ壊して残虐なことをしたとしても所詮それはやはり夢に過ぎなかった。しかしそれでも木村は破壊をどんどんエスカレートさせていく。木村は夢のなかで破壊活動をする仲間を集めて、テロ集団を作っていた。ぼくはもう破壊はいいので木村に元の現実の人間の意識に帰るように言う。しかし、木村は計画をやめない。木村は自分には現実に目覚めるような身体はないのだという。木村は誰かの現実に肉体を持つ人間の夢によって誕生した住人ではなく、夢のなかのぼくの副人格なのだという。そしてぼくの夢を破壊したあと自分の夢の世界を再度作り出す。そして自分が夢世界の支配者になるのだという。

ぼくは木村にピストルを向ける。だが、木村を夢で殺すことになんの意味もなかった。何度殺しても次の日に夢の世界に来れば木村はいくらでも蘇った。

世界を破壊したいと思っているのはお前自身だ、だからお前に俺は殺せない。そして、木村はこんどぼくが夢の世界に来る時に原子爆弾を乗せたヘリで北朝鮮の核基地に突っ込むと宣言する。

ぼくは夢のなかでピストルを自らのこめかみに突きつける。木村がぼくの副人格であるなら、これでぼくとともに木村もまた消えるのではないかとぼくは考えたのだ。ぼくは引き金を引く。しかし、木村はそんなぼくを見て嘲笑った。ぼくは夢の世界で死んだ。そして目覚めると俺は統一された意識ではなく木村だった。俺は群体としての人類で再び個を取り戻したのだ。

文字数:1196

内容に関するアピール

現実では人々の意志が脳波の共振によって統一され個人という概念がなくなり群体生命として存在しています。人々は自らの個人意志とそれに基づく生活を残すために夢世界で一人ひとり社会を経営しています。夢のなかで他人は自分と同じように現実で眠っている人間の脳波を受信して、その脳波をもとに夢世界の主人がその人物をアレンジして夢世界の住人としているのです。しかし、木村はぼくの副人格なので現実に帰属する肉体を持たないため、ぼくの人格を乗っ取ろうとしているのです。その手段は夢世界の破壊です。しかし、それは夢社会を壊すことではなく、夢の主人自らが自殺することだったのです。主人公のぼくに最後に引き金を引かせることが木村の計画でした。夢の主人が自らを殺すこと、これこそが真の意味で夢の破壊だったのです。夢を自ら手放したものは人格も失う。ぼくの人格は消え、はれて肉体は木村のものとなって目覚めることになったのでした。

文字数:398

課題提出者一覧